『凸図形の面積、周の二等分』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答

【問題1】

任意の自然数nに対し、n=L(T)となるようなTは存在する。

<作成例>

n=1、2の場合は後半証明中の補題n=1、2参照。

n≧3の奇数の場合は下図に示す部品1をn枚、点Oの回りに置けばよい。

n≧4の偶数の場合は下図に示す部品1(ただし図中n=nー1)をn−2枚、
部品2(ただし図中n=nー1)を1枚、点Oの回りに置けばよい。

【問題2】

L(T)本の線分の長さが全て異なる場合でも、上の命題は正しいと言える。

<作成例>

n=1、2の場合は後半証明中の補題n=1、2参照。
元々長さは異なっている。

n≧3の奇数の場合は下図に示す部品3(p)をn枚、点Oの回りに置き、p値が全て異なるようにすればよい。

n≧4の偶数の場合は下図に示す部品3(p)(ただし図中n=nー1)をn−2枚、
部品2(ただし図中n=nー1)を1枚、点Oの回りに置き、p値が全て異なるようにすればよい。
万一、部品2によりできる特殊な分割線(2本)の長さと一致した場合は少しずらせばよい。







【問題3】

L(T)本の線分の長さの最大値をM、最小値をmとするとき、
Mm≧Sは必ずしも成立しない。
ただし、Sは図形Tの面積である。

<反例>

<<証明>>



【補題1】

一般のTの異なる平行な2辺上に各端点を持つBkの数は0か1か∞である。
∵省略 図だけ示す。

【補題2】

Tの異なる(平行でない)2辺上に端点を持つBkの数は0か1か2本である。

注記)1本の場合は、2本が重なった重根の場合一方が範囲外の場合がある。
0本の場合は、解が無い場合と全てが範囲外の場合がある。

∵ 2辺の延長の交点をPとし、Pから端点までをそれぞれx、yとする。
周を2等分する関係の条件はx+y=V:定数で表わせる。
一方面積を2等分する関係の条件はxy=凵F定数で表わせる。
よってこれは2次方程式であり、根は0か1か2個である。
そして辺の存在範囲により、これらより1本ないし2本が欠ける場合がある。

【補題3】

 L(T)は有限個である。
∵定義1と補題2より成立する。

【補題4】

A(G)+A(G+U)=0
∵Θ(G)=−Θ(G+U)であるから A'(G+U)はGの左側面積である。
よってA(G)+A'(G)=2Dである。 

【補題5】

L(T)≧1
∵補題3より A(∃G)≠0である。
従ってA(∃G)>0であれば補題4より A(∃G+U)<0であり、A(G)の連続性から少なくとも一箇所A(G)=0とするGが存在する。

逆も同じ。

【補題6】

L(T)は奇数のほうが作りやすい。
∵L(T)は ∃G≦G<∃G+U におけるA(G)=0とするG(解)の数である。
補題5よりA(G)がA(G)=0を交差して貫通する場合はL(T)は奇数である。
従って、L(T)が偶数になるためにはA(G)=0においてA(G)がA=0にちょうど接する(重根)か、V字型に折り返す必要がある。
従って、適用にTを作ると大抵L(T)は奇数である。
 
【補題7】

下図の状態においてA(G)がBを境にV字型に変化するのは 
{sin(a)>sin(b) かつ sin(a')>sin(b')} か 
{sin(a)<sin(b) かつ sin(a')<sin(b')} の場合である。


∵A(Gk)=0なので 
A(G)=A(G)−A(Gk)={[Gk][G+U]× [Gk+U]}[G]/2である。
|Bk|=1に規格化し、|[Gk][G]|=|[G+U] [Gk+U]|=x として計算すると、
 A(G(x))=x*(x*sin(a+b)+sin(b)-sin(a))/2 である 

従ってx=+0 において、A(G(x))の傾きは sin(b)-sin(a))/2である。
a'、b'の側も同様に sin(b')-sin(a'))/2 である。
 従ってこれらが同一符号であれば、
A(G)はGkにおいてA(Gk)=0でV字型に変化する。

【補題8】

補題7の図において a<b のとき A(G)は最大値をもつ。
つまり2辺の交点のある側の面積は最大値、無い側は最小値をもつようなGの2次関数である。
∵省略

【補題9】

下図において Bは直角でAM=CMである。
また∠MACは∠ACBよりかなり小さい正の角度であるとする。
このときAB上Aの近傍に次の条件を満足する点A'が無数に存在する。
面積ABCM = 面積A'BCM'
道程AMC  = 道程A'M'C
またAとA'が近ければMとM'も近い。



