『Arctangent』解答


◆滋賀県 一平ちゃん さんからの解答。

【問題1】

arctan( 1
x
)+arctan( 1
y
)=arctan(1
z
) …*

*において両辺の正接をとれば、加法定理を適用して、

x+y
xy−1
1
 …#

を得る。

従って

z= xy−1
x+y

x−z= 2+1
x+y

y−z= 2+1
x+y

これらをそれぞれu,vとおけば、
2+1=uv が成立する。

証明を逆にたどることによって逆も成立する。


◆富山県 N.C さんからのコメント。

【問題2】

解答ではないのですが,...

(x+y)は2zの倍数になることが簡単に証明できます。
そこで、zが4000以下の場合を全て求め、
x+y
2z
の値によって分類してみました。

規則がありそうで判らず、弱ります。

x+y
2z
=−1のとき
(x,y,z)=( 1, -7, 3)
(x,y,z)=( 7, -41, 17)
(x,y,z)=( 41, -239, 99)
(x,y,z)=( 239,-1393, 577)
(x,y,z)=(1393,-8119,3363)

x+y
2z
=2のとき
(2=12+1?)

(x,y,z)=( 1, 7, 2)
(x,y,z)=( 7, 41, 12)
(x,y,z)=( 41, 239, 70)
(x,y,z)=( 239,1393, 408)
(x,y,z)=(1393,8119,2378)

x+y
2z
=5のとき
(5=22+1?)

(x,y,z)=( 2, 38, 4)
(x,y,z)=( 38, 682, 72)
(x,y,z)=(682,12238,1292)

x+y
2z
=10のとき
(10=32+1?)

(x,y,z)=( 3, 117, 6)
(x,y,z)=(117,4443,228)

x+y
2z
=17のとき
(17=42+1?)

(x,y,z)=( 4, 268, 8)
(x,y,z)=(268,17684,528)

以下略。

参考までに、zが4000以下の場合を求める十進BASIC用のプログラム。

OPTION ARITHMETIC RATIONAL 

function add(x,y)
   let add=(x*y-1)/(x+y)
end function

for z=1 to 4000
   let z2=add(z,z)
   for x=1 to z-1
      let y=add(z2,-x)
      if 1=DENOM(y) then
         print (x+y)/(2*z),"(x,y,z)=(";x;",";y;",";z;")"
      end if
   next  x
next     z 

END

◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答

【準備】

cos(nθ)+i*sin(nθ)=(cosθ+i*sinθ)n -----(1)

より tanθ=1/Zとおけば (ただし Z≠0)

tan(2θ)=2Z/(Z2-1) -----(2)

tan(3θ)=(3Z2-1)/(Z3-3Z) -----(3)

tan(4θ)=(4Z3-4Z)/(Z4-6Z2+1) -----(4)

また、公式
tan(a+b) = (tan(a)+tan(b))/(1-tan(a)*tan(b)) -----(5)

問題の式の左辺はtanをとると、(5)により

左辺=(1/x+1/y)/(1-1/xy)=(x+y)/(xy-1) ----(6)
ただし、題意より xy≠0

また、arctan は奇関数であるので、
Z>0 としても問題として一般性は失わない。

【問題2】

Arctan(1/x)+Arctan(1/y)=2Arctan(1/z)   -----(2-1)

Z=1のとき右辺は π/2であるが 左辺の最大は
x=y=1のときπ/2であって、
これは x<|y| 条件に合わない。

よって、2≦Z としてよい。

一方 0<x<|y|の条件であるが、

@ 0<x<yの場合 x≠yの条件に置きかえてもx yは対称なので一般性を失わない。

また z>0なのでx>0の条件もでる。

A 0<x<-yの場合は z>0の条件から出てくるので必要ない。

すなわち、付帯条件を
2≦Z および x≠y である整数x、y、zとしても等価である。

(2)と(6)を(2-1)に適用すると、

(x+y)/(xy-1)=2Z/(Z2-1)

