『リ−グ戦』解答

◆茨城県 内桶 次郎さんからの解答。

 リーグ戦に参加したチームの数nが偶数か奇数かで場合分けをする。
また、以下のような記号を使用する。

・参加チームをA,B,C・・・、A1,A2,A3,・・・An等で表し、
W(A)でAが勝った相手チームの総数を表す。

・またいくつかのチームの集合をT1,T2等で表し、
|T1|でそのT1に属するチームの数を表すことにする。


《case1》

 参加チーム数nが偶数のとき、つまりn=2kのとき(k=1,2,3,4・・)、
参加チームをA1,A2,A3,・・・Anとする。

このときリーグ戦で行われる試合の総数は、
2k22k(2k−1)
――――――――
=k(2k−1)

各試合には、1チームの勝利チームが対応するので、
[試合の総数]=[W(Ai)の合計]となる。

つまり、 2k
Σ
i=1
W(Ai)=k(2k−1)・・(1)
が成立する。

 さて、ここで一般性を失うことなく優勝チームをA1としてよい。

優勝チームA1は他のチームと同じ勝利数かそれ以上の勝利数を獲得しているはずなので、任意のチームAiについて、

W(Ai)≦W(A1)が成立する。・・(2)(i=1,2,3・・、2k)

ここでW(A1)=a1とすると、

1≧kが成立する。・・(3)

◆(3)が成立する理由

仮にa1<kとすると、a1≦k−1となる。
∴W(Ai)≦W(A1)=a1≦k−1・・(4)となる。
(4)より
2k
Σ
i=1
W(Ai)≦2k
Σ
i=1
(k−1)=2k(k−1)

2k(k−1)<k(2k−1)なので、
2k
Σ
i=1
W(Ai)<k(2k−1)

となり、これは(1)に矛盾する。

∴(3)が成立する。

(この証明は本質的に「鳩の巣箱の原理」である。)

ところで(3)は優勝チームは必ずk試合以上勝っていることを示している。

 さて、ここで優勝チームA1が勝利した相手チームの集合を、T1とする。
またA1が負けた相手チームの集合を、T2とする。

(3)より|T1|=W(A1)=a1≧k・・(6)

|T2|=n−1−a1≦k−1・・(7)

明らかにB∈T1のときはA1>Bとなる。・・(ア)
 (>の定義1より)

またC∈T2のときもA1>Cとなる。・・(イ)
 (T2=φのときは(ア)のみが成立するのでT2≠φとしてよい)

◆(イ)が成立する理由

2の任意のチームをCとする。
するとC∈T2なのでCはA1には勝っている。・・(8)
しかしCはT1の中に少なくとも1チームは必ず負けた相手チームを持っている。・・(9)

なぜならば仮にCがT1の各チームの全てに勝利しているとすると・・(10)
(8),(10)よりW(C)≧1+|T1|=1+a1>a1
となり、この結果は(2)W(Ai)≦W(A1)に矛盾してしまうからです。

よって(9)が成立することになります。
そこでCが負けたT1のチームをBとすると、
B>C・・(11)が成立することになります。

またこのBはB∈T1なので(A1に負けているので)

1>B・・(12)

そこで(11),(12)からA1>Cが成立する。

(イ)が証明できました。

(ア)、(イ)より優勝チームA1についてはA1以外の任意のチームBについて、
1>Bが成立することが証明できました。


【蛇足1】

 A>Bであることを点Bから点Aに向かう矢線 B→A で表すことにすると、以上の関係は次の図のように図式化できます。

図n=6のときの例です。


この図の中ではA1,A2,A6が3勝2敗で3チームが優勝しています。
3,A4,A5が2勝3敗です。

また試合総数は
626・5
―――――――
2・1
=15試合
なので、矢線の数も15本あることになります。


《case2》

参加チーム数nが奇数のとき、つまりn=2k+1のとき(k=1,2,3,・・)、
参加チームをA1,A2,A3,・・・Anとする。

このときリーグ戦で行われる試合の総数は、
2k+12(2k+1)2k
――――――――
=k(2k+1)

