『3乗してたすと?』

『3乗してたすと?』解答


◆Mike さんからの解答。

・abcが3の倍数でないとき、

a3+b3+c3=4abc
⇔(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)=abc

A=(a+b+c)>1
B=(a2+b2+c2-ab-bc-ca)とおく。

どれをとっても互いに素という条件と式の対称性から、次の3パターンを調べれば十分。

A=abc かつ B=1
A=ab かつ B=c
A=a かつ B=bc

調べた結果、解はありませんでした。

abcが3の倍数の場合も同様に考えてみましたが、複雑になり、うまくいきませんでした。


◆東京都 鳥居 さんからの解答。

答えから示すと、
3+b3+c3=4abc≠0を満たす整数解は存在しない。

証明の方法は、評価式f=|abc|が最小となる整数解が存在すると仮定すると、その評価式よりも小さい解が存在するという矛盾を導き、その仮定が誤りであるとするものである。

その証明のために、以下の準備をする。
・λ=√(-3),ω=(−1+λ)/2とおく。
ωは1の立方根の1つである。

・有理整数をローマ文字で、二次体の整数Z[ω]をギリシャ文字で表す。
・二次体整数αの複素共役数をα'で表す。
・主要公式:ω2=ω', ω'2=ω, ω+ω'=−1, ω−ω'=λ, λ'=−λ
      α3+β3+γ3−3αβγ=(α+β+γ)(α+ωβ+ω'γ)(α+ω'β+ωγ)

・Z[ω]の単数は、±1,±ω,±ω'の6個。
・Z[ω]では素因数分解の一意性が成り立つ。
・α=x+ωyとおく。αはλの倍数←→x+yは3の倍数
 [証]→:α=(ω−ω')(p+ωq)=(p−2q)+ω(2p−q)よりx+y=3(p−q)
   ←:x+y=3kとおくとα=x+ω(3k−x)=λ(ω'x−λωk)

・αはλの倍数でないとき、α3は9の倍数±1。
 [証]α=x+ωyとおくと、x+y=3k±1と書ける。
   α3=x3+3ωx2y+3ω'xy2+y3
   ≡(±1−y)3+3ω(±1−y)2y+3ω'(±1−y)y2+y3 (mod 9)
   ≡±1+3(−1+ω)y+3(ω−ω')y3 (mod 9)
   y3≡y (mod 3)よりα3≡±1 (mod 9)

与えられた方程式を下のように変形する。
 (3a)3+(3b)3+(3c)3=334abc
 (4a)3+(3b)3+(3c)3−334abc=37a3
 (4a+3b+3c)(4a+3ωb+3ω'c)(4a+3ω'b+3ωc)=37a3 (*1)

右辺に37が登場したので、下の式を(mod 37)で考察する。
 (4a+3b+3c)(3a+4b+3c)(3a+3b+4c)
 =36(a3+b3+c3)+111(a2b+a2c+b2c+b2a+c2a+c2b)+226abc
 ≡−(a3+b3+c3)+4abc≡0 (mod 37)

37は有理整数の素数なので、4a+3b+3c, 3a+4b+3c, 3a+3b+4cのうち少なくとも1つは37で割り切れる。
a,b,cの対称性より、4a+3b+3cが37で割り切れるとしてよい。
二次体の素数πはaを割り切るとする。
4a+3b+3cと4a+3ωb+3ω'cがともにπで割り切れるとして、下を考察する。
 (4a+3ωb+3ω'c)−ω'(4a+3b+3c)=4a(1−ω')+3b(ω−ω')=λ(−4ωa+3b)
3λb≡0 (mod π)が得られるが、aとbは互いに素であるからbはπで割り切れず、πは存在するとしてもλの場合に限られる。
同様な考察を行うと、(4a+3b+3c)/37, 4a+3ωb+3ω'c, 4a+3ω'b+3ωcに共通因子があったとしても、λnに限られることがわかる。

