『整数問題一発勝負!! Part4』解答


◆滋賀県 一平 さんからの解答。

【問題2−1】

B=2・3・…(p-1)+3・4・…・(p-1)+…+2・3・…(p-2)
 ≡-1・(p-2)+(-2)・1 (mod p)
 ≡-p
 ≡0(mod p)
従ってBはpで割り切れる。


◆神奈川県 三島 久典 さんからのコメント。

2-2 は Wolstenholme の定理ですね。
1乗だけでなく、2、3、4乗でも同様のことが成り立ちます。

http://www.asahi-net.or.jp/~KC2H-MSM/mathland/matha1/ の8番目に、この数の素因数分解の結果を載せています。

この定理は、1にあるような変数の置き換えをやってから、二項係数がnで割り切れることを利用して証明するもので、かなりテクニカルな証明なのですが、このように誘導があると、割と容易に証明できるのだということを知って驚きました。


◆埼玉県 \aleph_0 さんからの解答。

問題を少し一般化して, 次のことを示したいと思います.
以下ではpを奇素数とします.

定理1.

1≦r≦p-2である整数rに対して次が成り立つ:

(1) p-1
Σ
k=1
kr≡0 (mod p).

定理2.

1≦r≦p-2である整数rに対して次が成り立つ:

(2) p-1
Σ
k=1
k-r≡0 (mod p).

定理3.

3≦r≦p-1である奇数rに対して次が成り立つ:

(3) p-1
Σ
k=1
kr≡0 (mod p2).

定理4.

1≦r≦p-3である奇数rに対して次が成り立つ:

(4) p-1
Σ
k=1
k-r≡0 (mod p2).

定理1の証明.

rに関する帰納法により示す.

まずr=1ならば,

(3) p-1
Σ
k=1
k=1

2
p(p-1)≡0 (mod p).

次に1<r≦p-2とし, 1≦s<rである整数sに対して

(3) p-1
Σ
k=1
ks≡0 (mod p).

と仮定する.

このとき整数kに対して二項展開により

(k+1)r+1
=kr+1+(r+1)kr+r+12kr-1+...+(r+1)k+1

であるから,
この式をk=0,1,...,p-1に対して加え合わせれば,

pr+1=(r+1) p-1
Σ
k=1
kr+r+12 p-1
Σ
k=1
kr-1+...+(r+1) p-1
Σ
k=1
k+p.

したがって, 帰納法の仮定より,

(r+1) p-1
Σ
k=1
kr≡0 (mod p).

仮定より, r+1≡0 (mod p)ではないから,

(1) p-1
Σ
k=1
kr≡0 (mod p).

q.e.d.

定理2の証明.

写像σ: k mod p→k-1 mod pは
(Z/pZ)*上の置換を引き起こすから, 定理1より,

(1) p-1
Σ
k=1
k-rp-1
Σ
k=1
kr≡0 (mod p).

q.e.d.

定理3の証明.

次に示す定理4と同様に示されるので, 省略.

定理4の証明.

まず2≦r+1≦p-2であるから, 定理2より,

(2) p-1
Σ
k=1
k-(r+1)≡0 (mod p).

一方, 整数kに対して,

(p-k)(p+k)
=p2-k2
≡-k2 (mod p2),

すなわち,

(p-k)-1≡-k-2(p+k) (mod p2)

であるから,

(p-k)-r
≡-k-2r(p+k)r
≡-k-2r(rpkr-1+kr)
=-(rpk-(r+1)+k-r) (mod p2).

したがって,

(2) p-1
Σ
k=1
k-r
1

2
p-1
Σ
k=1
k-r+ p-1
Σ
k=1
(p-k)-r
1

2
p-1
Σ
k=1
k-r- p-1
Σ
k=1
(rpk-(r+1)+k-r
=-1

2
rp p-1
Σ
k=1
k-(r+1)≡0 (mod p2).

q.e.d.

この定理4でr=1とおけば, 問題2-2(Wolstenholmeの定理)が直ちに導かれます.
ちなみに, このWolstenholmeの定理から次の定理が従います.

定理5.

素数p≧5に対して次が成り立つ:

(5) 2p-1p-1≡1 (mod p3).


◆茨城県 小川 康幸 さんからの解答。

【問題1】

Ai*Bip-1
2
(mod p) となるように、Ai,Biを選ぶ。

Ai≡Aj (mod p) ⇔ Bi≡Bj (mod p) を示す。

Ai≡Aj (mod p) のとき、
Ai≡Aj≡a (mod p)とおく。

 a*Bi
≡Ai*Bi
≡Aj*Bj
≡a*Bj (mod p) である.

a*(Bi-Bj)≡0 (mod p)
aとpは互いに素だから、Bi≡Bj (mod p) が示せた。

逆に、Bi≡Bj (mod p) のとき、
Ai≡Aj (mod p) となることも、同様に示せる。

よって、A1、A2・・・、Ap-2はすべて異なる。
また、B1、B2、・・・Bp-2もすべて異なる。

よって、
p-2
Σ
i=1
(Ai*Bi)≡(p-1)(p-2)
2
p(p+3)
2
+1≡1 (mod p)
となる。よって示せた。

【問題2−1】

p-1
Σ
i=1
1
i
= (p-1)/2
Σ
i=1
(1
i
+1
p-i
)=p(p-1)/2
Σ
i=1
1
i(p-i)
= pM
N

1
i
+1
p-i
=p
i(p-i)
だから

また、分母は明らかにpと互いに素だから、よって問題1は正しい。
問題2−1終了

【問題2−2】

まず、zを整数としたとき、z2は、mod p で、
02、12、22、・・・、{(p-1)/2}2のどれかと合同になる事を示す。

これを、命題1とする。

z=pq+r,0≦r<p とかける。

0≦r≦p-1
2
のとき z2≡r2 (mod p)

p+1
2
≦r≦p-1 のとき z2≡r2≡(p-r)2 (mod p)