∵一般性を失わずAC=2とし、Oを原点、CをX軸方向として各点の座標を次とする。 
A:(−1、0)、C:(1,0)、M:(0、Y0)、
M':(xp,Y0+yp)、A':(−1+kp、-p
ここでは x ,y が未知数である。
また、p は微小量である。

面積ABCM = 面積A'BCM' より  
y=(kY0+xp+1)/(2−kp) が得られる。

これを 道程AMC=道程A'M'Cに代入すると2次方程式が得られる。
これをpの高次項を微小として解くと次が得られる。

x=±√{(1+Y0)(k(1−Y0)−2Y0)}/Y0+(k−Y0)p/2+O(p
y=(kY0+1)/2±√{(1+Y0)(k(1−Y0)−2Y0)}p/2Y0+O(p

∠MACは∠ACBに比べかなり小さいので、Y0はkに比べかなり小さく、
ルートの中身である(k(1−Y0)−2Y0)は正である。

よって、x 、y は実数である。
また、pは微小であるからM'はMの近傍でx方向にpのオーダー、yの方向にpのオーダーで離れている程度である。
また、0の近傍にpは無数に存在するのでA'も無数にとれる。

<注記>

この補題により部品3(p)の無限性が保証された。

【補題10】

下図において、A=図形G(L)KR(Q)Gの面積は、GがKまたはMで無い限り、
図形MLKRの面積=図形RQPKの面積Sより小さい。

 ただし条件があって、
(1)道程MLK=道程RQP
(2)面積MLKR=面積RQPK=S
(3)GはMLK上の点、GはRQP上の点であって、道程M(L)G=道程R(Q)G

ここで(L)(Q)は点L点Qを通過した場合。

(4)LとQの位置は 道程のほぼ中央である。
(5)HKとPRはZに対して傾きα>0でZを中心に対称である。
(6)KL,LMとKHの成す角φφ 、
PQ,QRとPRの成す角φφの絶対値は
αに比べかなり小さい値φmax≧0より小さい。



∵ 対称性から凾gKR=凾oKRであるので、
角φ1〜4=0 の場合は補題8により成立している。
角φとφは非常に小さい値なので、辺KLおよびその延長と辺PQおよびその延長を考えたとき、これらは平行でなくかつその交点は上方にある。

従って、補題2より面積が同一になるGのK以外の位置は1点のみで、点Hの近くである。
一方条件からLは道程の中ほどであるのでG=Lにおいて補題8よりはAはSより小さい。

 ただしGに対応するGがPQ上にある場合である。
対応するGuがQR上にある場合は、Mを起点にLM,QRの2辺で考えれば同様に G=L においてAはSより小さいといえる。
=Qの場合も同様であり、AはSより小さい。
 補題8より常にAはGの下に凸の2次関数であるから、M<G<K において A>Sである。

【補題n=1】

L(たてに長い2等辺三角形)=1
∵省略。下図参照

【補題n=2】

L(下図の形)=2
∵省略。下図参照。
|≠|


【補題n=奇数】

L(n個の部品1ないし部品3)=n
図はn=5の場合


対称性から少なくとも図示のn本が分割線になっていることは明らかである。
一方、部品1の作り方から、補題10の条件が、これら分割線の間で成立している。
従って、これらn本以外に分割線はない。なお、分割線の長さは全部同じである。

さてp=0として部品1を部品3に置き換えても、同じ状態である。
その状態からp値をばらばらに増加させると、各分割線は少しずつ長さが異なるようになる。
一方、部品3の作り方から、面積、周長に影響は出ないので、分割線であることに変わりは無い。
またpを微小に取ることで、補題9により補題10の条件が満足され、また凸図形であることも保証できる。
よって、長さの異なるn本の分割線が存在するといえる。


【補題n=偶数】

L(n−2個の部品1ないし部品3と部品2)=n
図はn=6の場合
L(T)=n−1の奇数の場合をベースに考えます。
 元々、部品2の周上にはQ0の辺りに一本の分割線があったわけです。
この部分を部品2に換えても、その他の部分には影響がありません。
従って、部品2の周上の内部を除く周上に端点をもつn−2本の分割線(紫と赤)は増減無く、そのままであることが分かります。
一方、赤の線のところでは、部品2に変えることにより、A(G)がV字型の変化をします。
なぜかというと、

