『f(X2) = f(X)f(-X)』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答。

【問題1】

[-x | 1-x ]

【問題2】

[1+x+x2]

【問題3】

[1+x+x2+x3+x4 ]

【問題4】

[1+x3+x6  | 1+x+x2+x3+x4+x5+x6 ]

【問題5】

[1-x+x3-x4+x5-x7+x8]

info. 1-x+x3-x4+x5-x7+x8=0 の解は 絶対値1で偏角が下記のもの

±
15
±
15
±
15
± 16π
15

【発展問題】

完全解答ではありません。

<十分条件>

以下のように因数分解できること。
ここでP,Qi,Ri(i=1〜n)は整数である。

f(x)=(-x)PΠ(1-x2Qi+1)Ri

∵補題1を使い、各々代入すれば良い。

f(x)=(1-x3*3*5)(1-x3)(1-x5*3)-1(1-x3*3)-1
 =1-x3+x9-x12+x15-x21+x24(既約)

<必要条件>

有理係数多項式f(x)が (*) f(x2)=f(x)f(-x)を満足するには

その因数が (-x)ないし(1-x)ないし次の性質をもつモニック多項式g(x)であること。

g(x)は偶数次数(2n次)のモニック多項式で、
根がexp(± 2kπiP
2Q+1
) k=1,2…nである。

ここでP,Qは整数で 2n+1=1 or -1 mod (2Q+1)である。


Q=7 P=1 n=4 : w=exp( 2πi
15
) とするとき

g(x)=(x-w)(x- 1
w
)( x-w2 )(x-1
w2
)(x- w4 )(x-1
w4
)(x- w8)(x-1
w8
)
 =1-x+x3-x4+x5-x7+x8

十分でない反例
Q=8 P=1 n=4 : w=exp( 2πi
17
) とするとき
g(x)=(x-w)(x- 1
w
)( x-w2 )(x-1
w2
)(x- w4 )(x-1
w4
)(x- w8)(x-1
w8
)

は(*)を満たすが係数が有理数ではなく、無理係数多項式である。

ただし P=3の系列と掛け合わせたものは 
g(x)= 1+x+x2+…+x15+x16 となり、(*)を満たす有理係数多項式である。

∵補題5より因数は(-x)ないし(1-x)ないし補題5の条件を満たすg(x)でなければならない。

補題6、7よりg(x)=0の根は原始元 w= exp( 2πip
m
) p,m:整数を用いて
w±1 、w±2 、w±4 、w±2のn乗でなければならず、
かつw±1=w±2のn+1乗

つまり 2n+1=1 or -1 mod m でなければならない。

また 2n+1=±1 mod m であるためには mは奇数でなければならない。

以上


◆補題

【補題1】

g(x),h(x)が(*)を満足するとき g*h(x),g/h(x)も(*)を満足する。

∵代入すれば明らか。

【補題2】

(1-x) および -xは(*)を満足する。

∵代入すればよい。

【補題3】

(*)を満たすfは f(0)=0 または1である。

∵ x=0を代入すると f(0)=f(0)*f(0) より f(0)=0 or 1

【補題4】

(*)を満たすfは f(1)=0 または f(-1)=1である。

∵ x=1を代入すると f(1)=f(1)*f(-1) より f(-1)=1 or f(1)=0

【補題5】

(*)を満たすfは (*)を満たすgを用いて次のように一意に因数分解できる。
ただし g(0)=1 , g(1)≠0 i.e. g(-1)=1

f(x)=g(x)*(-x)p(1-x)q

∵f(0)=0ないしf(1)=0であるとf(x)は -xないし1-xを因数にもつ。
従って、fは多項式g(x)を用いて g(x)*(-x)p(1-x)q g(0)≠0 g(1)≠0 に一意に表せる。

補題1と2よりg(x)は(*)を満たす。
g(0)≠0だから補題3よりg(0)=1,

g(1)≠0だから補題4よりg(-1)=1

【補題6】

(*)を満たすg(x) g(0)=1, g(1)≠0, g(-1)=1 に対して

g(x)=0を考えるとき、

その根wは w=exp(α×πi)≠1 α:整数でない有理数 である。

∵ g(0)=1 だから w≠0 である。

g(w2)=g(w)*g(-w) = 0 であるから w2もまた根である。

従って w w2 w4 w8 w16.....wも根である。
しかし、gは多項式であるので根の数は有限でなければならない。

従って w≠0であるから|w|=1でなければならず、かつ偏角もπの有理数倍でなければならない。

無理数α倍では

απ2n=απ2mod 2π
すなわち α2n-1=α2m-1+K K:整数

が成立すると
α=K/(2n-1−2m-1)≡有理数 で矛盾し根は無限個となる。

またg(1)≠0, g(-1)=1 であるから w≠1 w≠-1 でありαは整数ではない。

【補題7】

補題5のg(x)は偶数次数(2n)の多項式で次の式で表せる。

g(x)=x*H(t)  t=(x+ 1
x
)