★aが3の倍数でないとき
πはλとならないので、(4a+3b+3c)/37, 4a+3ωb+3ω'c, 4a+3ω'b+3ωcはどの2つも互いに素である。
(*1)の右辺が3乗であるため、上の3因子はいずれも整数の3乗に単数を掛けたものとなる。
 (4a+3b+3c)/37=s3
 4a+3ωb+3ω'c=ετ3
 4a+3ω'b+3ωc=ε'τ'3
 (εは単数。s,τ,τ'はどの2つも互いに素。)
s,τ,τ'はいずれもλの倍数にならない。
τ3≡±1 (mod 3)であるから、±ε≡4a+3ωb+3ω'c≡4a (mod 3)より、ε=±1に限られる。
ε=−1となるときは−τをτとおいて、下のようにすることができる。
 4a+3b+3c=37s3
 4a+3ωb+3ω'c=τ3
 4a+3ω'b+3ωc=τ'3
 a=sττ'

これらの式からa,b,cを消去する。
 37s3+τ3+τ'3=12sττ'
 (4s)+τ3+τ'3−12sττ'=(3s)3
 (4s+τ+τ')(4s+ωτ+ω'τ')(4s+ω'τ+ωτ')=(3s)3

二次体の素数σはsを割り切るとする。
4s+τ+τ'と4s+ωτ+ω'τ'がともにσで割り切れるとして、下を考察する。
 (4s+ωτ+ω'τ')−ω'(4s+τ+τ')=4s(1−ω')+τ(ω−ω')=λ(−4ωs+τ)
λτ≡0 (mod σ)が得られるが、sとτは互いに素であるからτはσで割り切れず、σは存在するとしてもλの場合に限られる。
同様な考察を行うと、4s+τ+τ', 4s+ωτ+ω'τ', 4s+ω'τ+ωτ'に共通因子があったとしても、λmに限られることがわかる。
4s+τ+τ', 4s+ωτ+ω'τ', 4s+ω'τ+ωτ'はいずれも有理整数で、このうち少なくとも1つは3の倍数である。
このときこれら3者間の差分を考えると、残り2つも3の倍数であることがいえる。
(4s+τ+τ')/3, (4s+ωτ+ω'τ')/3, (4s+ω'τ+ωτ')/3はいずれも有理整数であるが、
これら3つの積s3は3の倍数でないため、どの2つも互いに素である。
よって、上記の3ついずれもが有理整数の3乗となる
 (4s+τ+τ')/3=u3
 (4s+ωτ+ω'τ')/3=v3
 (4s+ω'τ+ωτ')/3=w3
 (u,v,wはどの2つも互いに素。)

またs=uvwとなるため、s,τ,τを消去して以下を得る。
 u3+v3+w3=4uvw
ここで、0<|uvw|=|s|<|sττ'|=|a|<|abc|となるから、より小さい評価式をもつ解が存在することになる。
これは評価式が最小という仮定に反するため、与えられた方程式を満たす整数解が存在しないことになる。

★aが3の倍数のとき
b,cは3の倍数でないので、b3,c3≡±1 (mod 9)である。
与えられた方程式を満たすためには、b3+c3≡0 (mod 9)である必要がある。
よって、b,cのうち片方は3の倍数+1であり、他方は3の倍数−1である。
またaは9の倍数である。
a=9dとおいて、(*1)を書き直す。
 (12d+b+c)(12d+ωb+ω'c)(12d+ω'b+ωc)=37(3d)3
ここで、12d+b+cは3の倍数であり、37の倍数でもある。

