『高校生からの挑戦状Part37』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答

【問題2】

答え
f(A)≧
2sin(π/2n)
 
n本の平面ベクトルをVk k=1〜n とします。
またその集合をAとします。

問題は 条件 Σ|V|=n の元 
f(A)=max(|Σv[v∈A]|)を評価することです。

AにベクトルVを追加し A^とします。
ただしVは Σv[v∈A^]=0 であるベクトルです。
さらに、A^のベクトルをVの偏角を0として
偏角(0≦arg(V)<2π) の順に並べ替えます。

これを改めてその順にVとします。
即ち arg(V)≦arg(V+1) k=0〜nです。

A^のベクトルをその番号順に連ねて描くと、
arg(V)≦arg(V+1) であるので凸多角形:R(A)が描かれます。

その凸多角形R(A)の任意の2点間は左回り右回りの二つの経路があるので、Vを用いずAの要素のみで構成できます。
また、f(A)の最長を与えるベクトルの和をSとするとき、Sを構成するベクトルのS方向成分は明らかに負ではありません。
従って、それらを偏角の順に並べればR(A)の一部となります。
つまり、f(A)=max(R(A))の頂点間距離)です。



ここで少し飛躍しますが、定巾図形(円やルーロ−の三角形)を考えます。
定巾図形では周長=π×巾の関係があります。従って
f(A)≧
π
程度ということが分かります。
特にnが奇数の素因数を持つときは
f(A)≧ 1
2sin(π/2n)
です。

下図はこの関係を n=10=5×2 の場合に与えるAであって、ルーロ−の五角形ベースに作成したのものです。
なおV=0です。

 
f(A)の最小を与えるAにおいては、V=0であるものがあることは明らかです。
もし、V≠0ならば、Vが0になるようにR(A)の内部に周長がnである凸多角形R'ができるので、最長対角線が長くなることはないからです。

下図にR'の作り方を示します。
ただし、n≧2で 始点をPとしPj=Pj-1+Vjとします。
とPn−1を結ぶ線分はR(A)の中あり、この上にVおよびVと同じ長さのベクトルを取ったとき、下左図のように届かない場合と、右図のように届く場合があります。

届かない場合は線分Pn−1上に新たにP=Pをとり、全体を縮小して周長nの凸多角形R'を作成できます。

一方届く場合は右図のようにR(A)内に新しくP=Pを取ることができ周長がnの凸多角形R'を作成できます。
これらR'の最長線分長がR(A)のそれを超える事はありません。


以上より下記の問題を考えればよいことが分かりました。
なお、n=1、2の場合も含めてよいですが、ここでは除外します。

【問題設定】

Aを周長nの凸n角形とし、A内の最長線分長をf(A)とするとき、f(A)の下限値をnで表わせ。
ただしn≧3とする。

【補題1】

A内の最長線分長f(A)を与える線分の両端はAの頂点である。
∵ 直線上の点への距離の性質から明らかです。
詳細略

【補題2】

Aがf(A)の下限値を与える図形であるとき、Aの任意の頂点からの最長線分長は
f(A)=下限値に全て等しい。

∵ 背理法で証明します。
一般性を失わずPを始点とする任意のベクトル長がf(A)より小さいとします。

の延長とPn−1の延長がAの外に作る領域凾ェ下左図のように存在していれば、Pからの距離がf(A)に近づくようにP'をとることが可能であり、このとき周長は増大します。
よって、全体に縮小して周長をnとし、これをA'としたとき、
f(A')<f(A)であり、下限値であることに矛盾します。

下右図のように領域凾ェ存在しない場合は、PとPは辺中間の点になります。
よって、補題1によりPまたはPを始点とする任意のベクトル長は始点が隣の頂点に一致しない限り、f(A)より小さいことが分かります。
そこで改めてこれらをPとして考えても良いわけです。
Aは凸図形であるので、これを繰り返したとしても何れどこかで領域凾ェ存在し、矛盾が生じます。




【補題3】

Aがf(A)の下限値を与える図形であるとき、
Aの頂点PとPおよびPとの距離がf(A)に等しければ、
Pとその間の頂点P[k=2〜m−1]との距離もf(A)に等しく、またP間とのみに限る。

