『m進表示の末尾の数字』解答


◆茨城県 小川 康幸 さんからの解答。

まず、補題を3つ、命題を2つ示す。

【補題1】

pを素数とする。任意の自然数mに対して、
mp≡m (mod p)

【証明】

g(m)=mp-mとおく、
g(1)=1-1=0はpで割り切れる。

m=kのとき、g(k)がpで割り切れると仮定する。

1≦i≦p-1のとき、
(i!)*(pCi)=p*(p-1)*・・・*(p-i+1)

i!とpは互いに素だから。pCiはpで割り切れる。

g(k+1)≡g(k+1)-g(k)= p-1
Σ
i=1
{(pCi)*ki}≡0 (mod p)

よって、g(k+1)もpで割り切れる。
よって、任意の自然数mに対して、mp≡m (mod p)が成立する。

証明終

【補題2】

任意の自然数、mとkと任意の素数pをとる。

mk+p-1≡mk (mod p)が成立する。

【証明】

補題1より

mk+p-1≡(mk-1)*(mp)≡(mk-1)*m≡mk (mod p)

証明終

【補題3】

h(x)を整係数かつ最高次の係数が1のn次式とする。
h(x)≡0 (mod p)の解はn個以下である。

【証明】

n=1のとき
h(x)=x-aだから明らか

n=kのとき正しいと仮定する。

n=k+1のとき
h(x)≡0 (mod p)が解を持たないときは明らかに正しい。

h(x)≡0 (mod p)が解bを持つとき
h(x)=(x-b)*l(x)+h(b)と書ける。
l(x)は、整係数かつ最高次の係数が1の、k次多項式である。

0≡h(x)≡(x-b)*l(x)+h(b)≡(x-b)*l(x) (mod p)

x≡b (mod p) or l(x)≡0 (mod p)

l(x)≡0 (mod p)の解は、帰納法の仮定より、k個以下。
よって、h(x)≡0 (mod p)の解はk+1個以下である。

よって、補題3は示された。

【補題4】

pを素数、lを自然数とする。
l≡1 (mod p-1) ⇔ 任意の自然数mに対して、ml≡m (mod p)となる

【証明】

l=(p-1)*k+1のとき

補題2より
m(p-1)*k+1≡m(p-1)*(k-1)≡・・・≡mp-1+1≡m (mod p)

逆に、任意の自然数mに対して、ml≡m (mod p)となるとき
lをp-1で割った余りが1でないと仮定する。

l=(p-1)*k+r (2≦r≦p-2)のとき

m≡ml≡m(p-1)*k+r≡m(p-1)*(k-1)+r≡・・・≡mr (mod p)

よって、mr-m≡0 (mod p)がp個の解を持つ事になり、補題3に反する。

またlが(p-1)で割り切れるとき

m≡ml≡m(p-1)*k≡m(p-1)*(k-1)≡・・・≡mp-1 (mod p)

よって、mp-1-m≡0 (mod p)がp個の解を持つ事になり、補題3に反する。

よって、l≡1 (mod p-1)が示された。

証明終

【命題1】

sがある素数pの2乗で割り切れるとき、f(s)=0となる。

【証明】

f(s)≠0となると仮定する。

l=f(s)とおくと、l≧2であるから、
pl≡p (mod m)となるはずだが、
このとき、p≡pl≡0 (mod p2)となって不合理

証明終

【命題2】

sが平方因子を持たないとき、sをs=p1*p2*・・・*ptと素因数分解すると

f(s)=lcm{p1-1,p2-1,・・・,pt-1}

となる。

ただし、lcm{p1-1,p2-1,・・・,pt-1}はp1-1,・・・,pt-1の最小公倍数とする。

【証明】

補題4より

任意の自然数mに対して、
ml≡m (mod pi)となる ⇔ l≡1 (mod pi-1)

よって、

任意の自然数mに対して、
ml≡m (mod pi)となる ⇔ l≡1 (mod lcm{p1-1,p2-1,・・・,pt-1} )

となる事がわかる。

よって、f(s)=lcm{p1-1,p2-1,・・・,pt-1}となることがわかる。

証明終

命題1、命題2より問題1〜3の解答はこうなる。

【問題1】

f(2)=1, f(3)=2, f(4)=0, f(5)=4, f(6)=2, f(7)=6

【問題2】

f(m)≠0 ⇔ mが平方因数を含まない

【問題3】

命題2より、mをm=p1*p2*・・・*ptと素因数分解すると
f(m)=lcm{p1-1,p2-1,・・・,pt-1}となる。


◆出題者のコメント

小川康幸さん、解答ありがとうございます。

【問題1】,【問題2】,【問題3】とも、すべて正解です。
必要な証明は何1つ省略することなく、しかもその証明が実に鮮やかです。
完璧で期待以上の解答です。

m進表示のときは、mの素因数分解での各素数の指数が、すべて1のときだけ f(m)≠0 となり、
それらの各素数より1少ない数たちの最小公倍数が求める f(m) となる。
これって、面白い関係ですよね。


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