『フランク・モーリーの四角形?』

『フランク・モーリーの四角形?』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答

【問題1】

90度回転に対して対称である。従って、PQRSは正方形である。

【問題2】

反例あり:ABDが直角2等辺三角形でCがBDの中点
なお、自明な正方形とこの反例以外には存在しない。証明は後述する。

(注記) 4角形ではないので反例というべきか若干微妙ですが、正方形でないという方を重視した。

【発展問題1】

少なくとも 自明な形以外のものがある。これで全てかどうかは未確認である。

菱形の場合: 自明な長方形(下図参照) ないし 直角3角形(下図参照 CはBD上) 

長方形の場合: 自明な菱形(下図参照)  ないし 鏃型(下図参照)〜独楽型(下図参照) 

【発展問題2】

正N角形以外である反例がある。下図参照 5角形〜12角形の場合を示す。
3の倍数角形の場合は自由度が大きく(R)、6角形と12角形の4列目((順逆逆順))の場合についてのみ動画で示す。
なお、証明と「。順逆逆順。」の意味は後段参照。

N 逆逆逆逆。。。=自明解 。。。順逆逆順。。。=反例解 。。。順逆逆逆。。。逆逆順。。。 。。。順逆逆順順逆逆順。。。 等
5 なし なし
6 なし なし
7 なし
8 なし
9
10
11
12

【準備:隣接頂点間の関係】

(1) 円Oを中心とする円周上に等間隔に点PQRを取ります。また、各辺の中心角をθとする。
(2) 点AをPQに対してOの反対側に適当に取ります。
(3) PのQAに対する対称点をP’とします。
(4) AP’を通る直線とQを中心とし半径QPの円とのもう一つの交点をR’とします。
(5) RP’の垂直2等分線とAP’を通る直線との交点をB+
(6) RR’の垂直2等分線とAP’を通る直線との交点をB-とする。
 この時、∠QAP=∠QAP’ ∠QBR=∠QBR’ である。ここで B=B+ 又は B-
であって、A、Bは本問題の外側の図形ABCD...の隣接頂点間の持つべき関係にある。
ただし、その関係はB+ 又は B-の2通りあり、以後 +:順接、−:逆接 とぶ。
また B+=順接(A,θ) B-=逆接(A,θ) と表すこととする。
 (注記) ABCD..が自明な正N角形の場合、全て逆接である。

図1 隣接頂点間の関係
  
また、点Pを Oを中心に角度α回転させる操作を 回転(P、α)で表すとする。

【補題1:3回隣接頂点間の関係】

逆接(逆接(逆接(A,θ),θ),θ)=回転(A、-3θ)    −−−(a)
 (1)一般性を失わず 点P、Q、Rの座標を (u,-v) (1.0) (u, v) ここで u=(1-D2)/(1+D2) v=2D/(1+D2) とする。
 (2)Aの座標を(x,y)とする。
 (3)T(A)=回転(逆接(A,θ),−θ)とすれば (a)式は T(T(A))=(T(A*))* −−−(b) と等価である。 
    ここで*はQOPの2等分線対称な点を表す。

 T(A)を フリーの数式処理ソフトMaxima-Primerにより計算すると x、y、Dの整数係数有理多項式が得られる。即ち、Dの4次、x,yの同次3次以下の有理多項式で下記である。


さらに、これを用いてC’=(C,C)=T((T(A)) を計算すると、

一方、C’’=(T(A*))*を計算すると同じ値が得られる。即ち、(b)が成立している。
なお、試しにT(C)も計算させたら、意外に早く計算できて、=(x、y)=Aとなり、(a)でも証明できた。

 Maximaへのコマンド(バッチファイル)下表に示す。
表1 MAXMIA 入力コマンド
また、計算結果を下表に示す。
表2 MAXIMA 計算結果
【補題2:変形法】

逆接→逆接→逆接→逆接 = 順接→逆接→逆接→順接 =逆接 である。
 ∵ 
(1)補題1より 逆接→逆接→逆接=恒等である。よって、逆接→逆接→逆接→逆接=逆接である。
(2)補題1より 逆接→逆接=逆接ー1である。よって、順接→逆接→逆接→順接=順接→逆接ー1→順接である。これを図1でみると、A→B→(B)inv-→B- である。従って、順接→逆接→逆接→順接=逆接である。

