『シムソン線』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答。

ここでの特別な記法として 3要素ベクトル
(f(a,b,c),f(b,c,a),f(c,a,b))を[a,b,c▽f(a,b,c)] で表わし
要素の総和をΣ[a,b,c▽f(a,b,c)]で表わすこととする。

例えば (A、B、C)=[α,β,γ▽(cosα,sinα)]である。

【問題1】

与式を書き直すと

(BC⊥、CA⊥、AB⊥):[α,β,γ▽(cosγ−cosβ)x+(sinγ−sinβ)y]=[p, q, r▽p]

である。直交線の3式を左辺右辺合計すれば

 Σ[α,β,γ▽(cosγ−cosβ)x+(sinγ−sinβ)y]
=Σ[α,β,γ▽(cosα−cosα)x+(sinα−sinα)y]
=0x+0y
=0

 また、 Σ[p, q, r▽p]=p+q+r

よって、p+q+r=0 であることが必要である。

【問題2】

α+β+γ=Ω とする。

 [p, q, r▽p]
=[α,β,γ▽sin(α+γ)−sin(α+β)]
=[α,β,γ▽sin(Ω−β)−sin(Ω−γ)]
=[α,β,γ▽sin(Ω)(cosβ−cosγ)−cos (Ω)(sinβ−sinγ)]

また

 (BC⊥、CA⊥、AB⊥):[p, q, r▽p]=[α,β,γ▽(cosγ−cosβ)x+(sinγ−sinβ)y]

であるから

 [α,β,γ▽(cosγ−cosβ)(x+sin(Ω))+(sinγ−sinβ)(y− cos (Ω))]=(0、0、0)

つまり x=− sin(Ω) y= cos (Ω) であり、x+y=1

ただし、係数行列のRANKが2以上の場合である。
つまりA≠B≠C≠Aである場合。
以後も仮定する。

任意のtに対しては

 [p, q, r▽p]
=[α,β,γ▽sin(α+γ)−sin(α+β)]*sin(t)+[α,β,γ▽cos(α+γ)−cos(α+β)]*cos(t)
=[α,β,γ▽sin(Ω−β)−sin(Ω−γ)]*sin(t)+[α,β,γ▽cos(Ω−β)−cos(Ω−γ)]*cos(t)
=[α,β,γ▽sin(Ω)(cosβ−cosγ)−cos (Ω)(sinβ−sinγ)]*sin(t)+[α,β,γ▽cos(Ω)(cosβ−cosγ)+sin (Ω) (sinβ−sinγ)]*cos(t)
=[α,β,γ▽(cosβ−cosγ)(sin(t)*sin(Ω)+cos(t)*cos(Ω))]+ [α,β,γ▽(sinβ−sinγ)(−sin(t)*cos(Ω)+cos(t)*sin(Ω))]
よって

X=x+sin(t)*sin(Ω)+cos(t)*cos(Ω)=x+cos(Ω−t)
Y=y−sin(t)*cos(Ω)+cos(t)*sin(Ω)=y+sin(Ω−t)

とおくとき、方程式は下記である。

 (BC⊥、CA⊥、AB⊥):[α,β,γ▽(cosγ−cosβ)X+(sinγ−sinβ)Y]=(0、0、0)

よってX=0,Y=0より
 ( x , y )=(cos(α+β+γ−t+π)、sin(α+β+γ−t+π))

【問題3】

つまり、(x、y)=(cos(θ)、sin(θ))と置くということである。
 
答えの方を変形すると、
A1:(cos( β+γ
2
)*cos( β−γ
2
)−sin( β+γ
2
)*sin(θ− β+γ
2
),sin( β+γ
2
)*cos( β−γ
2
)+cos( β+γ
2
)*sin(θ− β+γ
2
)

である。

図形を作図すれば、
BC⊥の方向:偏角 β+γ
2
にcos( β−γ
2
)、
BCの方向にsin(θ− β+γ
2
)の点であるから、
PのBCへの垂線の足である。
B1,C1も輪換対称であり同様である。




【問題4】

l(x , y ,θ) :x*sinφ−y*cosφ にA1点座標を代入し計算すれば

 2*l(A1,θ)= sin(φ−β)+sin(φ−γ)−sin(φ−(β+γ−θ))+sin(φ−θ)

