『投手の配球と打者の読み』解答


◆宮城県 甘泉法師 さんからの解答。

Pの配球が直球である確率をxとする。
Bの読みが直球である確率をyとする。

打率は
 K(x、y)
= 0.8*xy + 0.2*x(1-y)+0.1*(1−x)y +0.5*(1−x)(1−y)
=0.5 - 0.3*x - 0.4*y + xy

ピッチャーの最善策は、∂K
∂x
=-0.3 + y から

Kが最小になるよう x= θ(0.3-Y)
ここでYはピッチャーによるyの推測値。

ここで θ(z)=1 for z≧0 , 0 for z<0

K=0.5 - 0.3 * θ(0.3 - Y) - 0.4 y + y* θ(0.3-Y)
=0.5 - 0.4*y + (y-0.3)* θ(0.3-Y)

バッターの最善策は、∂K
∂y
=-0.4 + x から

Kが最大になるのは y=θ(X-0.4)
ここでXはバッターによるxの推測値。

K=0.5 - 0.3*x - 0.4*θ(X-0.4)+x*θ(X-0.4)
=0.5 - 0.3*x + (x - 0.4)*θ(X-0.4)

両者がそれぞれ最善策をとると
K = 0.5 - 0.3*θ(0.3-Y) - 0.4*θ(X-0.4) + θ(0.3-Y)θ(X-0.4)

 Y<0.3Y>0.3
X<0.40.2 *0.5 **
X>0.40.8 **0.1 *


* ピッチャーの読み勝ち
** バッターの読み勝ち

【コメント】

推測値を信頼して全部直球か全部変化球にすることを「最善策」としています。


◆京都府 大空風成 さんからの解答。

[Pの配球]と[Bの読み]の各組み合わせにおける、Bが打ち返す確率
  Pの配球: 直球 Pの配球:変化球
Bの読み: 直球 0.8 0.1
Bの読み:変化球 0.2 0.5

0≦p≦1、0≦b≦1として、
Pが、直球を p 、変化球を 1-p の割合で配球し、
Bが、直球を b 、変化球を 1-b の割合で読んだとする。

このとき、Bが打ち返す確率 E(p, b) は、
E(p, b)=0.8pb+0.1(1-p)b+0.2p(1-b)+0.5(1-p)(1-b)
    =(p-0.4)(b-0.3)+0.38

【問題1】

もし、表が次のようになっていたら、
  Pの配球: 直球 Pの配球:変化球
Bの読み: 直球 0.8 0.5
Bの読み:変化球 0.2 0.1

Bの読みが直球でも変化球でも、Pの配球はすべて変化球となる。

ところが、PもBも、冒頭の表にある事実を知っているのだから、
Bの読みがすべて直球とすると、Pの配球の最善策はすべて変化球となり、
Bの読みがすべて変化球とすると、Pの配球の最善策はすべて直球となる。
「配球」や「読み」が事前に相手に判明することは一切ないので、
Bがどんな読みをした場合でも、打ち返される球数を最も少なくするには、
つまりPの最善策は、直球と変化球を混ぜた配球になる。

p=0.4 のとき、b がいかなる値をとっても、E(p=0.4, b)=0.38 となる。
p<0.4 のとき、b<0.3 なら、 E(p<0.4, b<0.3)>0.38 となり、
p>0.4 のとき、b>0.3 なら、 E(p>0.4, b>0.3)>0.38 となるので、
Pが打ち返される球数をできるだけ少なくするためには、p=0.4 が最善策。

50×0.4=20、50×(1-0.4)=30 だから、
Pは50球のうち、直球 20 球、変化球 30 球を混ぜて投げるのが最善である。

【問題2】

同様に、Bの最善策も、直球と変化球を混ぜた読みになる。

b=0.3 のとき、p がいかなる値をとっても、E(p, b=0.3)=0.38 となる。
b<0.3 のとき、p>0.4 なら、 E(p>0.4, b<0.3)<0.38 となり、
b>0.3 のとき、p<0.4 なら、 E(p<0.4, b>0.3)<0.38 となるので、
Bは打ち返す球数をできるだけ多くするためには、b=0.3 が最善策。

50×0.3=15、50×(1-0.3)=35 だから、
Bは50球のうち、直球 15 球、変化球 35 球を混ぜて読むのが最善である。

【問題3】

PもBも最善を尽くすと、つまり p=0.4、b=0.3 のとき、
Bが打ち返す確率は、E(p=0.4, b=0.3)=0.38 となる。

Pだけが最善を尽くすと、つまり p=0.4、0≦b≦1 のとき、
Bが打ち返す確率は、E(p=0.4, b)=0.38 となる。

(余談1)
Bが、冒頭の表にある事実を知っていることから、
Pが最善をつくした場合 p=0.4 にすることが分かり、
それに合わせて b=0.4 とすると、
50 球の1球ずつについて、すべて読みが当たった場合、
0.4×0.8+(1-0.4)×0.5=0.62、50×0.62=31 球を打ち返す可能性もある。
逆に、 b=0.4 としても、最大限読みがはずれて、
0.4×0.1+0.2×0.5+0.4×0.2=0.22、50×0.22=11 球を打ち返すにとどまる可能性もある。
「配球」や「読み」が事前に相手に判明することは一切ないのだから、あくまで可能性である。
(余談1終)

Bだけが最善を尽くすと、つまり 0≦p≦1、b=0.3 のとき、
Bが打ち返す確率は、E(p, b=0.3)=0.38 となる。

(余談2)
Pが、冒頭の表にある事実を知っていることから、
Bが最善をつくした場合 b=0.3 にすることが分かり、
それに合わせて p=1-0.3=0.7 とすると、
50 球の1球ずつについて、すべてBの読みがはずれた場合、
0.3×0.1+(1-0.3)×0.2=0.17、50×0.17=8.5 球に抑える可能性がある。
逆に、 p=0.7 としても、最大限Bに読みを当てられて、
0.3×0.8+0.4×0.2+0.3×0.5=0.47、50×0.47=23.5 球を打ち返される可能性もある。
「配球」や「読み」が事前に相手に判明することは一切ないのだから、あくまで可能性である。
(余談2終)


◆出題者のコメント。

甘泉法師 さん、大空風成 さん、解答ありがとうございます。
甘泉法師 さん、惜しくも今一歩でしたね。
大空風成 さん、3問ともみごと正解です。
導入の方法も説明も完璧だと思います。

ちなみに、(ゲーム理論の功績で、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュの名にちなんで、) プレイヤー全員が最善策をとったときの均衡状態を、ゲーム理論では「ナッシュ均衡」というそうです。


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