【補題3:唯一性】

逆接=恒等  となるAは一点のみ。
∵ ここでは B=Bとする。
図1において AとBがそれぞれPQ,QRに対して相対的に同じ位置にあると言う主張である。
従って、凾`QP≡凾aRである。これより∠QAB=∠QBAであって、QB=QA=PAである。
すなわち、Aは∠QOPの2等分線上である。
 Aが2等分線上をPQ上から外に移動してゆく時、∠PAQは 180度→0に単調に減少する。一方∠QABは負の値→90度−θ/2に単調に増加する。したがって解は高々1個であって、それは自明な正多角形の場合である。
 因みにこれを計算すると、PQR..の外接円の半径を1とするとき、点ABC..は中心Oから  の位置である。ここで D=tan(ф) ф=(90-180/N) 度 である。

【まとめ】

 (1)補題3より、少なくとも逆接のみで構成された自明な正多角形のABCD。。。が1個存在している。
 (2)補題1の性質により、PQR。。。が3の倍数の正多角形の場合、A点をRのクラスで自由に選べるABCD。。。が存在している。
 (3)補題2により (1)ないし(2)で作成されたABCD。。。をベースに、逆接が連続して3m+1個ある間は、これを順接+逆接3m−1個+順接に置き換えてABCD。。。を作ることが可能であり、これは正多角形ではない。ただしmは自然数である。最小はm=1のときの4であり、4角形以上で正N角形でないもの作ることが可能である。

(注記) 少なくとも以上の反例があるとと主張しているだけである。その他にあるかも知れない。


【問題2 4角形の場合の証明】

 P::(-1,1),Q:(1,1),R:(-1,1),S:(-1,-1) とし A:(Ax,Ay) B:(Bx,By) とし R'とP'の中点をM'とする。
 図1に従って、θ=90度の場合を計算をすると、下記の結果が得られた。実際の計算は次の手順である。
  
  (1)QAを対称線としてP'を求める。
  (2)QをAP'上に射影してMを求める。
  (3)AP'上Mを中心にP'の対称点R'を求める。
  (4)RP'の垂直2等分線とAP'の交点をB+とする。
  (5)RR'の垂直2等分線とAP'の交点をB-とする。

なお、計算はフリーの数式処理ソフトMaxima-Primerによった。コマンド入力と結果出力を表3に示す。
 (大変判りにくいと思いますが、解説は省略させていただきます。) 

 順接の場合 [Xf(Ax,Ay)、Yf(Ax,Ay)]=回転(順接((Ax,Ay),90度)、−90度) とおけば、


 逆接の場合 [Xr(Ax,Ay)、Yr(Ax,Ay)]=回転(逆接((Ax,Ay),90度)、−90度) とおけば、


 

である。
 
 さらに点Cは [ X*(X*(Ax,Ay),Y*(Ax,Ay)) , X*(X*(Ax,Ay),Y*(Ax,Ay)) ]=[X** (Ax,Ay) , Y** (Ax,Ay)]で表わせます。
ここで*はf又はrであり、4通りあります。また4角形であるのでD点経由逆回りにも表わせ、
対称性から[X** (Ax,-Ay) , -Y** (Ax,-Ay)] であるといえます。 計算結果は以下です。 








これらの式をB経由とD経由のCが等しいとして解けば題意を満たす[Ax,Ay]が得られる。
組み合わせは全部で16通りあるが、環状に連結していることから 
rr=rr , rr=rf , fr=rf , rf=rf , ff=fr , ff=ff
の6通りを考えればよい。

以下省略するが、分母を払って方程式を解くと
[Ax,Ay]=[±1、±1]、[0.0]、[3±√3、0] という解が得られる。

一方、□PRQSは必ず□ABCDの内側にできるから、
[±1、±1] 、[0.0]は解ではない。

また、[3-√3、0]は辺を見込む角度が120度以上であるからこれも解ではない。
よって、A=[3+√3、0]のみである。

また、この解をもたらす方程式の組み合わせは 
rr=rr(正方形) と fr=rf(直角2等辺三角形)の2個である。

表3 Maxima 計算 入力と出力

【感想】

美しい「モーリー定理」を数式処理で泥臭くまとめてしまい、本質が見えていないません。
そんな状態なので、任意のθに対して補題1が成立しているのは、かなり驚きの事実です。
幾何学的な何か腑に落ちる解釈方法があるのでしょうね。

3の倍数角形以外では、強に凸という条件を図形ABC...につければ、正N角形に限られるように予想されます。


◆出題者のコメント

こんなに早く、解答をいただけるとは思っていませんでした。

【問題2】はまあ直角二等辺三角形の場合はご愛嬌として、PQRSが正方形ならABCDは正方形になります。
モーリーの定理と似たような解法で初等幾何的に解くことができます。

【発展問題2】に関しては完全な解答は持っていませんでした。
しかし、Y.M.Ojisanさんの解答は私の予想外なものでした。
私はN=4,5,6で成立してN≧7で成立しないと思っていましたから。

N=5の場合ですらこのような解があるとは。


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