である。

 2(−φ+ (β+γ−θ))=−α−β−γ+θ+2β+2γ−2θ=−α+β+γ−θ
 2(φ−α)=α+β+γ−θ−2α=−α+β+γ−θ

で両者は等しい。よって、

l(A1,θ)=(sin(φ−β)+sin(φ−γ)+sin(φ−α)+sin(φ−θ))/2である。

B1,C1の場合も輪換対称であり同様である。

【問題5】

この場合、方向に特異性は無いのでα、β、γ、θi全体を回転させて
α+β+γ=0としても一般性を失わない。
なおその回転角は α+β+γ
である。

またこの場合θi=−2φiである。

さて、問題4で得られた直線の式を変形すると、

 x*sinφi−y*cosφi
(cosα+cosβ+cosγ)sinφi−(sinα+sinβ+sinγ)cosφi+sin(3φi
2

である。

s1*sinφ1+s2*sinφ2+s3sinφ3=0
s1*cosφ1+s2*cosφ2+s3cosφ3=0

である全部がゼロではないsiで重み付けをして左辺、右辺を足せば
s1*sin(3φ1)+s*sin(3φ2)+ssin(3φ3)=0
でなければならない。

従って、全部がゼロではないsiが存在するには



と置くとき|D|=0でなければならない。

Φ=φ1+φ2+φ3とし、複素数を使って計算すると 
|D|=Σ[φ1, φ2, φ▽Im(exp((φ1−φ2)i)(exp(3φ3i)− exp(3φ3i))/2i]
   =−Re{ Σ[φ1, φ2, φ3▽exp((φ1−φ2+3φ3)i)− exp((φ1−φ2−3φ3)i)] }/2
   =−Re{ Σ[φ1, φ2, φ3▽exp((Φ−2φ2+2φ3)i)− exp((2φ1−Φ−2φ3)i)] }/2
   =−Re{ Σ[φ1, φ2, φ3▽exp((Φ−2φ2+2φ3)i)− exp((2φ3−Φ−2φ2)i)] }/2
   = Im{ Σ[φ1, φ2, φ3▽exp((2φ3−2φ2)i) *sin(Φ)] }
= Σ[φ1, φ, φ3▽sin(2φ3−2φ2)]*sin(Φ)
= 4*sin(φ3−φ2)*sin(φ2−φ1)*sin(φ1−φ3)*sin(Φ)

A≠B≠C≠A であるから、
φ1+φ2+φ3=−nπのときのみ|D|=0である。
θに戻せば θ1+θ2+θ3=2nπ のときであり、さらに最初の回転を戻せば
θ1+θ2+θ3=α+β+γ+2nπ である。


【問題6】

一般性を失わずα+β+γ=0で考えます。
問題4より、シムソン線は下記です。

sinφi*(x− cosα+cosβ+cosγ
2
)−cosφi*(y− sinα+sinβ+sinγ
2
)= sin(3φi
2

つまり 

cosα+cosβ+cosγ
2
sinα+sinβ+sinγ
2

を中心として3葉対称で回っている傾きtanφiの直線です。

 図を描けば θ=α+π、θ=β+π、θ=γ+πのとき、シムソン線で囲まれた三角形が元の三角形に一致することは、直径の円周角が直角であることから明らかです。
即ち、θ−α=θ−β=θ−γ=πのとき合同です。

よって、先に示した3葉対称性から、
θ−α=θ−β=θ−γ= (2n+1)π

のときシムソン線で囲まれた三角形は元の三角形に合同です。



一方、合同であるためには、少なくとも相似でなければなりません。
θi=−2φiであるので、θとシムソン線は1対1に対応しています。
従って裏表逆の合同も考えると θ1±α=θ2±β=θ3±γ=W (複合同順) でなければなりません。
よって θ1+θ2+θ3=3W±(α+β+γ)=3W=(2n+1)πです。
すなわち
W= (2n+1)π

【蛇足】

sin(φ+d)*X−cos(φ+d)*Y= sin(3(φ+d))
2
sin(φ−d)*X−cos(φ−d)*Y= sin(3(φ−d))
2

の交点を計算すると

X= cos(4*φ)
2
+cos(−2*φ)*cos(2d)

Y= sin(4*φ)
2
+sin(−2*φ)*cos(2d)

( この問題の発端となった曲線が、内トロコイドであることが確定しました。)

つまり φ+d=φ φ−d=φ2 とすれば 

2*φ12=(φ1+φ2)=− α+β
2
−W
2*d12=(φ1−φ2)= β―α
2

です。

複素数A、B、Cを頂点とする三角形の面積が
 
の絶対値であることを使うと、シムソン線で囲まれた同じ向きの三角形の面積Gは下記である。

 4G=|Im{ Σ[α,β,γ▽(exp((γ−2W)i)+exp((W+α)i)+exp((W+β)i))*(exp(−(α−2W)i)+exp(−(W+β)i)+exp(−(W+γ)i))] }|
を用いると
 =|Im{Σ[α,β,γ▽(exp((γ−2W)i)−exp((W+γ)i))*(exp(−α+2W)i)−exp(−W−α)i] }|
 =|Im{Σ[α,β,γ▽(2*exp((γ−α)i)−exp((3W+γ−α)i))−exp((−3W+γ−α)i)] }|
 =2|Σ[α,β,γ▽sin(γ−α)]|*(1−cos(3W))
である。

合同となる3角形の一つは3W=πの時でありこれは面積の最大値である。
よって一般に 3W=(2n+1)π の時合同である。
なお、絶対値なのでαβγの順序を逆転してもよい。

下図をクリックするとアニメーションがスタートします。
(500kバイトでチョット重い)



【PS】

全て三角関数数式処理でと思ったのですが、力及ばず幾何と複素数に流れました。
シムソン線はなかなかに優美な動きをするものです。しばし耽溺。


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