1≦p-r≦p-1
2
より、このときも正しい。
よって、命題1は示せた。

問題2−1より、
M
N
= (p-1)/2
Σ
i=1
1
i(p-i)
の分子がpで割り切れる事を言えば良い。

(p-1)/2
Σ
i=1
1
i(p-i)
=(p-1)/2
Σ
i=1
(p-1)!
i
*(p-1)!
p-i
/(p-1)!2

xi=(p-1)!
i
、yi=(p-1)!
p-i
とおくと、

= (p-1)/2
Σ
i=1
xi*yi
(p-1)!2

(分子)= (p-1)/2
Σ
i=1
xi*yi

(p-i)(yi)=(p-1)!
-i*yi≡(p-1)! (mod p) より、

yi≡-p-1
i
=xi (mod p) だから、

(p-1)/2
Σ
i=1
xi*yi≡- (p-1)/2
Σ
i=1
xi2

iとjが異なるとき、xi2≡xj2 (mod p)となったと仮定すると、

i2*xi2≡j2*xj2≡(p−1)!2 (mod p)

xi2≡xj2≡s (mod p) とおくと、
sとpは互いに素だから、i2≡j2 (mod p)

(i+j)(i-j)≡0 (mod p)  0<i,j<p-1
2
より、

0<i+j<p-1だから、i≡j (mod p)

i=jとなって、仮定に反する。

命題1より
- (p-1)/2
Σ
i=1
xi2≡- (p-1)/2
Σ
i=1
i2≡- p-1
2
*p+1
2
*p/6 (mod p)

pは5以上の素数より、pは6と互いに素ゆえ、
- p-1
2
*p+1
2
*p/6≡0 (mod p)

よって、分子がpで割り切れるのが言えた。
M=pKと書ける。

p-1
Σ
i=1
1
i
= p2*K
N

明らかに、Nとpは互いに素なので、問題2−2は証明された。

問題2−2終了

pを5以上の素数とすると、
2p-1Cp-1≡1 (mod p3)が成立すると言う定理を拡張した

【定理6】

kを2以上の整数、pを5以上の素数とする。
kp-1Cp-1≡1 (mod p3)を示します。

証明

まず、(x-1)*(x-2)*(x-3)*・・・*{x-(p-1)}を展開した
xp-1-・・・-Dx3+Bx2-Ax+(p-1)!を考える。

B≡0 (mod p)を示す。

B= (p-1)!
1*2
*(p-1)!
1*3
* +・・・+(p-1)!
(p-2)*(p-1)

(p-1)!・B= (p-1)!
1
*(p-1)!
2
+(p-1)!
1
*(p-1)!
3
+・・・+(p-1)!
p-2
*(p-1)!
p-1

xi= (p-1)!
i
とおくと、

(p-1)!・B=x1*x2+x1*x3+・・・+xp-2*xp-1

よって、
2(p-1)!・B= p-1
Σ
i=1
xi* p-1
Σ
j=1
xj- p-1
Σ
i=1
xi2

ここで、xi≡xj (mod p) ならば、i=j となる事を示す。

i*xi=j*xj=(p-1)!である。

xi≡xj≡a (mod p)とおくと、
i*a≡j*a≡(p-1)! (mod p)

よって、(i-j)*a≡0 (mod p)

(p-1)!はpと互いに素だから、aもpと互いに素。
よって、i≡j (mod p)

よって、i=jとなる事が示せた。

よって、この対偶の、i≠j ならば xiとxjも mod p では異なる。

よって、

p-1
Σ
i=1
xi* p-1
Σ
j=1
xj- p-1
Σ
i=1
xi2
p-1
Σ
i=1
i* p-1
Σ
j=1
j- p-1
Σ
i=1
i2
1
2
*p*(p-1)*1
2
*p*(p-1)-1
6
*(p-1)*p*(2p-1)

pは5以上の素数だから、
≡0-0≡0 (mod p)

よって、2・(p-1)!・B≡0 (mod p)

2・(p-1)!は2と互いに素だから、B≡0 (mod p)

また、A= p-1
Σ
i=1
xiは問題2−2より、A≡0 (mod p2)

(p-1)!*kp-1Cp-1
=(pk-1)*(pk-2)*・・・*{pk-(p-1)}
=(pk)p-1+・・・-(pk)3*D+(pk)2*B-pk*A+(p-1)!(mod p3)

で考えると、p3で割り切れる項は無視できるから、

≡(pk)2*B-pk*A+(p-1)! (mod p3)

問題2−2より、A≡0 (mod p2)
よって、pk*A≡0 (mod p3)

また、B≡0 (mod p)が成立するので、
(pk)2*B≡0 (mod p3)

よって、(pk)2*B-pk*A+(p-1)!≡(p-1)! (mod p3)

これより、(p-1)!*kp-1Cp-1≡(p-1)! (mod p3)

(p-1)!とp3は互いに素だから、
kp-1Cp-1≡1 (mod p3) となる。

定理6は示された。

証明終


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