[W(Ai)の総和]=[試合の総数]となるので、

2k+1
Σ
i=1
W(Ai)=k(2k+1)・・(1)
が成立する。

 さて、ここで一般性を失うことなく優勝チームをA1としてよい。

このA1については任意のチームAiについて、

W(Ai)≦W(A1)が成立する。・・(2)(i=1,2,3・・)

ここでW(A1)=a1とすると、

1≧k・・(3)が成立することになります。

◆(3)が成立する理由

仮にW(A1)=a1<kとすると、a1≦k−1となる。
∴任意のiについて

W(Ai)≦W(A1)=a1≦k−1・・(4)となる。

(4)より
2k+1
Σ
i=1
W(Ai)≦2k+1
Σ
i=1
(k−1)=(2k+1)(k−1)・・(5)

(2k+1)(k−1)<k(2k+1)なので、
2k+1
Σ
i=1
W(Ai)<k(2k+1)

となり、これは(1)に矛盾する。

∴(3)が成立する。

(この証明は本質的に「鳩の巣箱の原理」である。)

ところで(3)は優勝チームの勝った相手チーム数がkチーム以上であることを主張しています。

さて、ここで優勝チームA1が勝利した相手チームの集合を、T1とする。
またA1が負けた相手チームの集合を、T2とする。

(3)より|T1|=W(A1)=a1≧k・・(6)

|T2|=n−1−a1≦k・・(7)

明らかにB∈T1のときはA1>Bとなる。・・(ア)
 (>の定義1より)

またC∈T2のときもA1>Cとなる。・・(イ)
 (T2=φのときは(ア)のみが成立するのでT2≠φとしてよい)

◆(イ)が成立する理由

2の任意のチームをCとする。
するとC∈T2なのでCはA1に対しては勝っている。・・(8)
しかしCはT1の中に少なくとも1チームは必ず負けた相手チームを持っている。・・(9)

なぜならば仮にCがT1の各チームの全てに勝利しているとすると・・(10)
(8),(10)よりW(C)≧1+|T1|=1+a1>a1
となり、この結果は(2)W(Ai)≦W(A1)に矛盾してしまうからです。

よって(9)が成立することになります。
そこでCが負けたT1のチームをBとすると、
B>C・・(11)が成立することになります。

またこのBはB∈T1なのでA1>B・・(12)

そこで(11),(12)からA1>Cが成立する。

(ア)、(イ)より優勝チームA1についてはA1以外の任意のチームBについて、
1>Bが成立することが証明できました。

【蛇足2】

図 case1と同様にn=5のときの例を示しておきます。

この結果ではA1,A2,A3,A4,A5全てが2勝2敗で全チームが優勝チームとなっています。

試合総数は
525・4
―――――――
2・1
=10試合です。
【蛇足3】

 蛇足1,2のように図示したとき、

W(Ai)=点Aiを指示している矢印の本数

が成立しています。

このことからも
n
Σ
i=1
W(Ai)=n2
が成立することがわかります。

上記の問題は

◆W(Ai)が最大となる点A1に対しては、他の任意の点から2ステップ以内で矢印の方向に沿って移動できる

という性質と同値です。


◆神奈川県 飯田 孝久さんからの解答。

・優勝チームをAとする。
Aが勝利したチームBに対しては、仮定よりAはBより強いといえる。

今、Aが負けたチームをCとする。
Cが、Aが勝ったすべてのチームに勝ったとすると、Cの勝ち数がAの勝ち数を越えるため、Aが優勝したことに矛盾する。

したがって、CはAが勝ったチームのうち少なくとも一つのチーム(Dとする)には負けている。
その結果、AはDに勝ち、DがCに勝っているので、AはCより強いといえる。
よって、優勝チームは残りのすべてのチームより強い。

・付録

場合によっては、残りのすべてのチームが優勝チームより強いこともあります。

例を一つ挙げます。
優勝チームがある1チームだけに負け、そのチームが残りすべてのチームに負けた場合。
他にもあります。


【コメント】

 この証明はシンプルでよいですね。これで十分です。
付録の方は、普段よく使っているような内容のこの定義が、いかにいい加減であるかのよい例になりますね。


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