『算額における幾何学』解答


◆宮城県 甘泉法師 さんからの解答。

【問題1】

円の半径をa、三角形の内角で赤線の端を頂点とするほうの大きさをAとする。
正方形の上辺と、赤線を含む折 り返した辺の長さが等しいので

r + a cot A
2
+ a cot ( π
4
- A
2
)
= r secA + r tanA + a cot A
2
+ a

これから r=a

【問題2】

2円の半径を左からa,b a<b とする。
長方形の下辺と、2円の中心を結ぶ直線、対角線がなす角をそれぞれθ、φとする。

長方形の左下頂点と2円の接点を結ぶ直線の傾きは a(1+sinθ)
a(1+cosθ)

長方形の左下頂点を通る対角線の傾きは 2b
a+(a+b)cosθ+b
sinθ= b-a
a+b
から、2つの傾きは等しい。

よって2円の接点は長方形の対角線上にある。

なおφはθであらわすことができて
tanφ= 1+sinθ
1+cosθ

sinφ= 1+sinθ
√(3 + 2sinθ +2cosθ)

cos= 1+cosθ
√(3 + 2sinθ +2cosθ)

線分qと左の円の中心からなる三角形の正弦定理から
q = a sin( 2φ-θ- π
4
) / sin( π
4
- φ) ....(1)


線分pと右の円の中心からなる三角形の正弦定理から
p = b sin( 2φ-θ- π
4
) / sin( π
4
- φ) ....(2)


対角線の2円の弦の部分はそれぞれ底角がφ-θの二等辺三角形の底辺なので 正弦定理から弦の長さは
sin(π-2φ+2θ)
sin(φ-θ)
* 半径 = 2cos(φ-θ) * 半径。

これから対角線の長さLは
L = q + 2a cos(φ-θ) + 2b cos(φ-θ) + p

(1)(2)を使い a、bを消去して
L=(p+q){ 1 + 2
tan(φ-θ)cot(π/4-φ) - 1

ここで
cot( π
4
-φ)= 1+tanφ
1 - tanφ tanθ
tan(φ-θ)= tanφ - tanθ
1 - tanφ tanθ

さらに
sinθ= b-a
b+a
= p-q
p+q

これから cosθ= 2 √pq
p+q
とあわせて
tanθ= p-q
2 √pq
tanφ= 2b
(a+b)(1+cosθ)
= 2p
(p+q)(1+cosθ)
= 2p
p+q+ 2 √pq

こうしてL(p,q)がえられる。
特にふたつの円の半径が同じaの場合には、
L(p,p)= 10p = 2 a.


◆東京都 T.Kobayashi さんからの解答。

【問題3】

【アイディア】

楕円と円との接点を決め、円の中心座標および円の半径を媒介変数表示する。
このとき、楕円の中心と円の中心とを通る直線に平行な楕円の二接線間の距離と、 同じく円の二接線間の距離とが相等しければ、対称性の理由により、それらの 二接線は楕円と円との共通接線となる。

【解答】

楕円を x2
a2
+ y2
b2
=1 とする。

楕円と円との接点を D(acosθ, bsinθ) とする。
ここで 0≦θ≦ π
2
として構わない。

θ=0, π
2
のときは題意は明らかに満たされるから、0<θ< π
2
とする。

D における楕円の接線は cosθ
a
x+ sinθ
b
y=1 である。

円の中心を E とすると、DE ベクトルは t を実数として t(bcosθ, asinθ) と書ける。

ここで円が楕円の外側にあることから、t>0 である。
OE ベクトルは (acosθ+bcosθt, bsinθ+asinθt) となる。

OE 方向の直線は、k を実数として
y= bsinθ+asinθt
acosθ+bcosθt
x+k ...(*) と書ける。

円は
{x-(acosθ+bcosθt)}2+{y-(bsinθ+asinθt)}2=(b2cos2θ+a2sin2θ)t2 である。

これに(*)を代入して y を消去し、x の二次方程式と見なして判別式をとり、
(判別式)=0 を k の二次方程式と見なしてその二根の差の二乗を計算すると、

(円の接線の k の差の二乗)
=4 1+(bsinθ+asinθt)2
(acosθ+bcosθt)2
(b2cos2θ+a2sin2θ)t2

となる。同様にして、

(楕円の接線の k の差の二乗)
=4 { a2(bsinθ+asinθt)2
(acosθ+bcosθt)2
+b2}

となる。これらが等しいことから、

{(acosθ+bcosθt)2+(bsinθ+asinθt)2}(b2cos2θ+a2sin2θ)t2-{a2(bsinθ+asinθt)2+b2(acosθ+bcosθt)2}=0
となり、これを因数分解すると、
(t2-1){(b2cos2θ+a2sin2θ)t+ab}2=0
となる。
t>0 のとき、二番目の括弧の中身は正だから、上式を満たす t>0 は t=1 しかない。

このとき、
|OE|2=(acosθ+bcosθ)2+(bsinθ+asinθ)2=(a+b)2
となり、題意は示された。

【コメント】

はじめ、いろいろな解き方を考えたのですが、式が「爆発」して解けませんでした。
今回も、判別式の計算あたりで「爆発」するような気がしましたが、うまくキャンセルしてくれました。
数日前、『日本の幾何 何題解けますか』という本を立ち読みしたら解答が載っていましたが、 上の解答は多分それとは違うと思います。
問題文のように、楕円の二平行接線を決めてから円を決めても、円は楕円のどこかで接している、という 当たり前の事実が、上の解答の要になっているような気がします。


◆神奈川県 諏訪冬葉 さんからの解答。

【問題1】

直角三角形の内接円の半径は

r= 直角を挟む2辺の長さ−斜辺の長さ
 = 周長
−斜辺 (証明略)
なので、上の三角形の周長が正方形の1辺の長さの倍であることを示せばよい

上の三角形の縦の辺の長さをa、正方形の一辺をxとしたとき、
下の三角形の周長は(2x−a)
上下の三角形の相似比は a: a(2x−a)
2x

よって上の三角形の周長は 2x となり、題意が示される。

【問題2】

定理: 平行四辺形 ABCD において、
AB と AD に接する円 O1 と CB と CD に接する円 O2 が外接するとき、その接点 P は対角線 AC 上にある
を証明する。(問題はこの定理の特別な場合)

O1 が AB と接する点を E、O2 が CD と接する点を F
O1,O2 の中心と半径をそれぞれ X1,X2 R1,R2
AC と X1~X2 の交点を Q とする。

A~X1 : C~X2 = R1 : R2

A~X1 と C~X2 は平行なので
△AQX1 と△CQX2 は相似

A~X1 : C~X2 = R1 : R2 より、
X1~Q : X2~Q = R1 : R2

よって、Q=P となる。

後半の問題

方べきの定理から
L= (R1+R2)2
p+q
です。


◆出題者のコメント。

甘泉法師さん、T.Kobayashiさん、諏訪冬葉さん、解答ありがとうございます。

甘泉法師さんの【問題2】、T.Kobayashiさんの【問題3】、諏訪冬葉さんの【問題1】の証明は実に鮮やかだと思います。
とりわけ、T.Kobayashiさんの【問題3】の証明は実に巧みな手法ですね。
媒介変数表示により、式を爆発しそうに広げておいてから、最後に因数分解で締めくくるところなんか、なかなか憎いです。

諏訪冬葉さん、【問題2】の後半は、甘泉法師さんが示されたようにpとqだけで表せます。


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