12d+ωb+ω'cについては、下の式を考察する。
 (12d+ωb+ω'c)−ω'(12d+b+c)=12d(1−ω')+b(ω−ω')=λ(−12ωd+b)
この式より、12d+ωb+ω'cはλの倍数であるが、3の倍数ではないといえる。
同様に、12d+ω'b+ωcはλの倍数であるが、3の倍数ではない。
λの指数を見ると、12d+b+cはλ4(=9)で割り切れる必要がある。
これらの結果より、(12d+b+c)/(9*37), (12d+ωb+ω'c)/λ, (12d+ω'b+ωc)/(−λ)はどの2つも互いに素である。
この3つの積はd3であり、いずれも整数の3乗に単数を掛けたものとなる。
 (12d+b+c)/(9*37)=r3
 (12d+ωb+ω'c)/λ=θφ3
 (12d+ω'b+ωc)/(−λ)=θ'φ'3
 (θは単数。r,φ,φ'はどの2つも互いに素。)
φ3≡±1 (mod 3)であるから、±θ≡(12d+ωb+ω'c)/λ≡b (mod 3)より、θ=±1に限られる。
θ=−1のとなるときは−φをφとおいて、下のようにすることができる。
 12d+b+c=9*37r3
 12d+ωb+ω'c=λφ3
 12d+ω'b+ωc=−λφ'3
 d=rφφ'
これらの式からd,r,φを消去する。

 9*37r3+λφ3−λφ'3=36rφφ'
 37(3r)3−(λφ)3−(−λφ')3=12(3r)(λφ)(−λφ')
 (12r)3−(λφ)3−(−λφ')3−3(12r)(λφ)(−λφ')=(9r)3
 (12r−λφ+λφ')(12r−ωλφ+ω'λφ')(12r−ω'λφ+ωλφ')=(9r)3

二次体の素数ρはrを割り切るとする。12r−λφ+λφ'と12r−ωλφ+ω'λφ'がともにρで割り切れるとして、下を考察する。
 (12r−ωλφ+ω'λφ')−ω'(12r−λφ+λφ')=12r(1−ω')−λφ(ω−ω')=3(−4ωλr+φ)
3φ≡0 (mod ρ)が得られるが、rとφは互いに素であるからφはρで割り切れず、ρは存在するとしてもλの場合に限られる。
同様な考察を行うと、12r−λφ+λφ', 12r−ωλφ+ω'λφ', 12r−ω'λφ+ωλφ'に共通因子があったとしても、λkに限られることがわかる。
12r−λφ+λφ', 12r−ωλφ+ω'λφ', 12r−ω'λφ+ωλφ'はいずれも有理整数で、このうち少なくとも1つは3の倍数である。
このときこれら3者間の差分を考えると、他の2つも3の倍数といえる。
しかし、上の考察で使った式よりφおよびφ'がλで割り切れないため、
少なくとも2つはλ3(=−3λ)の倍数とはならないことがいえる。
よって、(12r−λφ+λφ')/3, (12r−ωλφ+ω'λφ')/3, (12r−ω'λφ+ωλφ')/3はいずれも有理整数であるが、どの2つも互いに素である。
これら3つの積は(3r)3であり、3ついずれもが有理整数の3乗となる。
 (12r−λφ+λφ')/3=x3
 (12r−ωλφ+ω'λφ')/3=y3
 (12r−ω'λφ+ωλφ')/3=z3
また3r=xyzとなるため、r,φ,φ'を消去して以下を得る。
 x3+y3+z3=4xyz
ここで、0<|xyz|=|3r|<|3rφφ'|=|3d|<|9d|=|a|<|abc|となるから、より小さい評価式をもつ解が存在することになる。
これは評価式が最小という仮定に反するため、どちらの場合でも与えられた方程式を満たす整数解が存在しないことになる。

【感想】

久々に整数の不可能問題を楽しませてもらいました。
本問は、不可能問題で有名なフェルマーの大定理(n=3の場合)の解法を参考にして解いてみました。
方程式を降下させる方法を使っていますが、1段の降下では元の形に戻らず、2段の降下を施して元の形に帰着させる、というのが面白いと思いました。
もっとスッキリとした解き方があるでしょうか?


◆出題者 神奈川県 alpha さんからのコメント。

Mikeさん、鳥居さん、解答ありがとうございます。

まだ、詳しくは見ていませんがおそらく鳥居さんので正解でしょう。
この問題は既に未菜実さんから出題された『X/Y+Y/Z+Z/X』と同じタイプの問題です。

最終的には楕円曲線に帰着させることで検討できるとのことですが、私にはよくわかりませんでした。
そんな感じです。


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