H:{n次のモニック多項式(n次の係数は1、他は有理数), H(-2)=(-1)n

∵fの係数は有理数であり、-x 1-x の係数も有理数である。
従ってgの係数は有理数⊂実数である。
実数係数の多項式=0の根wが実数でないとき,wの共役数も根である。

補題6よりg(x)=0の解は純実数ではなく、|w|=1である。
よって、wの共役= 1
w
も根である。

よってg(x)は (1+ax+x2) |a|<2  のパターンの2次式の積に因数分解できる。

(1+ax+x2)= x(x+ 1
x
+a)=x(t+a)であるから即ち

g(x)
= xn *(t+a1)(t+a2)…(t+an)
=xn *( t n+bn-1 t n-1+bn-2 t n-2…+b0 )

である。

x=-1を代入すると t=-2,g(-1)=1=(-1)nH(-2)

【補題8】

g(x2)=x2n H(t2-2)


(1+ax2+x4)
=x2 ( 1
x2
+a+x2)
=x2 ((x+ 1
x
) 2 -2+a)
=x2(t2-2+a)

【補題9】

以上よりgの必要条件は、次の関係を満たすn次モニック有理数係数多項式の必要条件と等価である。
n:自然数。

H(t2-2)=(-1)nH(t)H(-t)

t=2を代入すると H(2)=g(1)≠0 より H(-2)=(-1)n は導かれる。

t=0 を代入するとH(-2)=(-1)n=(-1)nH(0)2より
H(0)=±1である。

【感想】

<十分条件>は実際は必要十分条件のようですね。
しかし、「十分でない反例」の類が必ず反例になるという一般的証明ができませんでした。

補題9と有限体を使って12次ぐらいまで個別には証明できるのですが。

円分多項式とか拡大ガロア体GF(2m)を勉強すると答えが出てきそうな基本的な問題に思えますが,自力では解けませんでした。
勉強したいなと思います。
良い本があれば御教示ください。


◆東京都 建築家 さんからの解答。

(青木注:ブラウザによってはきちんと見えないかもしれないのでがつけてあります。

【発展問題】

与式をみたす既約でない多項式はそれをみたす更に次数の低い既約な多公式の積であらわされるので
f(x)=-x,-x+1以外の既約な多項式についてのみ考えます。

その時   f(0)=1、f(-1)=1

まず結論から述べるとnが奇数となるn次円分多項式

f(x)=Π(x-ζi)         ・・・・・・・(☆)
(i,n)=1

が必要十分である。
ただしΠはnとiが互いに素であるものをわたる。

ただし次数についてはオイラー関数φを使って
deg(f(x))=φ(n)

まず確認のため十分性の証明を

f(x2)=Π(x2i)
f(x)f(-x)=Π(x-ζi)(-x-ζi)=Π(x22i)=Π(x2j)

∴f(x2)=f(x)f(-x)

【証明】

代数学の基本定理より
f(x)はr次式の時その根の集合G={αi∈C|f(αi)=0、1≦i≦r}をして

f(x)=Π(αi-x)
αi∈G

と一意に分解できる。これより

f(x2)=Π(αi-x2) 
f(x)f(-x)=Π(αi-x)(αi+x)=Π(αi2-x2)

一方 f(x2)=f(x)f(-x)なので
Π(αi-x2)=Π(αi2-x2)

つまり αi2∈Gとなるので

σ:αi --→ αi2

となるGからGへの自己同型写像がある。
このσはr次対称群に含まれる(σ∈Sr)ので
σm(αi)=αi  となるようなmが存在して
αi2m=αi
(注:αi^(2^m)=αiのことです)

∴ αi2m-1=1
(注:αi^(2^m-1)=1のことです)

そこで1の(2m-1)乗根の集合
G*={ζi∈C|ζi2m-1-1=0、1≦i≦2m-1}とすると
(注:ζi^(2^m-1)-1=0のことです)

G∈G*

つまりGは  x2m-1−1=0 をみたすことになるのだが
(注:x^(2^m-1)−1=0のことです)

オイラーの定理を用いれば全ての奇数次の円分多項式に対してそれを因数に含むようなmの式が存在する。

( φ(n≠偶数)=m とすれば 
2m=2φ(n)≡1 (mod n) ⇒ (xn-1)|(x2m-1−1) )
(注:x^(2^m-1)−1のことです)

果たしてそのようなG∈G*を根に持つような既約な多項式は(☆)のような円分多項式のみしかありえないので始めに述べた結論が正しい事が言えた。■


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