『最少時間の経路』 解答


◆東京都 はにゃん さんからの解答。

境界線からP,Qまでの距離をL1,L2
芝生と砂地でのそれぞれの速さをV1,V2
境界線に垂直方向と経路に対して,芝生と砂地それぞれのなす角をs1,s2とする.

すると,経路の移動時間T=T(s1,s2)は,
T(s1,s2) = L1
V1
* 1
cos(s1)
+ L2
V2
* 1
cos(s2)
---(1)

一方,直線PQと境界線のなす角は45度なので,

L1*tan(s1)+L2*tan(s2)=L1+L2 ---(2)

条件(2)のもとで,(1)が最小になるs1,s2の関係を求める.

Lagrangeの未定乗数法に従って,

Q(s1,s2,a)
=T(s1,s2)+a*(L1*tan(s1)+L2*tan(s2)-L1-L2)

とおいて,偏微分をとると,

∂Q
∂(s1)
=- L1
V1
* sin(s1)
cos(s1)2
+a*L1* 1
cos(s1)2
=0 ---(3)
∂Q
∂(s2)
=- L2
V2
* sin(s2)
cos(s2)2
+a*L2* 1
cos(s2)2
=0 ---(4)

(3)(4)より,
sin(s1)
V1
= sin(s2)
V2
(=a)
sin(s1)
sin(s2)
= V1
V2
---(5)

この関係を満たす時,経路の移動時間は最小になる.
(注:実際は停留値(極小)の条件にすぎないが,このときが最小である事は明らか.)

【問題1】

この問題では,
L2=m*L1,V2= 1
m
*V1である.
このとき,経路と境界線の交点をRとすると,
(5)を満たすとPR=QRとなる.
よって,この場合の点Rの作図法としては,例えばPQの垂直2等分線と境界線の交点をとってやればよい.

【問題2】

【コメント】

この問題は,物理で出てくる光の屈折の簡単な説明になっているので,その方針で解いてみましたが,全然出題者の方針に沿ったやり方になっていないので,解答としては適切ではありませんでした^^.

真空中(n=1)での光の速さcとすると,
屈折率nの媒質中での光の速さは c
n
となります.
光の経路は,各点における波面の重ね合わせから最短時間になるように進みます.
よって一様媒質中では真っ直ぐ進みますが,屈折率の異なった媒質どおしが重なったところでは 光はこの問題と同じ状況で屈折して進みます.
このときの関係は(5)より

sin(s1)
sin(s2)
= V1
V2
= n2
n1
(Snellの法則)
となります.


◆出題者のコメント。

解答ありがとうございます。
実に鮮やかで期待以上の解答です。
もちろん、正解です。

問題図が与えられているものと解釈すると、mは実数の範囲でも作図可能です。
境界直線も作図する必要があるのなら、mは実数の範囲では作図不可能です。
そこで、mを有理数にしました。

sin(s1)
sin(s2)
= V1
V2
=m

上式の証明は他にもいくつかあると思います。

おっしゃる通り、最少時間の経路なら「光の屈折」と同じ道筋になります。
「光は所要時間が最少の道筋を採る」(フェルマーの原理)


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