π/2>∠a=π/2-α+ε−δ>∠b=π/2−α−ε−δ

であり、また部品3の作り方から 

∠a'=3π/2−α−ε−δ>∠b'>3π/2

です。

従って、補題7によりA(G)はV字型の変化をするといえるからです。
部品2の境界を除く周上に端点をもつ分割線は2本だけであることを証明する必要がありますが、これは,次の段落にあります。
以上より、n本の分割線が存在するTが存在することが証明できました。

この場合、部品2の境界を除く周上に端点をもつ分割線は2本()の長さは他と異なっていますが、
のこりn−2本()は全て同じ長さです。
これらは奇数の場合同様部品1を部品3に換えてpを調整することにより、全て下図のように長さを違えることが可能です。
なお、証明の容易さから、赤線に対応する部品は調整せず部品1のままとしてあり、V字型の変化は保証できます。



【部品2の周上に端点をもつ分割線の性質】

一般的に証明するのが難しいので、α、ε、δ、pの特別な関係の場合について数値的に証明する。
即ち ε=α/5 δ=ε/5  
H*p=(δ/5)
H=sin(2α)/2cos(α−ε)
とする。
また、下図のように点を定義する。
はP以外部品2の頂点である。
また、QはP以外部品1と部品2の頂点である。
はQから半周(D)回った点。
はPのそれである。

まず、図から凸図形であることは明らかであるが、一応確認しておこう。
下図は各部品の辺の偏角を数値計算した結果であり。単調に増加しており、凸図形であることが分かる。
なお、P側の平均はπ/2 Q側は3π/2を用いた。
αには殆ど影響されないことがわかる。



次に、分割線が間に2本であることを確認する。
A(Q)=0、A(Q)=0は明らかである。

下図はA(Q)、A(Q)、A(Q)、A(Q)を計算した結果である。

α⇒0でαのオーダーに収束している。

A(Q)のみが常に負で、他は常に正である。
対向する辺の成す角度の関係、及び補題8より、Q間でA(G)は上に凸である。

よって、Q間でA(G)=0になることはない。
一方、Q間およびQ間には各一本ずつA(G)=0となるものが存在する。

間、Q5Q6間もまた上に凸なのでA(G)=0となるものは存在しない。

よって、間に存在する分割線は常に2本である。



最後に、分割線の長さを調べる。
間の分割線の長さをMaxとして、
中間の2本(La,Lb)およびQ間の分割線の長さを計算すると下図である。

Maxとの差はα⇒0でαのオーダーに収束している。



図に示されるようにこれら3本の長さは全て異なりかつMaxより短い。



【PS】

ここに解答した方式そのものは比較的早く分かり、数値的に確認する中で、精々2次方程式で計算できることが分かりました。
しかし、いざ一般的に証明しようとすると、パラメータが多く、非常に長い式になり、途中で挫折し、結局、微少量級数展開と数値計算によってしまいました。
既に、結構長い証明になっています。
それでも、かなり省略して書いていますので説明不足の点が多々ありますが、これで解答と致します。

残された問題は、L(T)=偶数のときに全て同じ長さの分割線となるTがあるのかという点です。
n=2 の場合でも見つけられずにいます。


◆出題者のコメント

いつもながら、Y.M.Ojisanさんはすごいです。
私の疑問がひとつ解決してしまいました。

この問題、私がいつも疑問に思っている凸図形についてほんの一部を問題にしたものです。
ほかにも同じように凸図形を分割する線分だけで、多くの問題を作ることができます。
例えば、この問題と同じように、凸図形の面積と周の長さを二等分する線分を考えたとしてその線分が、無限個あるような図形について考えると

1.このような図形で線分の個数が可算無限個であるような図形は存在するでしょうか
2.このような図形でどの線分の長さも異なるような図形は存在するでしょうか

といった疑問があります。

どちらも、一見存在しないように思えますが、はたしてどうなのでしょうか。
前者に関しては某巨大匿名掲示板によると存在するようですが、後者に関してはわかりません。

などなど、さまざまな疑問がある凸図形なのですが今後も、今後もこれに関する問題をたくさん出していきたいと考えておりますので そのときはよろしくお願いします。


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからのコメント

可算無限個の場合、偶数奇数を考えなくて良いので、左右対称図形を使って色々できます。

下図は底辺(=分割線)長一定で、高さが無限に小さくなり、その和が収束するような無限直角三角形列を重ねてできる条件1.の図形の一つです。
底辺(青)=2 高さ(黒)=0.25*0.8 斜辺(赤) 直角(赤紫)

条件2の方は「高さ辺」をほんの少しだけ中央で凸に折り曲げ、部品3(p)のようなパンタグラフを作ればできると予想されます。
詳細検討はおまかせします。


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