『壁面による反射の軌跡』解答


◆宮城県 甘泉法師 さんからの解答。

【問題1】

距離が1の1組の平行線がある。
その間で直線となす角度θ>0、-θの軌跡で点が反射を繰り返す。

1往復で点の間隔は直線上距離2cotθ。

自然数m回の往復で距離が自然数2nになるとして 
2mcotθ=2n,tanθ= m
n
 有理数

この平行線の間に1辺の長さが1の正方形を詰める。
これらの正方形を、隣どうしは表裏逆から見た同じひとつの正方形とみなせば、題意の問題になる。

よってtanθ= m
n
 有理数 が条件。

ただし、軌跡が正方形の頂点で停止する場合を周期的運動に含む。

【問題2】

不可能。

【証明】

正方形ABCDの辺ABをx軸、辺ADをy軸にとる。
正方形内部のすべての点を通る軌跡があると仮定する。
軌跡の線分がx軸となすは角度をθ>0、-θとする。

点Aから角度θの線分を、点Bから角度-θの線分をそれぞれ引き交点をPとする。
点Pが軌跡上にあることから、軌跡は点Aまたは点Bを通る。
点Cから角度θの線分を、点Dから角度-θの線分をそれぞれ引き交点をQとする。
点Qが軌跡上にあることから、軌跡は点Cまたは点Dを通る。

θ≠45度。
なぜならば45度なら、点Pと点Qは正方形の中心に一致し軌跡は対角線の線分になり仮定と矛盾。

よって軌跡はひとつの頂点からはじまり他の頂点で終わり、tanθは有理数で、軌跡は有限個の、角度θ、-θの線分の網目をなす。
軌跡は網目の中の点を通らないので仮定と矛盾。

【発展問題1】

問題2で箱の形が正方形ではなく、円だった場合はどうなるでしょう?

答 不可能。

点が円の中心を通ることと、軌跡が直径であることは同値。
軌跡が直径なので運動は
円周の点→中心→反対側の円周の点で反射→中心→元の点で停止。

よって円の中心を通る軌跡は円の内部の点すべてを通ることができない。


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答。

【問題1】 傾きが有理数ないし∞であること。

鏡像を展開すると下図のように4方向のタイル張りに相当する。
ここに元の点に戻るよう直線を引くと、下図のように元の方向(緑)と鏡像点(赤)の2種がある。
しかし、鏡像点の場合下図のように途中で角(黒)を通るので戻ってこない。
よって、差は整数であり、傾きは有理数である。 


【問題2】 不可能

正方形の中心を(0,0)とし、辺の方向をx、yとします。
このとき、(0,0)と(

)を通過するためには
傾きは有理数でなければ成りません。
これをαとします。
次に鏡像の上の明らかに(0,0)でも(

)でもない、
無理点 () を通過するとします。

するとこれは

±+m=α(x+n)
±=x+n が成立しているということです。

即ち
±+m±α=0 です。

このような 整数mと有理数αは存在しません。
(『『a+b√2=0』』 の問題による)

【発展問題1】 不可能

 少なくとも円の中心を通過しなければならない。
しかし円の中心を通過する線は直径であり、円上で反射してもまたその線上を走り、他の部分へは行かない。
逆に、中心以外の他の部分を総て通過する運動があっても、それは中心を通過できない。
よって、不可能である。

【発展問題2】 閉曲線が凸である場合は存在しない。
(なお、一般の場合も存在しないと予想される。)

閉曲線上の最も離れた2点を考えます。
凸閉曲線なので、途中に障害はなくこの2点間を往復できます。
また、最大長さの点ですから、2点を結ぶ直線は各点での接線と直交しています。
よって周期運動が実現可能です。

<一般の場合の検討結果>

○ 1往復周期運動の存在しない閉曲線。
下図のような、先が細くなり少し曲がっている足が3本のヒトデ型の場合、1往復の周期2運動は総て途中で曲線に掛り、存在しない。(緑線)
しかし、途中に一回反射のある周期4運動は存在している。(赤線)
(なお下図はスプライン曲線を用いており厳密にはCではないが、本問題はCでも大差はないと考えられる。)

周期2運動がが存在しない形状を考えると、結局先細りで少し曲がった足が多数(奇数)あるヒトデないし蛸のような形状にならざるをえず、中央の頭の部分に下図のような状態のところが存在する。
その部分では下図のような周期4の運動(赤)が必ず存在するようである。

○ 2本腕の場合は周期2運動が存在する。
また、もっと長い周期のもあった。
成立していない周期2のもう1個は消去している。

○ほぼ楕円の場合

○ 下記は 方向を適当にした場合で1000回の反射結果である。
内部も周上も、殆どいたるところ埋まっている。
なお、周期2の1個は成立していない。

○ おまけ。 なお、周期2の1個は成立していない。

【感想】

結構面白い問題で、ハマリました。
曲線に直角に出発し、何回目かの衝突の直交度(内積)を出発位置の関数グラフとして表すと、どこかで滑らかに0値を通過し、そこに解があることを見つけることが出来ます。
下図は 最初の3本足ヒトデの場合の20回までの衝突の直交度のグラフです。
図示以外にも解は多数あります。

なお、往復ではない周期運動に限ると、2次元問題になり、さらに難しそうです。


◆出題者のコメント。

お二人とも正解です。
正方形の場合は反射の問題が、実は有理数・無理数の問題に置き換わると言うのが面白くて出してみました。
発展問題1は難しいかと思っていたんですが、お二人の回答を見て「なるほど」と目からウロコでした。
簡単な問題でしたね・・・。

発展問題2はY.M.Ojisan さんの回答に感動しました。
まさかここまでやって頂けるとは。ビジュアル的で分かり易かったですし、勉強になりました。
ありがとうございました。


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