美しい公式

『美しい証明』解答



◆東京都 しらはま 律雄 さんからの解答。

『0.999999999・・・=1』???

高校時代に、『0.999999999・・・=1』だという話が出た時に、何か釈然としない感じを持ったことを今でも覚えている方々がいらっしゃると思います。
「『0.999…は無限に1に近い(近づく?)数だ』と言うならば、認めてもいい。
だけど、『1に等しい』と言われると、…?」

(そのモヤモヤ(躓き?!)を新聞に表明なさった方の記事を読んだ時に、下記証明を思いつきました。)

そう感じているときに、無限等比級数の公式を持ち出されて、
「0.999… = 0.9 + 0.09 + 0.009 + …
即ち、初項0.9、公比0.1の無限等比数列の和であるから、
公式 S = a / ( 1 - r ) に、a = 0.9、r = 0.1 を代入して、S = 1。証明終わり」

とかやられても、モヤモヤは消えないでしょう。
煙に巻かれた気が深まったりして...。

そういう人は、その公式の証明に際して、


 (1)      S = a + ar + ar2 + ar3 + …
 (2)     rS =ar + ar2 + ar3 + ar4 + …
[(1)-(2)]
 (3)(1-r)S = a + 0 +  0 + 0 + 0 + 0 + …
と無限個の項を一挙に(!)消し去った時に、
「(2)の方が、1つ先まで項があるんじゃないの…」のような疑問を抱いたでしょうから、
その公式を使って、0.999999999・・・=1を証明(!)されも、納得できないでしょう。

小学生でも分かる『0.999999999・・・=1』の証明

割り算や分数や小数を習った人ならば、
『1/3を小数に直そうとしても(1÷3を実行すると)、0.333… となって止まらない。
3がずーーっと(無限に)続く』ことに、異論はないでしょう。
(知らなかった人は、手を動かして割り算を筆算で実行してみてください :-P)

即ち、(4) 1/3 = 0.333…

それを認めたら、両辺を各々3倍します。

(5)[(4)×3] (1/3)×3 = 0.333…× 3

(6) ∴ 1 = 0.999…

(註(念の為):小数の掛け算をする時に、普通は最下位桁(右端)から上位桁(左)へと各桁の計算を進めますが、 (5)の右辺においては、全ての桁が 3×3=9 で、桁上がりが全く発生しませんので、左からして行こうと、ランダムにしまくろうと、一挙にしてしまおうと(!)、結果は同じで、 0.999…(無限に9が続く)にしかならないことは、明白だとおもいます。)

証明終わり

PS:

上記の無限級数の公式の証明では、無限個の項の列が(1)と(2)の両方に出現し、それらの間の打ち消し合いが鍵のため、(項数に関して) ∞ − ∞ = 0? というような疑問の余地を残す。
更に、打ち消される部分だけを見れば、 (1)の方が初項aの分だけ短く感ぜられる(1対1対応が逆に働いてしまう)ため、無限の彼方まで、全部消えるのか(これが大事なのに)、得心できない人を発生させる。
私の証明では、無限列は、1つしかなく、∞ × n の形をしており、結果は、無限列のまま(同じ桁数で;1対1対応!)残る(こちらではこれが大事)ことが分かるので、納得し易い(と私は勝手に評価しております)。


【コメント】

 実はこの疑問については以前に中学生の方から送られてきており、私も自分なりに答えたことがあります。
その時は結局、たぶん納得してはいただけなかったのではないかと思います。
文系の中年の方と、今夏に一晩飲みあかしながら議論したこともあります。
いずれの証明にしろ無限の扱いをきちんと定義しなければ意味がないのでしょうが、この証明は納得しない方を説得する作戦としては有効かもしれません。


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