2≦Z であるので (Z2-1)≠0

また、xy=1 なる整数y,x>0は、
x=y=1であり
条件 x≠yに反する。

よって、(xy-1)≠0

以上より両辺に
(Z2-1)(xy-1)をかけても、等価である。即ち

(Z2-1)*(x+y)-2Z*(xy-1)=0 ------(2-2)

ここで問題1同様に
x=Z+u y=Z+v とおけば u,vは整数で
u≠v でなければならない。

(2-2)に代入し整理すると、

(Z2+1)*(u+v)+uv*2Z =0 ------(2-3)

(2-3)は uv=0のとき u=v=0なる解をもつが
条件 u≠v に反している。

よって、uv≠0なる条件が必要であるが、
(2-3)を下記のように書き換えることにより
自然に uv≠0の条件がつく。

2Z/(Z2+1) + (u+v)/uv = 0 ------(2-4)

すなわち、 (2-4)を満足する 整数 u,v,Zが存在する。
ただし、2≦Z

必要条件証明完了

次に 2≦Z のとき、(2-4)を満足する整数 z,u,vが存在したとする。

このとき (2-4)の導出過程から (2-1)は成立する。
ただし、u≠vで無ければならないが

u=v=P:整数のとき 式(2-4)は

 P=Z+1/Z

と変形され 2≦Z Z:整数 なので Pは整数ではない。
よって、u≠vの条件は不要である。

即ち十分条件であることが証明された。

【問題2答え】

2Z/(Z2+1) + (u+v)/uv = 0 を満足する整数
 2≦Z,u,vが存在すること。

【問題2感想】

一応問題に解答したと思いますが、これで完成なのか不安です。
というのは、この式からすぐには解が見つからないからです。
次の2系列の解を発見できましたが、それ以外にもありそうです。

 

【問題3】

Arctan(1/x)+Arctan(1/y)=3Arctan(1/z) -----(3-1)

Z=1のとき右辺は 3π/4であるが 
左辺の最大は x=y=1のとき2π/4であって、成立しない。
よって、2≦Z としてよい。
また、(3-1)から 少なくともx,yの何れかは正かつZ未満で無ければならず,
Z>x>0 とする。
このとき |y|≧xであるとしてよい。

(3)と(6)を(3-1)に適用すると、

(x+y)/(xy-1)=(3Z2-1)/(Z3-3Z)

2≦Z であるので  (Z3-3Z)≠0

一方 xy=1 なる整数x、y は Z>0も考慮すると
x=y=1のみである。

このとき arctan(1/Z)=π/6であって、
Z=/2。
即ち、Zは整数ではない。

よって、(xy-1)≠0 としてよい。 

以上より両辺に (Z3-3Z)(xy-1)をかけても、等価である。よって、

(Z3-3Z)*(x+y)-(3Z2-1)*(xy-1)=0 ------(3-2)

ここで問題1同様
x=Z+u y=Z+v とおけば u,vは整数でなければならない。

また、Z>x>0より 0>u>-Z -------(3-3)

(3-2)に代入し整理すると、

(Z2+1)2+ 2Z*(u+v)*(Z2+1)+(3Z2−1)uv =0 --(3-4)

Z2+1=Q≧5  とおけば
Q2+2Z*(u+v)*Q=−(3Z2−1)uv --(3-5)

【問題3の補題】

Z2+1=Q と (3Z2−1) の公約数は高々2である。

互除法によれば (3Z2−1)-3Q=-4なので、公約数は高々4である。

Zが偶数のとき Qは奇数であり、2を因数にもたない。

Zが奇数のとき Z=2n+1とすると 
Q=2+4(Z+2Z2)であり、2の倍数であるが4の倍数でない。
よって、=Q と (3Z2−1) の公約数はZが奇数のとき2、偶数のとき互いに素である。

(3-5)式の左辺はZが奇数のときQは偶数なので、2Qの倍数である。
従って問題3の補題により uvはQの倍数である。

Zが偶数のとき問題3の補題により無条件に uvはQの倍数である。

左辺=Q2+2Z*(u+v)*Q=Q*(Q+2Z(u+v))

