『正三角形と軌跡』解答


◆宮城県 甘泉法師 さんからの解答。

一部だけですがすぐにわかった分だけ送ります。


◆東京都 ぽこぺん さんからの解答。

【解答】

次の (1),(2),(3) の合併図形 (下図の黒実線部)。

(1) 辺 BC の垂直二等分線の,△ABC に含まれない部分 (境界は含まない)。

(2) 点 B における AB の垂線と点 C における AC の垂線との交点を O とするとき,O を中心として辺 AB,AC に接する円周の, △ABC に含まれない部分 (境界は含まない)。

(3) 3 次曲線

4x3+6x2y+4xy2+6y3+12x2+6xy+2y2+9x-3y+2=0
の一部。

【証明】

(1) 明らか。

(2) 図形 (2) の上の任意の点 D に対して,直線 DA,DM と円周との D でない交点をそれぞれ X,Y とする。

ここで,円 O の半径を r とすると,
OM = r
2
,OA = 2r となるので下記の補題の条件を満たし,
∠AOX = ∠AOY が成立する。

したがって,弧 BX = 弧 CY となり,
2 つの弧に対する円周角の間に ∠ADB = ∠MDC が成り立つ。
(点 D が,円周上で △ABC に含まれる部分にある場合には,弧 BX,弧 CY に対する円周角が ∠ADB,∠MDC にはならない。
ただし,△ABC に含まれる円周上の点 (- 13
14
, 3
14
) においては
∠ADB = ∠MDC = π
2
になるので条件を満たすが,
これは (3) に含まれるので,そちらで扱うものとする)

(3) 上図のように座標を定め,
{(
DA

DB
)/‖
DA
‖‖
DB
‖}2 -{(
DM

DC
)/‖
DM
‖‖
DC
‖}2= 0

を計算すると,左辺は

y(x2+y2-1)(4x3+6x2y+4xy2+6y3+12x2+6xy+2y2+9x-3y+2)
と因数分解できる。

この第 3 因数を 0 とおいたものが図形 (3) であり,上図のようなグラフが描けるが,この曲線の詳細な性質はわからなかった。

【補題】

中心 O,半径 r の円 O において,O を端点とする半直線上に
OA・OB = r2 となる 2 点 A,B を取る。

円周上の任意の点 P に対して,直線 AP,BP と円周との (P でない) 交点をそれぞれ X,Y とすると,
∠AOX = ∠AOY である (下図)。

【証明】

弦 PY の円 O に関する反転図形は △OPY の外接円となるが,PY が点 B を通るので,この円は点 A を通る。
したがって,∠AOY = ∠APY =1
2
∠XOY が成立する。

(証明終)

【感想】

補題は有名な命題なのでしょうか? 
補題が初等幾何で証明できたときには,これで解決した!と喜んだのですが,残った (3) の 3 次曲線がどうしても解明できませんでした。
既知の正葉線などの曲線と結び付けようと四苦八苦したのですが,うまくいかないので,とりあえずこのままにします。
甘泉法師さんの(イ)は (3) に含まれます。


◆出題者のコメント

ご解答ありがとうございます。
ぽこぺんさんの解答で正解でしょう。
6線分からなる軌跡が求める解です。

問題は単純ながら、このように3次曲線が解にでてきます。

この問題は∠ADB=∠ADCなる点Dの軌跡は?という問題の変形でした。
こちらは4線分からなる軌跡となります。
本問題のように替えた場合恐ろしく難しい問題となります。
私もこの3次曲線の性質がわからず出題してみることにしました。

ぽこぺんさんの軌跡(2)が解であると真っ先に気が付いたのですが、それにしてもよく気が付きましたね。
【補題】は有名な事実だとは思いますが、これと本問題を結びつける解答があるとは思いませんでした。

どなたかこの3次曲線の幾何学的性質がわかりましたらご一報ください。


◆東京都 ぽこぺん さんからの解答。

【この 3 次曲線についての考察】

[1] 本問の 3 次曲線の式,

4√3 x3 + 6x2 y + 4√3 xy2 + 6y3 + 12√3 x2 + 6 xy + 2√3 y2 + 9√3 x - 3y + 2√3 = 0   …… (*)
において y = √3 y' とおけば,
4x3 + 6x2y' + 12xy'2 + 18y'3 + 12x2 + 6xy' + 6y'2 + 9x - 3y' + 2 = 0
となる。さらに,
x=1

98
  (15u - 75v - 91)
y'=3

98
  (-15u + 5v + 7)
という回転・裏返し・伸縮・平行移動を用いて変換することにより,これは
u3 + v3 - u2 + uv - v2 -  16

25
 u -  39

25
 v = 0   …… (**)
という形になる (もちろん,この 2 回の変換を一度に適用しても同じことである)。一般に,
a x3 + b x2y + c xy2 + d y3 + e x2 + f xy + g y2 + h x + i y + j = 0
に対して,上記と同様の回転・裏返し・伸縮・平行移動 (自由度 5) を適用すると (縮退する場合を除き),
u3 + v3 + E u2 + F uv + E v2 + H u + I v = 0
という形に直すことができる。 ただし,(1) uv の項を消去することはできず,(2) u の項と v の項の係数を等しくすることもできない。
(2) については漸近線との関係において次項で述べる。

[2] いま,(**) において一次の項の係数を共に -1 とすると,


u3 + v3 - u2 + uv - v2 - u - v = 0   …… (***)
は下のように直線 v = u に関して対称なグラフとなる。

(***) の漸近線は,これと交点を持たない直線である。
したがって,それを v = mu + n とおいて両式から v を消去すると,方程式

(m + 1)(m2 - m + 1) u3 + (3m2n - m2 + m - 1) u2 + (3mn + m + 1)(n - 1) u + n(n² - n - 1) = 0
が得られるが,これが実数解を持つことはない。
したがって m = -1 が必要である。
このとき,方程式は
3(n - 1) u2 - 3n(n - 1) u + n(n2 - n - 1) = 0
となり, n ≠ 1 ならば 2 次方程式となるが, n = 1 ならば解を持たない。
n ≠ 1 の場合,実数解は
9n2(n - 1)2 - 12n(n - 1)(n² - n - 1) ≧ 0
すなわち
1 - √17
2
  ≦ n ≦ 0 または 1 < n ≦   1 + √17
2
のときに得られる。
これは,上のグラフの閉曲線の部分,または無限に延びる部分と共有点を持つ場合にそれぞれ対応している。
以上より,(***) の漸近線は n = 1 の場合として,
u = -v + 1
のように得られる。

これに対して,(*) のグラフは模式的に描くと

のようになっている。

これを確かめるために,(*) と y = mx + n とを連立させて y を消去し,3 次方程式にならない場合を考えると,
m = - 2√3
3
を得る。このとき方程式は

2(21n + 16√3)x2 - 3(8√3 n2 + 2n - 11√3)x + 3(6n3 + 2√3 n2 - 3n + 2√3) = 0
となる。この方程式の解の個数を n の値によって分類すると次の表のようになる:

n の値-7√3 - 3(15+8√3)
12
-16√3
 21
-7√3 - 3(15-8√3)
12
-7√3 + 3(15-8√3)
12
-7√3 + 3(15+8√3)
12
近似値-2.35332 -1.31966 -1.27771-0.7430160.332591
解の個数01212101210

したがって,漸近線は 1 次方程式になる場合,すなわち
n = - 16√3
21
の場合であることがわかった。

このように,式 (**) において,1 次の項の係数が異なる場合と等しくなる場合とでは曲線の性質が変わるので,一次変換によってそれが入れ替わることはない。


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