◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答
【問題2】
答え
| f(A)≧ | 1
2sin(π/2n) |
問題は 条件 Σ|Vk|=n の元
f(A)=max(|Σv[v∈A]|)を評価することです。
AにベクトルV0を追加し A^とします。
ただしV0は Σv[v∈A^]=0 であるベクトルです。
さらに、A^のベクトルをV0の偏角を0として
偏角(0≦arg(Vk)<2π) の順に並べ替えます。
これを改めてその順にVkとします。
即ち arg(Vk)≦arg(Vk+1) k=0〜nです。
A^のベクトルをその番号順に連ねて描くと、
arg(Vk)≦arg(Vk+1) であるので凸多角形:R(A)が描かれます。
その凸多角形R(A)の任意の2点間は左回り右回りの二つの経路があるので、V0を用いずAの要素のみで構成できます。
また、f(A)の最長を与えるベクトルの和をSとするとき、Sを構成するベクトルのS方向成分は明らかに負ではありません。
従って、それらを偏角の順に並べればR(A)の一部となります。
つまり、f(A)=max(R(A))の頂点間距離)です。

ここで少し飛躍しますが、定巾図形(円やルーロ−の三角形)を考えます。
定巾図形では周長=π×巾の関係があります。従って
| f(A)≧ | n
π |
| f(A)≧ | 1
2sin(π/2n) |
下図はこの関係を n=10=5×2 の場合に与えるAであって、ルーロ−の五角形ベースに作成したのものです。
なおV0=0です。

f(A)の最小を与えるAにおいては、V0=0であるものがあることは明らかです。
もし、V0≠0ならば、V0が0になるようにR(A)の内部に周長がnである凸多角形R'ができるので、最長対角線が長くなることはないからです。
下図にR'の作り方を示します。
ただし、n≧2で 始点をP0としPj=Pj-1+Vjとします。
P1とPn−1を結ぶ線分はR(A)の中あり、この上にV1およびVnと同じ長さのベクトルを取ったとき、下左図のように届かない場合と、右図のように届く場合があります。
届かない場合は線分P1Pn−1上に新たにP0=Pnをとり、全体を縮小して周長nの凸多角形R'を作成できます。
一方届く場合は右図のようにR(A)内に新しくP0=Pnを取ることができ周長がnの凸多角形R'を作成できます。
これらR'の最長線分長がR(A)のそれを超える事はありません。

以上より下記の問題を考えればよいことが分かりました。
なお、n=1、2の場合も含めてよいですが、ここでは除外します。
【問題設定】
Aを周長nの凸n角形とし、A内の最長線分長をf(A)とするとき、f(A)の下限値をnで表わせ。
ただしn≧3とする。
【補題1】
A内の最長線分長f(A)を与える線分の両端はAの頂点である。
∵ 直線上の点への距離の性質から明らかです。
詳細略
【補題2】
Aがf(A)の下限値を与える図形であるとき、Aの任意の頂点からの最長線分長は
f(A)=下限値に全て等しい。
∵ 背理法で証明します。
一般性を失わずP1を始点とする任意のベクトル長がf(A)より小さいとします。
P3P2の延長とPn−1Pnの延長がAの外に作る領域凾ェ下左図のように存在していれば、P1からの距離がf(A)に近づくようにP1'をとることが可能であり、このとき周長は増大します。
よって、全体に縮小して周長をnとし、これをA'としたとき、
f(A')<f(A)であり、下限値であることに矛盾します。
下右図のように領域凾ェ存在しない場合は、P2とPnは辺中間の点になります。
よって、補題1によりP2またはPnを始点とする任意のベクトル長は始点が隣の頂点に一致しない限り、f(A)より小さいことが分かります。
そこで改めてこれらをP1として考えても良いわけです。
Aは凸図形であるので、これを繰り返したとしても何れどこかで領域凾ェ存在し、矛盾が生じます。

【補題3】
Aがf(A)の下限値を与える図形であるとき、
Aの頂点PとP1およびPmとの距離がf(A)に等しければ、
Pとその間の頂点Pk[k=2〜m−1]との距離もf(A)に等しく、またP間とのみに限る。
∵ まずAの条件より、P1とPmの距離はf(A)以下であり、
| ∠P1PPm≦ | π
3 | です。 |
またAは凸図形ですからPkの存在範囲は,下図桃色半月形領域です。
| ∠P1PPm≦ | π
3 | ですから |

【補題4】
Aがf(A)の下限値を与える図形であり、
Aの頂点Pと頂点Pk[k=1〜m]との距離がf(A)に等しいとき、
Pkは等間隔である。
∵Aの条件より、P1とPmの距離はf(A)以下であり、
| ∠P1PPm≦ | π
3 | <πです。 |
| Pを中心とし、PkとPk+1の偏角差を 0<θk≦ | π
3 | とするとき |
| 辺長の合計= | m−1 Σ k=1 |
2sin( | θk 2 |
)です。 |
| ただし、Θ= | m−1 Σ k=1 |
θkです。 |
| 0<θ | k | <π において2sin( | θk 2 |
)は上に凸です。 |
| m−1 Σ k=1 |
2sin( | θk 2 |
)≦2(m−1)sin( | Θ m−1 | ) |
| Θ m−1 |
= | θk | の場合です。 |

下記が成立する。
| f(A) | ≧ | 1 2sin(π/2n) |
> | n π |
∵ 補題3よりA全体の偏角差θkの和Θallはπです。
また補題4はθkがπ以下としても成立する補題であるので、
| もしθk= | π
n | であるような配置があれば、 |
| f(A) | = | 1 2sin(π/2n) |
n=p×2q p:3以上の奇数 であるとき、
| もしθk= | π
n | なる配置が存在し、f(A)の下限値は |
| 1 2sin(π/2n) | である。 |
∵ルーロ−の正奇数多角形が存在するので、ルーロ−の正p角形を作図し、その頂点に全部でp個の頂点と 各辺中ほどに2q−1個づつ等間隔に頂点を配置することが可能です。
【結果2】
n=2のとき V1+V2=0 とした場合の f(A)=1が最小である。
∵省略
【結果3】
n=4のとき ルーロ−の3角形の3頂点と一辺の中央に配置したものがf(A)の最小を与える。
| f(A) | = | 3 2+1/cos(π/12) |
=0.988378 | 、 | (A)*2sin( | π 2n |
)=1.003062 |

【結果4】
n=8のとき ルーロ−の3角形の3頂点と辺の中央2、2、1個配置する方法と、ルーロ−の非正5角形に頂点を下図のように配置し、f(A)を最小化してみました。
真のf(A)の下限値が証明されたわけではありません。
殆ど理想に近くはなっています。
ルーロ−の3角形ベースの場合は
f(A)=2.56488 、f(A)*2sin(π/2n)=1.000766
ルーロ−の5角形ベースの場合は
f(A)=2.56316 、f(A)*2sin(π/2n)=1.000095

【結果5】
n=2qのとき
ルーロ−の3角形の3頂点と辺の中央部に最大限頂点を等分配した場合と、
結果4で得たルーロ−の非正5角形配分を更に2等分していった場合の計算結果を下表に示します。
nが大きくなると察しの通り、ルーロ−の3角形ベースの方が理想に近くはなっています。

【感想】
問題1の評定と、私の得た結果が違うので、私の問題の解釈ないし解答が違っているのかもしれませんが、面白い問題だと思いました。
2qの時の完全な解答が得られなかったので残念です。