よって、uvは下記で表される。

uv =(A+1)Q A:整数 ----(3-6)

これを (3-5)に入れQ>0で除して整理すると、

2Z(u+v)+ (3Z2−1)A+4Z2=0 ---(3-7)

Zと3Z2−1 は互いに素であるから AはZの倍数でなければならない。すなわち

uv =( BZ+1)Q B:整数 ---(3-8)

次に 特殊な場合を除き B=0に限ることを証明する。

(3-5) を解くと

−v/Q =(Q+2Zu)/(2ZQ+(3Z2−1)u) ---(3-9)

0>u>-Z Z≧2であるので

分子=|Q+2Zu|<max((Z-1)2,|Z2-2Z-1|)= (Z-1)2

分母は Z=3n 3n+1 3n-1 に分類し分母の絶対値の最小を検討する。

分母が最小になるのは
 u=-(2Z3+2Z)/(3Z2−1) 付近である。

Z=2 に関してはu=-1であって、(3-9)より v=-5/9 で解はない。
よって Z≧3

@ Z=3nのとき (n≧1) u=-2n+αとおくと

分母=8n+α(27n2−1)
  =8/3Z + α(3Z2−1)

8n=8,16,32 ,… に対し
(27n2−1)=26,107,242 …..>2*(8n)

よって分母の絶対値が最小になるのは α=0のときで
 |分母|=8/3Z

次に小さいのは α=±1のときであって、

|分母|=min(|27n2−1+8n|,| 27n2−1-8n| )
= 27n2−1−8n

|分母|/Z2= 3 -8/3Z -1/ Z2..≧2

即ち |分母|≧2 Z2

まとめると Zが3の倍数のときで u=2Z/3の場合
 |−v/Q|<3/8(Z-1) 2/Z

その他のuのとき
 |−v/Q|<0.5(1−1/Z) 2<0.5

A Z=3n-1のとき (n≧2)
u=-2n+1+αとおくと
分母=(9n2+4n-2) + α(27n2−18n+2)

n>2 のとき
(9n2+2n-2)= 85,150 ,… に対し
(27n2−18n+2)=191,362, …..>( 9n2+2n-2)

であって、α=0で最小となる。

n=2 のときはα=−1で最小値36

n=2 Z=5 において 36/Z2>1

n>2 Z=3n-1 において 
(9n2+2n-2)/ Z2=1+(3Z-n)/ Z2>1

即ち |分母|> Z2

まとめると Z≧5 が3の倍数−1のとき

|−v/Q|<(1-1/Z)2

B Z=3n+1のとき (n≧1)
● u=-2n-1+αとおくと
分母=(9n2+4n-2) + α(27n2+18n+2) 

(-9n2+2n+2)= -5 , -30, -73 , -134 ,… に対し
(27n2+18n+2)=47,146,299,506 …..>| -9n2+2n-2|*2

であって、α=0で最小となる。

このとき分母だけでは、

|-9n2+2n+2|/ Z2=1+(-3Z+n)/ Z2<1

であり、このままでは、欲しい結果ではない。

従って分子も考慮すると、(3-9)

for Z≧4

|−v/Q|
=(Q+2Zu)/(2ZQ+(3Z2−1)u)
=(Z2+2Z−3)/(3Z2−8Z−1)

以上から for Z>4  |−v/Q|<1 が成立する。

Z=4 に対しては (3-9) により
u=-1,-2,-3 v=-9/89 , - 1/42, -7/5 で解は無い。

●α=±1の場合は@と同様にして

 |分母|>2 Z2

まとめると Z(≧5) が3の倍数+1のとき

 |−v/Q|< 1

以上 @ABをまとめると
Z=3n u=-2n の場合を除いて |−v/Q|<1である。

|u|≦(Z−1)であるので

 |uv/Q| =|−v/Q||u|< (Z−1)----(3-10)

