◆Dr.Berserker さんからの解答。
【問題1】
問題1はこれをそのまま証明しようとすると、幾つも場合分けをして、可能性を潰していかなければなりません。
というわけで、問題の『対偶』を取らせて頂きます。
『奇数の完全数であれば、その数は2以外の素数Pと奇数の平方数Sとの積PSである。』
ある奇数Nを完全数であるということにする。
N=m1n1*m2n2*…..mini
ただし、Nは2以外の素数miとその指数niを用いてあらわされる。
このとき、約数の合計Mは、以下のように表される。
M=(n1+1)(n2+1)…..(ni+1)-1
Nが奇数であるので、その約数も奇数である。
したがって、Mが偶数であれば、約数の総和も奇数になる。
さて、約数の総和は以下のように表される。
L=(m1n1+m1n1-1+…..+m1+1)(m2n2+m2n2-1+…..+m2+1)(…..)(mini+mini-1+…..+mi+1)
各多項式は等比数列の和であるので、Nが完全数であれば、
L= | m1n1+1-1 m1-1 | ・ | m2n2+1-1 m2-1 | ・ | … | ・ | mini+1-1 mi-1 |
=2N |
となるはずである。
L=2Nであることから、2を一つだけ因数に持つ多項式が一つだけ必ず存在する。
これを満たす多項式は(mi+1)であり且つ、mi=4n+1の時だけである。
ただし、nは任意の正の整数とする。
(証明)
{(4n+1)+1}/2=2n+1となり、必ず奇数となる。
mi=a*n+1とするとき、aが4の倍数であれば同意、それ以外であれば、必ずしも成り立たない。
さらに、他の多項式項は、その和が奇数でなければならないので、niは偶数とならなければならない。
したがって、niが偶数となる部分をS、mi=4n+1のみが寄与する部分をPとすれば、与えられた命題と一致した表記となる。
これは、Lを展開すると、項数が偶数になる事と矛盾しない。
命題の対偶が真であるので、命題も正しい。
QED
【問題2】
上問題より、
2PS= | m1n1+1-1 m1-1 | ・ | m2n2+1-1 m2-1 | ・ | … | ・ | mini+1-1 mi-1 |
・(P+1) |
であり、 | P+1 2 | はPの約数にはなりえない。 |
QED
【ヒント問題1】
mが奇数の時、問題1より自明である。
mが偶数の時、その約数について奇数が奇数個なければ、その約数の和は偶数になりえない。
【ヒント問題2】
mが奇数の時、問題1より明らかである。
mが偶数の時、
m=2k*m1n1*m2n2*…..miniとすると、約数の和は
L=(2k+1-1) | m1n1+1-1 m1-1 | ・ | m2n2+1-1 m2-1 | ・ | … | ・ | mini+1-1 mi-1 |
=2m |
であり、mが完全数であるためには、ある任意のlについて、nlが奇数になる多項式項を必ず含まなければならない。
したがって、mが平方数になることはない。
◆出題者のコメント
解答ありがとうございます。
分かり易い完璧な証明だと思います。
示されたように、数の偶奇だけで証明可能です。
興味がある人のために、mが奇数の完全数であるときの必要条件を正確に表現すると以下になります。
(本当はもっと判明しているのかも知れませんが、現時点での私なりの到達点です。)
・ m=pqr2
・ pは(p−1)が4の倍数である素数。
・ qは(q−1)が4の倍数である自然数。
・ rはpを約数に持たない正奇数であり、r2 は | p+1 2 | の倍数。 |
上の条件より、q は奇数ですから q−1 は偶数です。
故に、m=pqr2=p(pq-1r2)=ps
(ただし、sは奇数の平方数)
と、問題を単純化させて出題しました。
以下、証明です。
【 証明 】
