『フィボナッチ数列の性質 Part4』 解答


◆広島県 清川 育男 さんからの解答。

●準備

1)

F(m+n)=F(m-1)*F(n)+F(m)*F(n+1)

n=1のとき、
F(m+1)=F(m-1)*F(1)+F(m)*F(2)=F(m-1)+F(m)
成立。

n≦kのとき、
F(m+k)=F(m-1)*F(k)+F(m)*F(k+1)が成立すると仮定する。

F(m+k)+F(m+(k-1))
=F(m-1)*F(k)+F(m)*F(k+1)+F(m-1)*F(k-1)+F(m)*F(k)
=F(m-1)*(F(k)+F(k-1))+F(m)*(F(k+1)+F(k))
=F(m-1)*F(k+1)+F(m)*F(k+2)

n=k+1 でも成立。

2)

F(m)はF(mn)を割り切る。すべての自然数m,n

n=1のとき、F(m) | F(m)
成立。

n=kのとき、F(m) | F(mk)が成立すると仮定する。

F(m(k+1))=F(mk+m)=F(mk-1)*F(m)+F(mk)*F(m+1)

F(m) | F(mk) であるから、F(m) | F(m(k+1))

n=k+1 でも成立。

●問題の証明

[m,n]=k とする。
m=a1*k、n=a2*k
左辺=F(k)

準備 2)より、
F(m)=F(a1*k)、F(k) | F(m)
F(n)=F(a2*k)、F(k) | F(n)
[F(m),F(n)]=F(k)
右辺=F(k)

以上で証明された。


◆茨城県 小川 康幸 さんからの解答。

この問題を一般化して、以下で定義する数列Unに対して、定理を示すことにする。

a,bを互いに素な整数とする。

Unを、U0=0、U1=1、Un+1=a*Un-b*Un-1 (ただしn≧1)、
Vnを、V0=2、V1=a、Vn+1=a*Vn-b*Vn-1 (ただしn≧1)、

以後、nを0以上の整数とする。
UnとVnは、二次方程式、x2-a*x+b=0の二つの解をαとβとすると、

UnはUn= αnn
α-β
Vnは、Vnnnと書ける。

この事を使って、kとhを0≦h≦kなる自然数とすると、

式1
Uk+h=Uk*Vh-bh*Uk-h

式2
U2k=Uk*Vk

が成立する事が分かる。

定理1

kがmで割り切れるならば、UkもUmで割り切れる。

証明

仮定より、m=k*gと書ける。

gに関する数学的帰納法で証明する。

g=1のときは明らか、
g=2のときはU2k=Uk*Vkより、定理が成り立つ。

g=s、s-1のとき、正しいと仮定する。
(ただし、sは2以上の自然数)

U(s+1)*k=Us*k*Vk-bk*U(s-1)*k

仮定より、
Us*k=Uk*L、U(s-1)*k=Uk*Fと書ける。

U(s+1)*k=Uk*(L*Vk-bk*F)

よって、g=s+1のときも正しい。

証明終


自然数hが数列Un(nは1以上の自然数とする)のうちの、あるUnの値を割り切るとき、
hが割り切るUnのうち、nの値が最小となるものをとり、このときのnの値をρ(h)とする。

定理2

hを、bと互いに素な整数とする。
mがρ(h)で割り切れる。⇔Umが、Uρ(h)で割り切れる。

証明

⇒は定理1より明らか。
逆を示す。

mをρ(h)で割り、商をq、余りをrとする。

m=ρ(h)*q+r [0≦r<ρ(h)]

mがρ(h)で割り切れない、つまり、r>0と仮定すると。

qが奇数のとき
式1より、
Um=U{(q+1)/2}*ρ(h)*V{(q-1)/2}*ρ(h)+r-b{(qー1)/2}*ρ(h)+r*Uρ(h)-r

定理1より、b{(q-1)/2}*ρ(h)+r*Uρ(h)-rがhで割り切れる。
ところが、bはhと互いに素なので、Uρ(h)-rがhで割り切れる。
しかし、0<ρ(h)-r<ρ(h)だから、この事は、ρ(h)の最小性に反する。

