『二項係数』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答

【問題1】

予想は正しい。

∵ m=2t−1  t≧3において
2mm-1≡3 mod 8である。――――(1)

一方 2mm-1 ≧8 であるから
2mm-1=2k−1≡7 mod 8 であり3にはならない。

(1)の証明

m=2t−1においてのみ2mm-1は奇数である。
従って、2mm-1 mod 23 を考えるときは
1〜2mの数の 素因数中の奇数項のmod 23のみ考慮すればよい。

さて、1〜2p 中の20×奇数のものに関してのmod 8は

1、3、5、7、1、3、5、7。。。。。1、3、5、7

と4個ずつの繰り返しである。

ところで 1×3×5×7≡1 mod 8であるから
それらの積も≡1 mod 8である。

これは1〜2p 中の 2pー3×奇数 のものまで同じである。

p-2×奇数のものに関して奇数部のmod 8は 1、3の2項である。

p-1×奇数のものに関して奇数部のmod 8は 1のみである。

p×1のものに関しての奇数部のmod 8は 1のみである。

従って p≧2において 
{(2p)!の奇数因数部}≡3 mod 8 である。 ―――(2)

2mm-1 (2t+1−2)!
(2t−2)!2t
t+1
t!2t
× t(2t−1)
t+1(2t+1−1)

と恒等変形できる。

2の倍数を消去して mod 8を考えると t≧3のとき (2)を適用すると、

2mm-1 3
3×3
×1×7
1×7
≡3 mod 8

である。因みにt=2のとき

2mm-1 3
3×3
×1×3
1×7
≡7 mod 8

である。

【感想】

「データ圧縮符号の構造に関する研究」として、実用と結びつくということでとても興味深く思いました。


◆茨城県 こんにちは さんからの解答

私はm≠2t-1のとき2mCm-1は偶数となることを示します。
当然、2mCm-1は奇数である2k-1にはなりえません。

【解答】

【補題1】

n!の素因数分解したときのpの指数は
i=1
[ n
pi
]となる。

【証明】

n!の指数は


i=1
{i*(piで割り切れてpi+1で割り切れない1以上n以下の自然数の個数)}
=
i=1
{i*([ n
pi
]-[n
pi+1
])}
=
i=1
{(i-(i-1))*[ n
pi
]}
=
i=1
[ n
pi
]

証明終

【補題2】

α、βを実数とすると[α+β]-([α]+[β])=0,1となる。

【証明】

αとβは、0≦γ,δ<1なる実数γとδを用いて、
α=[α]+γ、β=[β]+δと書ける。

α+β=[α]+[β]+γ+δ、0≦γ+δ<2より

0≦γ+δ<1のとき[α+β]=[α]+[β]、
1≦γ+δ<2のとき[α+β]=[α]+[β]+1

よって[α+β]-([α]+[β])=0あるいは1となる。

証明終

【補題3】

自然数Nをs進法で表す(もちろんsは2以上の自然数)。
N=
i=0
(ai*si)となります。

このとき、ahはah= [ N
sh
]-s[N
sh+1
]

【証明】

N
sh
={ h-1

i=0
(ai*si)}/sh+{
i=h
(ai*si)}/sh

0≦ h-1

i=0
(ai*si)≦ h-1

i=0
{(s-1)*si}=(s-1)* sh-1
s-1
=sh-1<shより

[N
sh
]= h

i=h
(ai*si-h) =ah+
i=h+1
(ai*si-h)

同様に[N
sh+1
]=
i=h+1
(ai*si-h-1)
s*[N
sh+1
]=
i=h+1
(ai*si-h)

よってa h =[ N
sh
]-s[N
sh+1
]となる。

証明終

【補題4】

nとrを0≦r≦nなる自然数とする。
nとrをp進法で表す。

n=
i=0
(bi*pi)、r=
i=0
(ci*si)、n-r=
i=0
(di*si)、

ある0以上の整数hに対してbh<ch+dh となるとき、
nCrはpで割り切れる。

【証明】

補題3より

b h =[ n
ph
]-p[n
ph+1
]、c h =[ r
ph
]-p[r
ph+1
]、d h =[ n-r
ph
]-p[n-r
ph+1
]

問題の条件bh<ch+dhに代入すると

[ n
ph
]-p[n
ph+1
]<([r
ph
]-p[ r
ph+1
])+([ n-r
ph
]-p[n-r
ph+1
])

[ n
ph
]-[r
ph
]-[ n-r
ph
]<p([n
ph+1
]-[ r
ph+1
]-[ n-r
ph+1
])

ここで補題2より
[ n
ph+1
]-[r
ph+1
]-[ n-r
ph+1
]=0あるいは1である。

[ n
ph+1
]-[r
ph+1
]-[ n-r
ph+1
]=0と仮定すると
[ n
ph
]-[r
ph
]-[ n-r
ph
]<0となる。

これは補題2の
[ n
ph
]-[r
ph
]-[ n-r
ph
]=0あるいは1に反する。

よって[ n
ph+1
]-[r
ph+1
]-[ n-r
ph+1
]=1である。

nCr= n!
r!(n-r)!
を素因数分解したときのpの指数は補題1より

i=1
([ n
pi
]-[r
pi
]-[n-r
pi
])