mの約数(m自身も含む)の合計をT(m)とする。
mを素因数分解すると、
m=p1ap2bp3c‥。
∴ T(m)=(1+p1+p12+‥+p1a)(1+p2+p22+‥+p2b)(1+p3+p32+‥+p3c)‥ところで、mが完全数なら、T(m)=2m。
よって、
2m=(1+p1+p12+‥+p1a)(1+p2+p22+‥+p2b)(1+p3+p32+‥+p3c)‥ (1)
【ヒント問題1】
mの素因数(p1,p2,p3,‥)がすべて偶数なら、(1)式右辺のどの括弧内の合計も奇数になる。
すると、(1)式の左辺は偶数なのに右辺は奇数となり、明らかに矛盾する。
それ故、素因数がすべて偶数なら完全数ではない。
ところで、素因数がすべて偶数であることと、約数に1以外の奇数が存在しないこととは同値である。
よって、完全数なら1以外の奇数の約数が必ず存在する。
【ヒント問題2】
mが平方数なら、a,b,c,‥はすべて偶数である。
ところが、a,b,c,‥がすべて偶数なら、(1)式右辺のどの括弧内においても項数が奇数個となり合計が奇数になる。
すると、(1)式の左辺は偶数なのに右辺は奇数となり、明らかに矛盾する。
よって、完全数なら平方数ではない。
【前述した奇数の完全数の4つ必要条件の証明】
【ヒント問題2】より、a,b,c,‥の内の少なくとも1つは奇数でなければならない。
ところで、mは奇数なのでmの素因数(p1,p2,p3,‥)はすべて奇数である。
すると、(1)式右辺の各括弧内のどの項の値も奇数である。
それ故、a,b,c,‥の内の2つ以上が奇数なら、(1)式右辺の2つ以上の括弧内で項数が偶数個となり合計が偶数になる。
すると、少なくとも2mは4(=22)で割り切れなければならず、仮定よりmは奇数なので明らかに矛盾する。
以上より、a,b,c,‥の内の1つが奇数で、他はすべて偶数でなければならない。
そこで、指数が唯一奇数である素因数をp,その指数qとし、rをpを約数に持たない正奇数とすると、
● m=pqr2。
また、nを自然数,n'を奇数の自然数とすると、
1+p+p2+‥+p2n-1=(1+p)(1+p2+p4+‥+p2(n-1))
∴ 2m=n'(p+1)(1+p2+p4+‥+p2(n-1)) ・・・(2)
明らかにpは奇数なので(p+1)は当然偶数である。
(p+1)が4の倍数なら、(2)式右辺は4の倍数となる。
ところが、仮定より左辺のmは奇数なので明らかに矛盾する。
よって、(p+1)は4の倍数でない偶数である。
∴ (p+1)=2+4k
(ただし、kは非負整数)
∴ p=4k+1
∴ p≡4k+1≡1 (mod 4)。
∴ p−1≡4k≡0 (mod 4)。
● よって、pは(p−1)が4の倍数である素数。
また、(p+1)が偶数なので、
(1+p2+p4+‥+p2(n-1))が偶数でも、(2)式右辺は4の倍数となる。
仮定より左辺のmは奇数なので、このときも同様に矛盾する。
故に、(1+p2+p4+‥+p2(n-1))は奇数でなければならない。
よって、(1+p2+p4+‥+p2(n-1))の項数は奇数である。
∴ n−1=2k
(ただし、kは非負整数)
∴ q=2n−1=2(2k+1)ー1=4k+1
∴ q≡4k+1≡1 (mod 4)。
∴ q−1≡4k≡0 (mod 4)
● よって、qは(q−1)が4の倍数である自然数。
ところで、(2)式に m=pqr2 を代入すると、
2pqr2=n'(p+1)(1+p2+p4+‥+p2(n-1))
∴ | 2pqr2 p+1 | =n'(1+p2+p4+‥+p2(n-1)) |
明らかに、(p+1)とpは互いに素、
故に(p+1)とpq も互いに素。
すると、2r2 が(p+1)の倍数。
● よって、rはpを約数に持たない正奇数であり、r2 は | p+1 2 | の倍数。 |
証明終わり。