『a+b√2=0』解答


◆石川県の高校生 アビュー さんからの解答。

問題が解けたのかちょっと自信がないのですが、こんな感じでどうでしょうか?

【問題1】

a + b√2 = 0 ⇒ a = b = 0を証明せよ。
(a,b:有理数)

式を変形すると
b = - a
= - a
2

ここで、aが0でない有理数とする。
すると、bには必ずを無理数の倍数として含むことになる。
これは問題の定義(a,b:有理数)に反するから、a = 0である必要がある。

このことから、これを問題式に代入すると、
b = 0よりb = 0。

∴a = b = 0

【問題2】

a + b + c = 0 ⇒ a = b = c = 0を証明せよ。
(a,b,c:有理数)

(1)の手順と変わらない。

a,bのうち少なくとも1つが0でない何らかの有理数のとき、
a + b + c = 0が成り立つかを考える。

a + b + c = 0、式変形して
c = -(a + b)
= -(a + b)
3

このとき、a,bが0でない、もしくは少なくとも1つが0でないときが残る。
よって、cは無理数となる。
これは問題の定義(a,b,c:有理数)に反するから、
a = b = 0である必要がある。

このことから、これを問題式に代入すると、
c = 0よりc = 0。

∴a = b = c = 0

【問題3】

a + b + c + d = 0 ⇒ a = b = c = d = 0を証明せよ。
(a,b,c,d:有理数)

(2)と同様に考える。

a,b,cのうち少なくとも1つが0でない何らかの有理数のとき、
a + b + c + d = 0が成り立つか考える。

a + b + c + d = 0、

式変形して
d = -(a + b + c)
= -(a + b + c)
5


このとき、a,b,cが0でない、もしくは少なくとも1つが0でないときはは残る。
よって、dは無理数となる。

これは問題の定義(a,b,c,d:有理数)に反するから、
a = b = c = 0である必要がある。

このことから、これを問題式に代入すると、
d = 0よりd = 0。

∴a = b = c = d = 0

【問題4】

n≧1,a0,a1,a2,...,anが有理数、
P1,P2,...,Pnは相異なる素数とするとき、
a0 + a1√P1 + a2√P2 + ... + an√Pn ⇒ aj = 0
(j = 0,1,2,...,n)であることを証明せよ。

a0,a1,a2,...,an-1のうち少なくとも1つが0でない何らかの有理数のとき、
a0 + a1√P1 + a2√P2 + ... + an√Pnが成り立つか考える。

式変形をして、
an = -(a0 + a1√P1 + a2√P2 + ... + an-1√Pn-1)
√Pn

an = -√Pn(a0 + a1√P1 + a2√P2 + ... + an-1√Pn-1)
Pn


このとき、aの第n項を除く数列の値が0でないときは全ての根号が外れない。
(Pの数列に同一の素数は存在しないから)

またaの第n項を除く数列の値のうち少なくとも1つが0でないときも、Pの数列には同一の素数は存在しないか ら、根号は外れない。

根号がある ⇒ 無理数であるから、anとなる。
これは問題の定義(a0,a1,a2,...,anが有理数)に反するから、
a0 = a1 = a2 = ... = an-1 = 0である必要がある。

このことから、これを問題式に代入すると、
an√Pn = 0よりan = 0。

 ∴aj = 0(j = 0,1,2,...,n)


◆出題者のコメント。

アビューさん、まずはこの問題に挑戦してくれてありがとうございます!
早速ではありますが、アビューさんの解答についてコメントさせてもらいます。

この問題を要約すれば
『異なる整数達(本問では素数達としました)の平方根達をそれぞれ有理数倍(すべて0倍は除く)してから足して、その結果別の整数の平方根を作れるか?
⇒作れない!』 を示すことです。

これは当たり前なことではありません!
どういうことかというと、例えばP,Q,Rを異なる素数とするとき

(有理数)=2√P+3√Q+4√R  ・・・★

という式を考えてみましょう。

★は嘘なのですが、嘘だ!ということが当たり前ではない!ということです。
しつこく言うと、式の中に√が残っているからといって、それが無理数だと断定は出来ません。

もしかしたら √2-√3+√5-√7+√11-√13+√15-√17+√19=0かもしれない・・・。

(もし無理数と断定する場合には、★の右辺を有理数Aと仮定して矛盾をだす必要があります。
Aが無理数であることを示すには、Aが有理数であると仮定して
(A=
,p,qは整数)、矛盾を示すことによってのみ、示されます。)