補題2より[ n
pi
]-[r
pi
]-[ n-r
pi
]=0あるいは1だから


i=1
([ n
pi
]-[r
pi
]-[n-r
pi
])≧[ n
ph+1
]-[r
ph+1
]-[n-r
ph+1
]=1

よってnCrはpで割り切れることがわかる。

証明終

さて、冒頭のm≠2t-1のとき、2mCm-1は偶数となることを示す

mが偶数のとき、m-1とm+1は奇数である。

2mを2進数で書くと20の桁は0、m-1、m+1の20の桁は1

よって補題4より2mCm-1は偶数である。

mが奇数のとき、mの一番下の桁は1である。

よって、m-1の20の桁以外の桁とmの20の桁以外の桁は一致する。

ここでm≠2t-1であることを思い出そう。

よって、mを2進数で表す。

m=
i=0
(ei*2i)

すると、eh-1=0、eh=1となる自然数hが存在する。

2m=
i=0
(ei*2i+1)=
i=1
(ei-1*2i)

m-1=
i=1
(ei*2i)

m+1を2進数で表すと
m+1=
i=1
(fi*2i)

2m,m+1,m-1の2hの桁はそれぞれ、0,fh,1

よって、fhの値が0であろうが1であろうが、
0=eh-1<1+fh=eh+fhが成立する。

よって、補題4より2mCm-1は偶数であることが示された。

解答終

【コメント】

Y.M.Ojisan さんからの解答とあわせて、
2mCm-1=2k-1となるのは m=1あるいはm=3の場合に限られることが示されます。

よって、ひさおさんの予想は正しいことが示されました。


◆東京都 ぽこぺん さんからの解答

Y.M.Ojisan さんの mod 8 で考えた見事な証明を見ているうちに,(1)の別証を思いつきました。

Pascal の三角形を mod 8 で考えると,2N の段(下図の青色)はきれいな形をしています。
N≧2 のときには,1, 4, 6, 4, 1 の間に 2N-2 - 1 個の 0 が入った形になるのです。

この証明は簡単ですが,たとえば母関数を使ったものは下記の【注】のようになります。

問題の m = 2t-1 の段(ピンク色)の中央付近は,m = 2t の段の中央付近の値から計算できます:

m = 2t の中央の 6 に対して,6 を挟む直上の行中央の 2 つの項は等しいから,共に 3 か,共に 7 となるしかありません。
しかし,7 の場合は上図のように右端が 1 にならないので適しません。
そこで中央の 2 項は 3 と決まり,その上の行では a+b≡3 (mod 8) となります。

ここで t≧3 のときには a≡0 となることが次のように証明できるので,b≡3 となるわけです。

実際,m = 2n-1 (奇数) のとき,2mCm
(4n-2)(4n-3)…(2n)
(2n-1)(2n-2)…1
= (奇数)×2n
(n-1)!
となります。

ここで,分母の (n-1)! に含まれる 2 の最大指数は
[ n-1
2
] + [n-1
4
] + [n-1
8
] + [n-1
16
] + …
で与えられるので,m = 2t-1,すなわち n = 2t-1 のとき,

(2t-2-1) +(2t-3-1)+ … +(21-1)
= 2t-1 - t
= n - t

となります。

したがって,m = 2t-1 のとき,2mCm に含まれる 2 の最大指数は
n - (n - t) = t となり,
t≧3 のとき 2mCm ≡ 0 (mod 8) となることがわかります。

【注】

2 つの同じ次数の整数係数多項式
f(x) = Σak xk,g(x) = Σbk xk の係数の間に
ak ≡ bk (mod n) の関係があるとき,
f(x) ≡ g(x) (mod n) と定義する。

このとき,mod 8 で

(1+x)4 = 1 + 4x + 6x2 + 4x3 + x4

(1+x)8
= (1 + 4x + 6x2 + 4x3 + x4)2
≡ 1 + 4x2 + 6x4 + 4x6 + x8
= (1+x2)4

であることに注意すると,

(1+x)16
≡ {(1+x2)4}2
= (1+x2)8
≡ (1+x4)4

(1+x)32
≡ {(1+x4)4}2
= (1+x4)8
≡ (1+x8)4

などとなる。

【感想】

青色の行のような美しい性質は有名でなかったように思います。
初めて気づきました。


◆東京都 ぽこぺん さんからの解答

Pascal の三角形による証明がうまくいったのに気を良くして,

2mCm-1 が奇数 ⇔ m = 2t-1 (t = 1, 2, …)

についても考えてみました。

再び mod 8 で Pascal の三角形を作ると,
2N の段は 1,4,6,4,1 が間に 2N-2-1 個の0 を挟んで並んでいます。
(上記の注参照)

このとき,Pascal の三角形の性質から,明らかに

0≦n<2N のとき,

C(2N + n, r) ≡ 偶数 (n<r<2N)
C(2N + n, r) ≡ 奇数 (r = n, 2N)

であることがわかります。
(式で書くよりも,下図の例 (N=4) を見れば一目瞭然ですね)

さらに,n の範囲を 4 つに分けて,

0 ≦n<1・2N-2 のとき,
 C(2N + n, r) ≡ 1 (r = n, 2N)

1・2N-2≦n<2・2N-2 のとき,
 C(2N + n, r) ≡ 5 (r = n, 2N)

2・2N-2≦n<3・2N-2 のとき,
 C(2N + n, r) ≡ 7 (r = n, 2N)

3・2N-2≦n<4・2N-2 のとき,
 C(2N + n, r) ≡ 3 (r = n, 2N)

に注意すれば,まとめて全部証明できてしまいました。


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