一方 (3-8)より B≠0 とすると

|uv/Q| =| BZ+1|≧|-Z+1|=(Z−1)であり (3-10)と矛盾する。

よって B=0  即ち,
uv= Z2+1

以上をまとめると、(3−1)を満足する z、x、yが存在するのは下記2ケースに絞られた。

(a)uv= Z2+1   z>4
(b)u = -2Z/3    Z=3n

●(a)の場合

(3-4)に代入し整理すると

2Z+(u+v) = 0 ---(3-11)

(a)と(3-11)を満足するu,vは 下記2次方程式の解である

t*t+2Z*t+ Z2+1=0

判別式
 D= Z2−(Z2+1)=−1<0

u,vは実数ではない。

よって (a)の場合に解は存在しない。

●(b)の場合

(3-9)にZ=3n u=-2nを代入し整理すると

-v =( 9 n2+1)*(3n2−1 )/8n

×8&整理 すると
-8v= 27 n3−6 n2−(1/n)

1/nが整数なのは n=1のみである。
このとき v=-5/4 で v は整数ではない。  

以上で 解が存在しないことが証明された。

【問題3感想】

ゴールデンウィークに1つか2つ"?"をつぶそうと思い立ったが100年目、豪いものにハマッテしまった。
すぐに出来そうに見えたのですが、かくのごとく大論文になってしまいました。
読み返してみても、頭の混乱を反映しており、読みにくいものと思います。
もう少しスッキリできるところもありますが,いずれにしても、エレガントな解法が用意されていると推察しますので、やったと言う証拠として、このまま失礼ながら提出いたします。
(本音は書き直すのが面倒なのですが。)

【問題4】

Arctan(1/x)+Arctan(1/y)=4Arctan(1/z)   -----(4-1)

 

【問題4解法】

Z=1のとき右辺は πであるが
左辺の最大は x=y=1のとき2π/4であって、成立しない。
よって、2≦Z としてよい。

また、(3-1)から 少なくともx,yの何れかは正かつZ未満で無ければならず,
Z>x>0 とする。

このとき |y|≧xであるとしてよい。

(4)と(6)を(4-1)に適用すると、

(x+y)/(xy-1)=(4Z3-4Z)/(Z4-6Z2+1)

(ZSUP>4-6Z2+1)≠0 である。

一方 xy=1 なる整数x、y は Z>0も考慮すると
 x=y=1のみである。

このとき arctan(1/Z)=π/8であって、
Z=(1+)。 

即ち、Zは整数ではない。

よって、(xy-1)≠0 としてよい。

以上より両辺に
 (Z4-6Z2+1) (xy-1)をかけても、等価である。

即ち、
(Z4-6Z2+1)*(x+y)- (4ZSUP>3-4Z)*(xy-1)=0
   ------(4-2)

ここで問題1同様
x=Z+u y=Z+v とおけば u,vは整数でなければならない。

また、Z>x>0より 0>u>-Z   -------(4-3)

(4-2)に代入し整理すると、

2Z(Z2+1)2 +(u+v)(3Z2-1)(Z2+1)+4Z*(Z2-1)uv=0
   ------(4-4)

Z2+1=Q≧5  とおけば
2ZQ2+(3Z2-1)*(u+v)*Q
=−4Z(Z2−1)uv   ------(4-5)

Q と −4Z(Z2−1) は高々 2を公約数としてもつだけである。

よって
uv =Q/2*(1+A) A:整数   ----(4-6)

(4-5)に代入すれば

(3Z2-1)*(u+v)=−2Z(Z2−1)A−4ZSUP>3

(3Z2-1) とZは互いに素であり、かつ右辺は4の倍数、

(3Z2-1)は4の倍数でないので
u+v=2Z(B−1)   B:整数   ---(4-7)

(4-5)に代入すれば

(3Z2-1)*(B-1)
=−(Z2−1)A−2Z2

A = −((3Z2-1)*B+1-Z2)/(Z2−1)
 = 1 −(3Z2-1)*B/(Z2−1)

(3Z2-1) と (Z2−1) は 高々2を公約数としてもつ。従って
Bは(Z2−1)/2 の倍数 すなわち
A=1 +(3Z2-1)/2*C C:整数

結局
uv = Q + Q *(3Z2-1)/4*C ---(4-8)