本問はこの見かけ上「当たり前なこと」を、ちゃんと示すことが要求されています。
だから、式を変形した結果、★のような式が出来たからといって、「おかしい、これは矛盾だ」としては答えにはなりません。

・・・と、いろいろ説明してきましたが・・・日本語がずらりずらりと続いてわかりづらかったかもしれません(ごめんなさい)。

アビューさんからもらった解答に実際あたってみてみます。
(問題1に関して)

アビューさんは式変形の結果、
(有理数b)=(有理数- a
2
)×(無理数)という式を得ましたね。

そして「bには必ずを無理数の倍数として含むことになる。」としています。
もう少し丁寧(?)にいえば、「bはの有理数倍になる」ということですね。

次に「これは問題の定義(a,b:有理数)に反する」とありますが、おそらくこの議論は、有理数の倍が有理数になるわけがない!ということを、暗黙のうちに認めてはいないでしょうか?
もしそうならこれは正しい証明とはいえません。
これは、上の方でもいったように、これこそ示して欲しいことなのです!

の有理数倍(0倍ではない)のもの」が無理数であること を暗黙のうちに認めてしまっているのです!
・・・どうでしょうか?

( くどくどごめんなさい。ちなみにが無理数であることは当たり前としていいです。証明は教科書に載ってます。)


◆神奈川県 テトラン さんからのコメント。

>このとき、aの第n項を除く数列の値が0でないときは全ての根号が外れない。
>(Pの数列に同一の素数は存在しないから)

そうとは限りません。
同一の素数が存在しなくとも、
a1√P1+a2√P2+…+an-1√Pn-1=k√Pnを満たす
有理数a1〜an-1及びk (k≠0)が存在していれば根号は外れます。
従って、根号が外れないことを証明するには、この式が成り立つa1〜an-1及びkが
a1=a2=…=an-1=k=0に限られることを証明しなければなりません。
そして、この式は

a1√P1+a2√P2+…+an-1√Pn-1+(−k)√Pn=0

と変形できるので、これで振り出しに戻ってしまいます。

>またaの第n項を除く数列の値のうち少なくとも1つが0でないときも、Pの数列には同一の素数は存在しないから、根号は外れない。

同じ理由により、根号が外れないとは限りません。


◆高知県 blue さんからの解答。

【問題1】

a+b=0のとき、b≠0とする。
このとき、=−
となり
(左辺)=無理数 (右辺)=有理数より矛盾。
したがって、b=0。
これよりa=0。

【問題2】

a+b+c=0のとき、c≠0とする。

a+c=−b

両辺を2乗すると
2+3c2+2ac=2b2
2ac=2b2−a2−3c2

a≠0とすると

2ac
(2b2−a2−3c2)

(左辺)=無理数 (右辺)=有理数 より矛盾。

よってa=0であり
+c=0
=−
=− 2b

(左辺)=無理数 (右辺)=有理数 より矛盾。
よってc=0でありb=0
よってb=0。

【問題3】

a+b+c+d=0のとき、d≠0とする。

a+d=−(b+c)

両辺を2乗すると
2+2ad+5d2=2b2+2bc+3c2
2+5d2−2b2−3c2+2ad−2bc=0

[問題2]よりa2+5d2−2b2−3c2=0,ad=0,bc=0

後者2つよりa=0,b=0,c=0,d=0

a=0のとき
+c+d=0

+d=−c√3

両辺を2乗すると
2b2+5d2+2bd=3c2

2bd=3c2−2b2−5d2

b≠0とすると

2bd
(3c2−2b2−5d2)

(左辺)=無理数 (右辺)=有理数 より矛盾。

よってb=0でありc+d=0

=−
=− 3c

(左辺)=無理数 (右辺)=有理数 より矛盾。

b=0のとき a+c+d=0
[問題2]よりa=c=d=0(矛盾)

c=0,d=0のときも同様に矛盾が起こる。
よってd=0であり、このときa+b+c=0
[問題2]よりa=b=c=0。

【問題4】

(i)n=1のとき
 a0+a1√P1=0⇒aj=0(j=0,1)
(∵[問題1]より)

(ii)n=k(≧1)のとき
0+a1√P1+a2√P2+…+ak√Pk=0⇒aj=0(j=0,1,2,…,k)と仮定する。

0+a1√P1+a2√P2+…+ak+1√Pk+1=0のときak+1≠0とする。
√Pk+1=−
k+1
(a0+a1√P1+a2√P2+…+ak√Pk)

ここで、a0+a1√P1+a2√P2+…+ak√Pk=0なら
√Pk+1=0、Pk+1=0 (矛盾)