qが偶数のとき、
式1より、
Um=U{q/2+1}*ρ(h)*V{q/2-1}*ρ(h)+r-b{q/2-1}*ρ(h)+r*U2*ρ(h)-r

定理1より、b(q/2-1)*ρ(h)+r*U2*ρ(h)-rが、hで割り切れる。

hはbと互いに素なので、U2*ρ(h)-rが、hで割り切れる。

再び式1より、U2*ρ(h)-r=Uρ(h)*Vρ(h)-r-bρ(h)-r*Ur

上と同様にして、Urがhで割り切れることがわかる。

ところが、0<r<ρ(h)だから、この事は、ρ(h)の最小性に反する。

qが奇数のときと偶数のとき、ともに矛盾していているので、
r=0、つまり、題意が言えた事になる。

証明終


定理3

自然数hが、数列Un(nを1以上の自然数とする)のうちの、
あるUnの値を割り切るとき、hとbは互いに素である。

証明

仮定より、数列Unのうちの、Utが、hで割り切れる。

hとbが共通の素因数pを持つと仮定する。

t≧2のとき、

Ut≡a*Ut-1-b*Ut-2≡a*Ut-1 (mod p)より、

0≡Ut≡a*Ut-1≡at-2≡・・・≡at-1*U1≡at-1 (mod p)

つまり、at-1がpで割り切れる。

pは素数より、aとbが公約数pを持つ事になって、aとbが互いに素である事に反する。

t=1のとき、
U1=aがhで割り切れるときは、明らかに、hとbは互いに素である。

いずれにしても、hとbは互いに素である。

証明終


問題の解答

まず、[m,n]はmとnを割り切るので、
定理1より、U[m,n]はUm、Unを割り切る。

よって、U[m,n]は、UmとUnの公約数である。
よって、UmとUnの最大公約数[Um,Un]の約数である。・・・○

また、h=[Um,Un]とおく。
hはUm、Unを割り切るので、定理3より、bとhは互いに素である。
よって、定理2より、ρ(h)はmとnを割り切る。

この事より、ρ(h)はmとnの公約数、
つまりρ(h)は[m,n]の約数であることがわかる。

ゆえに、定理1より、Uρ(h)はU[m,n]を割り切る。

明らかに、hはUρ(h)を割り切るから、hはU[m,n]を割り切る事が分かる・・・●

○と●より、[Um,Un]=U[m,n]

つまり、題意が示された事になる。

解答終

【コメント】

以前、フィボナッチ数列の問題の解答した事が思い出されます。


◆東京都 はにゃん さんからの解答。

F[1]=F[2]=1
F[n+2]=F[n+1]+F[n] (n=1,2,3,...)

の一般項は,

F[n]=An-Bn
A-B
---(*)である.
ただし,A=1+
2
, B=1-
2
である.

いま,

f(n)=c(xn-yn) (n=1,2,3,...) ---(**)

とすると,f(n)がf(m)で割りきれるのは,nがmで割りきれる時のみである.

実際,nがmで割りきれる時,
X=xm,Y=ymとおけば,f(n)=Xn/m-Yn/mは,X-Yで割りきれる.

一方,nがmで割りきれない時,X=xm,Y=ymとおけば,
f(n)=xn-[n/m]*X[n/m]-yn-[n/m]*Y[n/m]は,
X=Yとしたとき,f(n)=0とならないのでX-Yでは割り切れない.

(注:ここでX=Yとすると,x=yよりf(n)=0となって割り切れるのではないかと思うかもしれないが,
これはつまり非整数のn/mに対して,
f(n)=Xn/m-Yn/m=0になると言っていると同じである.
ここで「割り切れる」とはあくまで有理数の範囲内なので,このような考え方は適用できない.
実際にn=10,m=4などとして状況を確かめるとわかるかもしれない.)

これより,nがmで割りきれる時のみF[n]はF[m]で割り切れる.

よって明らかに,一般のn,mに対してF[n]とF[m]の両方に割り切れるF[l]は,lがnとmの公約数になるときのみである.

以上より [F[n],F[m]]=F[[m,n]] が成り立つ.


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