一方 (4−4)を-vについて解くと

-v= Q* (2Z(Z2+1)+(3Z2-1)u)/( (3Z2-1)(Z2+1)+4Z*(Z2-1)u) ---(4-9)

ここで 問題3とほぼ同じ形式が構成された。
先にC=0の場合を詰めておくと,

uv=Z2+1
u+v=−2Z

この方程式を満足する u,vは t*t+2Zt+ Z2+1=0 の根

判別式 D=-1 <0
よって u,vは虚根であり、整数ではない。

(4-9)の分母から Z>有限値において 
Z=4n u=-3n のときだけ |-v/Q/Z|は大きくなり
それ以外では1以下で C=0でなければならなくなると証明できると問題3から推測される。


ここでは、少しサボって,その証明はせず、予測が正しいか 計算機でしらべた。

下表は Z≦100までをPCで調べた結果のうち、

|-v/Q/Z|>0.375以上のものを一覧にした表である。

予測どおり Z≦100 における唯一の解
Z=5 u=-4 v=234 が含まれている。

また Z≧12 においては Zが4の倍数で 
u=-3Z/4の場合のみがリストアップされている。

 

最後に Z=4n u=-3n z>12 の場合には解が無いことを証明する。

(4-9)にこれらを代入し整理すると、
-v= (16n2+1)n(11−16n2)/(80n2−1)

(a)  nと (80n2−1)は互いに素

(b) (16n2+1) と (80n2−1)はs互除法で
(16n2+1) と -6=−2×3

16n2+1 は奇数なので 2の約数は無い

3の倍数かどうかは  n2+1 mod 3 で考えればよく
n=0,1,2 に対して 1,2,2であって、3の倍数ではない。

よって(16n2+1) と (80n2−1)は互いに素

(c) (-16n2+11) と (80n2−1)はs互除法で
(-16n2+11) と -54=−2×33

-16n2+11 は奇数なので 2の約数は無い

3の倍数かどうかは -n2+2 mod 3 で考えればよく
n=0,1,2 に対して 2,1,1であって、3の倍数ではない。

よって(-16n2+11) と (80n2−1)は互いに素

また 分母は1ではない。
従って,分子は分母の倍数で無く、vは整数ではない。

以上から (4-1)の解は
Z=5 X=1 Y=239 のみである(らしい)。

【問題4感想】

ちゃんとした証明は、疲れたのでパス。
機会があれば別ルートを目指すつもり。


◆出題者のコメント

かなり遅くなってしまいましたが,皆さん解答ありがとうございました。
まず問題1については,皆さん異論はないと思います。

次に問題2についてですが,自由な発想をしてもらうために,かなり漠然とした問題設定をしてしまいました。
Y.M.Ojisanさんの解答はもちろん正解ですが,ご自身もおっしゃっているように,「すべての」解を具体的に求めることができないという難点があるでしょう。
そこで,問題2を以下のように改めたいと思います。
そのために,まず次のように定義します。

定義.

正の整数aに対して,整数列(un(a)), (vn(a)) (n∈Z)を次のように定義する。

un(a)+vn(a)√d=(a+√d)n (n∈Z)

ただし,d=a2+1とする。

このとき,次の問題に挑戦してみてください。

問. 正の整数x, y, z (x<y)が方程式

Arctan( 1
x
)+Arctan( 1
y
)=2Arctan( 1
z
)

を満たすための必要十分条件は,ある正の整数aおよびnが存在して

x=u2n-1(a), y=u2n+1(a), z=v2n(a)

と表されることであり,また方程式

Arctan( 1
x
)−Arctan( 1
y
)=2Arctan( 1
z
)

を満たすための必要十分条件は,ある正の整数nが存在して

x=u2n-1(1), y=u2n+1(1), z=u2n(1)

と表されることであることを示せ。


さて,残るは問題3および4ですが,私が用意していた解法も基本的にY.M.Ojisanさんと同様の場合分けに基づいています。
問題3,4いずれも同様の方針ですので,以下では問題3についてだけ言及したいと思います。
まず,この話題に関して知られている定理を一つ述べておきます。

定理1.1(Strmer).