よって、a0+a1√P1+a2√P2+…+ak√Pk≠0
このとき、j=0(j=0,1,2,…,k)は明らかに不適なので、
j≠0(j=0,1,2,…,k)

これは仮定の裏であり成り立たない。(矛盾)

よってak+1=0であり、a0+a1√P1+a2√P2+…+ak√Pk=0

仮定より、aj=0(j=0,1,2,…,k)

したがって、aj=0(j=0,1,2,…,k,k+1)

(i)(ii)より数学的帰納法からすべての自然数nに対して
0+a1√P1+a2√P2+…+an√Pn=0⇒aj=0(j=0,1,2,…,n) 


◆出題者のコメント。

blueさん解答ありがとうございます。
この数学の部屋に来るようになって初めての出題がこれですが、いろんな方に考えてもらえるのはとても嬉しいです。
毎日楽しみに解答を待っています。
では出題者としてコメントをさせて頂きます。

問題1から問題3に関して。
平方による式変形で√の数を減らしていき、結局問題1の形に帰着させる。正しい解答だと思います!

問題4に関して。
疑問点が一つあります。

>よって、a0+a1√P1+a2√P2+…+ak√Pk≠0
>このとき、j=0(j=0,1,2,…,k)は明らかに不適なので、
j≠0(j=0,1,2,…,k)
>これは仮定の裏であり成り立たない。(矛盾)

最後のところですが、つまり、「仮定の裏が成り立たないはずなのに、成り立ってしまうからこれは矛盾。」 ということでしょうか。
仮定の裏、の対偶は何になるでしょうか?

それは仮定の逆です。
いま、仮定の逆は明らかに成り立ちます。
従って仮定の裏は正しいことです。

だから矛盾ではありません。
どうでしょうか?

また、この証明では、√の中身が0でない数なら何でもOKとなってしまいます。


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答。

【問題4】

感想に「√の中身を素数としましたが、もっと一般化されます」とありますが、一般化したほうが証明しやすいので、
Piは因数分解すると素因数の冪が総て1である数とします。
 このより広い範囲でも問題4の定理が成立すれば、その一部である問題4でも成立することが証明されたことになります。

<記号>
(1) 形式上 P=1とします。
(2) a0√P+a1√P1+a2√P2+…+an√Pm−1 
で表される数の集合をQとします。
(3) また特定の Piの組による集合を Q(P)⊂Q とします。
(4) P〜Pm−1が 素数π〜πによる総ての組合せを網羅しているとき、
即ちm=2 の場合のQを特にQ2^n とします。

つまりたとえば Q2^2は 
{f|f=a0+a1√2+a2√3+a3√6} や
{g|g=a0+a1√5+a2√3+a3√15} 。。。なる集合の集合です。
また前者は  
2^2({1,2,3,6}) ないし 
2^2({1,2}×{1,3}) です。  

【補題】

拡大問題4が成立するなら  Q2^n(P)は 通常の4則に対して体である。
∵ 加算、減算、乗算が成立することは 明らかである。
除算に関してのみ解説する。
所謂 「分母の有理化」 を行えば形としてQ2^n(P)の要素に出来ることは明らかである。
拡大問題4が成立しているという前提にたてば Q2^n(P)の要素fが0になるのは ai総てが0のときのみであり、
有理化の過程で分子分母に0をかける事はない。よって体である。

【証明】

n=1のとき a0+a1√P1=0 は  a0=a0P1 と変形され、これが0でないとすると、P1に含まれる素因数の冪の偶奇性が一致せず、ありえない。
よって a0=a1=0 である。
以下 n=k−1 (1≦k≦2 は確認済み) で成立しているとして、
K>2の場合を数学的帰納法で証明する。

0√P+a1√P1+a2√P2+…+an√Pm−1=0   -----(A)

が n=kで成立する場合が在ったとする。
一般性を失わず P1 (a1≠0) の素因数の一つ π に着目する。
(A)式は
  f√π1=g    f,g∈Q2^k−1(P/{1,π1})
と書ける。
f=0 であれば g=0 であり、 n=k−1で拡大問題4が成立しているので ai総て0である。
即ち n=kで成立する。
f≠0 であれば <補題より> 

 √π1=h=g/f h∈Q2^k−1(P/{1,π1})   -----(B)

と表される。さらに同様に n≧2なので 
さらに π≠πがあって、

 √π1=h=x+y√π2  x,y∈Q2^k−2(P/{1,π1212})   -----(C)

とすることができ、これを 両辺2乗すると

 x2+π2−π+2xy√π2=0  -----(D)

である。 (D)式左辺は全体として Q2^k−1(P/{1,π1}) の要素であり 
x2+π2−π1 、2xy のそれぞれは、
2^k−2(P/{1,π121π2}) の要素である。