∵ まずAの条件より、PとPの距離はf(A)以下であり、
∠PPP π
3
です。

またAは凸図形ですからPの存在範囲は,下図桃色半月形領域です。
∠PPP π
3
ですから 
とPとP間はf(A)より小さく、またPともf(A)より小さい。
補題2よりPとその他の頂点間で距離がf(A)であるものが存在しなければならず、その点は下図赤線の弦上にあります。

ところが、その点はPまたはPからf(A)より大きな距離の点となってしまいます。
よって、Pとその間の頂点P[k=2〜m−1]との距離がf(A)になるしかありません。

【補題4】

Aがf(A)の下限値を与える図形であり、
Aの頂点Pと頂点P[k=1〜m]との距離がf(A)に等しいとき、
は等間隔である。

∵Aの条件より、PとPの距離はf(A)以下であり、
∠PPP π
3
<πです。


からPまでの辺長の合計が等間隔のとき最大であることを示します。

これが示されれば、等間隔でないとき、等間隔に調整することによりAの周長が長くなり,その分Aの全体縮小が可能となり、f(A)が下限であることに矛盾するからです。
なお補題3によりPとのみの距離だけ考えれば良いことが保証されています。
 
Pを中心とし、PとPk+1の偏角差を 0<θ π
3
とするとき
辺長の合計= m−1
Σ
k=1
2sin( θk
)です。

ただし、Θ= m−1
Σ
k=1
θkです。 

0<θ <π において2sin( θ
)は上に凸です。

従ってその関数値の平均は平均の関数値より小さく、等号は引数が全て等しい場合です。即ち、
m−1
Σ
k=1
2sin( θk
)≦2(m−1)sin( Θ

m−1

が成立します。またm等号は k=1〜m-1に対して、
Θ

m−1
θkの場合です。




【補題5】

下記が成立する。
f(A)

2sin(π/2n)


π

∵ 補題3よりA全体の偏角差θの和Θallはπです。 
また補題4はθがπ以下としても成立する補題であるので、
もしθ π
であるような配置があれば、

周長はf(A)×2n×sin(π/2n)=n より 
f(A)

2sin(π/2n)
であり、これが最低値です。

【結果1】

n=p×2q  p:3以上の奇数 であるとき、
もしθ π
なる配置が存在し、f(A)の下限値は


2sin(π/2n)
である。

∵ルーロ−の正奇数多角形が存在するので、ルーロ−の正p角形を作図し、その頂点に全部でp個の頂点と 各辺中ほどに2q−1個づつ等間隔に頂点を配置することが可能です。

【結果2】

n=2のとき V1+V2=0 とした場合の f(A)=1が最小である。
∵省略

【結果3】

n=4のとき ルーロ−の3角形の3頂点と一辺の中央に配置したものがf(A)の最小を与える。
f(A)

2+1/cos(π/12)
=0.988378 (A)*2sin( π

2n
)=1.003062
∵省略



【結果4】

n=8のとき ルーロ−の3角形の3頂点と辺の中央2、2、1個配置する方法と、ルーロ−の非正5角形に頂点を下図のように配置し、f(A)を最小化してみました。
真のf(A)の下限値が証明されたわけではありません。
殆ど理想に近くはなっています。

ルーロ−の3角形ベースの場合は 
f(A)=2.56488 、f(A)*2sin(π/2n)=1.000766

ルーロ−の5角形ベースの場合は
f(A)=2.56316 、f(A)*2sin(π/2n)=1.000095



【結果5】

n=2のとき 
ルーロ−の3角形の3頂点と辺の中央部に最大限頂点を等分配した場合と、
結果4で得たルーロ−の非正5角形配分を更に2等分していった場合の計算結果を下表に示します。
nが大きくなると察しの通り、ルーロ−の3角形ベースの方が理想に近くはなっています。



【感想】

問題1の評定と、私の得た結果が違うので、私の問題の解釈ないし解答が違っているのかもしれませんが、面白い問題だと思いました。
の時の完全な解答が得られなかったので残念です。


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