整数k, m, n, x, yに対して,不定方程式
k Arctan 1=m arctan( 1
x
)+n arctan( 1
y
)

は本質的に次の4つの解のみを持つ。

Arctan 1=Arctan( 1
2
)+Arctan( 1
3
),
Arctan 1=2Arctan( 1
2
)-Arctan( 1
7
),
Arctan 1=2Arctan( 1
3
)+Arctan( 1
7
),
Arctan 1=4Arctan( 1
5
)-Arctan( 1
239
),

それから,補題を一つ用意しておきます。

補題1.2.

正の整数kに対して,0でない整数x, y, zが方程式

(1.1) Arctan( 1
x
)+Arctan( 1
y
)=k Arctan( 1
z
)

を満たすならば,ある互いに素な整数a, bが存在して,次が成り立つ。

(1.2) a(x+i)(y+i)=b(z+i)k. (iは虚数単位)

さらに,ある整数0≦e≦ k
2
に対して,a=2eと表される。

略証.

α=(x+i)(y+i)(z+i)-k∈Q(i)とおくと,
(1.1)よりargα∈πZであるから,αは有理数である。
よって,(1.2)が成り立つ。

今,奇素数pがaを割り切るとすると,Z[i]の一意分解性より,
pはz+iを割り切ることになり矛盾。

したがって,a=2e (e≧0)と表されるが,
e>k/2とすると,再びZ[i]の一意分解性より,2がz+iを割り切ることになり矛盾。

よって,e≦ k
2
となる。


また,Taylorの定理より次が成り立つことに注意してください。

補題1.3.

任意の実数0<t<1および整数n≧0に対して次の不等式が成り立つ。

Arctan t <t− t3
3
+ t5
5
-...+ t4n+1
4n+1
,
Arctan t >t− t3
3
+ t5
5
-...− t4n+3
4n+3

これで準備ができました。

【問題3の解答】

まず定理1.1より,x≧2, z≧x+1≧3としてよい。
また補題1.2より,ある整数a, bが存在して

a(x+i)(y+i)=b(z+i)3, 1≦a≦2.

両辺の実部および虚部を比較すれば,

(1.3a) a(xy−1)=b(z3−3z),
(1.3b) a(x+y)=b(3z2−1).

特に(1.3b)より,

|y|=| b(3z2−1)
a
−x|
 ≧ |b|(3z2−1)
a
−x
 > 3z2−1
2
−z
 >z2.

今,z≦3x−1と仮定すると,

 Arctan( 1
x
)+Arctan( 1
y
)-3Arctan( 1
z
)
<Arctan( 3
z+1
)+Arctan( 1
z2
)-3Arctan( 1
z
)
3
z+1
+ 1
z2
-3( 1
z
- 1
3z3
)
-(2z2−2z−1)
z3(z+1)
<0 となり矛盾。

一方,z≧3x+1と仮定すると,

|y|>z2>3x(3x+1)であるから,

 Arctan( 1
x
)+Arctan( 1
y
)-3Arctan( 1
z
)
>Arctan( 1
x
)−Arctan( 1
3x(3x+1)
)-3Arctan( 1
3x+1
)
1
x
1
3x3
- 1
3x(3x+1)
−3( 1
3x+1
)
2x2−3x−1
3x3(3x+1)
>0 となり矛盾。

最後に,z=3xと仮定すると,(1.3)より,

1≡(xy−1)(3z2−1)=(x+y)(z3−3z)≡0 (mod x)

となり矛盾。

以上で,題意を満たすx, y, zが存在しないことが示された。

最後にコメントですが,「エレガント」かどうかは別として,多少短くはなったでしょうか。
しかし,内容をよく見てもらうと分かるように,いずれも本質的にRの大小関係(位相的性質)を用いています。
そもそも私がこの問題を投稿した理由の一つは,これを純粋に代数的に示すことができないかという点でした。
残念ながら,いまだ純代数的な証明は見つかっていないので,引き続き情報をお待ちしています。


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