『精密なスターリングの公式』解答


◆宮城県 甘泉法師 さんからの解答。

【元の問題】

N! ≒ (2πN)0.5 * (N/e)N である事を証明してください。

>解き方を知らない問題で恐縮です。
>以前、上記のタイプのスターリングの公式は、工夫すれば普通に導く事ができると聞いたのですが、
>定数(2π)0.5を求める方法が、分かりませんでした。

任意の関数について閉じた経路積分の値を評価する鞍点法または最急降下法では、式 にガウス定積分があり
そこから定数(2π)0.5がでてくると理解しています。


◆出題者のコメント

甘泉法師さん、コメントありがとうございました。
どこかの段階で、大きな定理を使わないと、問題が解けないようなので、出題を修正したいと思います。
もっと別の証明方法を御存知でしたら、それも教えてもらえると嬉しいです。


◆東京都 鳥居 さんからの解答。

【問題1】【問題2】

問題1、問題2は問題3が示されれば明らか。

【問題3】

[x] を最寄の整数に丸める関数とする。
(本問限りのローカル定義)

k を整数とすると [x]=k (k−1/2≦x<k+1/2)
このとき log x と log[x] との差分の面積を考察する。
αk を k-1/2<x<k の区間で y=log x, y=log[x]
(この区間では log[x]>log x)で囲まれる面積と定義する。

βk を k<x<k+1/2 の区間で y=log x, y=log[x]
(この区間では log x>log[x])で囲まれる面積と定義する。

log x は上に凸の関数であることに注目すると、
αk>βk, βk>αk+1 が成り立つ。

そこで、次の数列の和を考える。
δn=β1−α2+β1−α2−…+βn-1−αn
これは絶対値が減少する正負交互数列の和であり、
n→∞ のとき αn→0 に収束するため、δn は有限値に収束する。

ここで log x−log[x] を区間 1≦x≦n で積分すると、
その値は δn そのものであるから、以下が成り立つ。
δn =∫n

1
(log x−log[x])dx=n log n−n+1−(1
2
log 1+log 2+log 3+…+1
2
log n)
従って、
log n!=(n+1
2
)log n−n+1−δn
となり
(*) n!
√n (n/e)n
=exp(1−δn)
が得られる。
n→∞ のとき δn は有限値に収束するため、上式の(*)は定数になることが示される。

【問題4】

問題3の(*)において、n→∞ のときに収束する定数を A とおく。
(*)の2乗を、(*)の n を 2n に置き換えたもので割って、n→∞ とする。
A=
lim
n→∞
(n!
√n (n/e)n
)2 ((2n)!
√(2n) (2n/e)2n
)-1 =√2
lim
n→∞
(2n n!)2
√n (2n)!

ウォリスの公式を使うと、右辺の lim の部分は √π に収束するから、
A=√(2π) が示される。


 『精密なスターリングの公式』へ

 数学の部屋へもどる