つまり x2+π2−πにはπ2を因数にもつPiはなく、
一方、2xy√π2のPiは必ずπ2を因数にもっている。

よって、それぞれ0でなければならず  
x2+π2−π=0 、2xy=0 である。
2xy=0 より x=0 か y=0である。

x=0のとき (D)は
 √(π/π)=y  -----(E)

y=0のとき (B)は
  √(π)=x  -----(F)
であり、(B)と同じ 有理数の平方根=h の形式である。 
ただし、x,y∈Q2^k−2(P/{1,π1212})でkが一つ下がっている。

(E)式では  √π1 の部分が√(π/π)となっているが xy=0を導出する際、
有理数としての特性のみ使用しているので同じ結論が得られる。

 以上を繰り返すことにより、xまたはy∈Q2^0まで下げることが出来き、このとき x、yは有理数なので矛盾である。
よってx=y=0であり、h=0であり g=0である。
即ち f=0であり これは  f≠0 の仮定に反する。 
以上より  aiは総て0である。

【補足】

分かりににくいのでn=3 π={2,3,5} m=8 で解説する。
 まずn=0、1、2 の 場合が成立しているとは
 <n=0>  
   a0=0 ならば a0=0
 <n=1>  
   a0+a1√2=0 |a0+a1√3=0|a0+a1√5=0 ならば a0=a=0
 <n=2>  
   a0+a1√2+a2√3+a√6=0 |a0+a1√2+a2√5+a√10=0|
   a0+a1√3+a2√5+a√15=0 ならば 
0=a=a=a=0

 以上が成立している状態である。

 証明すべきことは 
0+a1√2+a2√3+a√6+a4√5+a5√10+a6√15+a7√30=0 ならば 
0=a=a2=a3=a4=a5=a6=a7=0
であり、これが成立すれば 
0+a1√2+a2√3+a4√5=0 ならば 
0=a=a2=a4=0 と言えること。

 π=2 に着目して変形すると   
(a0+a2√3+a4√5+a6√15)+√2(a1+a√3+a5√5+a7√15)=0
より

 √2=b0+b1√3+b2√5+b3√15

さらに   π=5 に着目して変形すると

√2=(b0+b1√3)+√5(b2+b3√3)

である。両辺2乗すると
 2 = (b0+b1√3)+5(b2+b3√3)+2√5(b0+b1√3)(b2+b3√3) −−(*)


 (b0+3b1+5b2+15b3−2)+(2b0b1+2b2b3)√3+(2b0b2+6b1b3)√5+(2b0b3+2b1b2)√15

<n=2>での成立状態から 各係数は0である。
つまり (2b0b2+6b1b3)=0 (2b0b3+2b1b2)=0であって
すなわち  (b0+b1√3)(b2+b3√3)=0である。

(b0+b1√3)=0の場合 (*)は 2=5(b2+b3√3)
(b2+b3√3)=0の場合 (*)は 2=(b0+b1√3)

前者の場合 計算すると
 0=(5b2+15b3−2)+(10b2b3)√3
<n=1>での成立状態から 各係数は0である。
つまり b2b3=0であって
すなわち  b2=0 または b3=0である。 

b2=0 の場合 15b3=2 
b3=0 の場合 5b2=2 

であって成立しない。


◆出題者のコメント。

Y.M.Ojisanさん、丁寧な解答ありがとうございます。
正解だと思います!
体のところの議論を除けば高校生でも理解ができる解答ですね。
まだまだいろいろな方の解答を待ちたいので、また改めてコメントさせてください。


◆出題者の再コメント。

出題後に気づいたんですが、『5個の有理数』でも同じ問題がありました。
Y.M.Ojisanと本質的には同じと思われる解法が、古いですが、数学セミナーのNOTE欄(76年4月号、84年 5月号)にも載っています。
是非、参照してみてください。

僕自身は、まったく初等的ではありませんが、
事実:「n次の代数体にはn個の共役写像がある」を使うもので した。

問題1であれば、Q()が定義域で、
Qでは動かずを−に写す写像は同型で、
0=a+b の両辺にこの写像を作用させれば
0=a−b√2を得ます。
これからa=b=0を得る・・・のような感じです。

問題2〜4も同様(+α)です。

自分の方法で一般のn乗根に向けて拡張を試みましたが、
n≧5ではうまくいきませんでした。
また、Y.M.Ojisanさんの解法を真似てみましたが、僕では上手くいきませんでした。
成り立ちそうだけど、どうなんでしょうか。


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