◆新潟県 加藤 英晴 さんからの解答。
【問題2】
120°の角の対辺をh(x)=ex+i
120°の角を挟辺をf(x)=ax+b,
g(x)=cx+dとおきます。
ただし,a,b,c,d,e,iは整数で,a,c,eは0でないとします。
余弦定理よりh(x)2=f(x)2+g(x)2+f(x)g(x)
(ex+i)2=(ax+b)2+(cx+d)2
展開して,xについての2次の項,1次の項,定数項の係数を比較すると,
e2=a2+c2+ac
2ie=2cd+2ab+bc+ad
i2=b2+d2+bd
e,iを消去すると,
a2*d2+b2*c2+a2*b2−2abcd=0
b2*c2−2abd*c+a2*(d2+b2)=0
c= | abd±√(a2*b2*d2−b2*a2*d2+b2) b2 |
= | abd±√(−a2*b4) b2 |
cは整数より,√の中は平方数でなけらばならないですが,√の中は,正にならないので,0です。
aは0でないとしていたので,b=0となりますが,するとcが不定となります。
これは,cが定数であることに矛盾します。
したがって,120°を含む三角形において,3辺全てが1次式である整数係数多項式は存在しえないといえます。
◆東京都 ぽこぺん さんからの解答
【解答】
三角形の 3 辺の長さを表す整数係数の多項式を u(x),v(x),w(x) とする。
このとき,余弦定理を用いると,
w(x) の対角が 2π/3 となる条件は次の式で表される。
u(x)2 + u(x)v(x) + v(x)2 = w(x)2 (*)
【問題1】
u(x),v(x),w(x) がそれぞれ 2 次,1 次,2 次の多項式であるものをすべて(注)求める。
u(x) = ax2 + bx + c
v(x) = dx + e
w(x) = ax2 + px + q
a,d ≠ 0
とおけるから,式 (*) に代入して,各次数の係数を比較すると
2ab + ad - 2ap = 0 (1)
b2 + bd + d2 + 2ac + ae - p2 - 2aq = 0 (2)
2bc + 2de + cd + be - 2pq = 0 (3)
c2 + ce + e2 - q2 = 0 (4)
が得られる。
ここで a ≠ 0 だから (1) の両辺を a で割って,
d = 2(p - b) (1')を得る。
また,補題を用いると,(4) を満足する任意(注)の (c, e, q) の組は,m, n を整数のパラメータとして
c = m2 - n2
e = - 2mn + n2
q = m2 - mn + n2
と表すことができる。
ここで,m,n の値を同時に定数倍すると,c,e,q の値はその定数の 2 乗倍になる。
特に,m と n の符号を同時に入れ替えても c,e,q の値は変わらないから,m は
m ≧ 0の範囲を動くものとしても一般性を失わない。
これによって定められた d,c,e,q を (2) に代入すると,
(b - p)2 = an2 (2')
n (b(-2m + n) + 2mp) = 0 (3')
を得る。
ここで,n = 0 とすると,(2') より b = p,(1') より d = 0 となって条件に反する。
したがってn ≠ 0である。
このとき,(2') より
a = ( | b - p n |
) | 2 | であるから, |
b = p + nt
a = t2
と書くことができる。ここで a ≠ 0 だから
t ≠ 0である。
一方,(3') より
(p + nt)(-2m + n) + 2mp = 0
であるから,
p = (2m - n)tを得る。
以上より,
a = t2
b = 2mt
c = m2 - n2
d = -2nt
e = -(2m - n)n
p = (2m - n)t
q = m2 - mn + n2
を得る。さらにこれを u(x),v(x),w(x) に代入すると,
u(x) = (tx)2 + 2mtx + (m2 - n2)
v(x) = -2ntx - (2m - n)n
w(x) = (tx)2 + (2m - n)tx + (m2 - mn + n2)
m ≧ 0、n,t ≠ 0を得る。
明らかに,u(x),v(x),w(x) は多項式として共通因数を持たない。
[注: 整数の共通因数に関しては,(m, n, t) を定数倍すると,u(x),v(x),w(x) は その定数の 2 乗倍になるから,(m, n, t) は共通の約数を持たないことがまず必要である。
さらに,m + n が 3 の倍数のとき,(m, n) が互いに素であっても (c, e, q) は 3 で割り切れるから,そのとき t が 3 の倍数であってはならない。]
たとえば,m,n,t を 0 ≦ m ≦ 3,-2 ≦ n ≦ 2,-2 ≦ t ≦ 2,n,t ≠ 0 の範囲で,共通因数を持たないように動かしたときの u(x),v(x),w(x) は別表のようになる。
このうち,(m,n,t) = (1,1,1) である解は問題の例にあげられている組である。
【問題2】
前問の (1)〜(4) において a = 0 とおくと,
b2 + bd + d2 - p2 = 0 (2'')
2bc + 2de + cd + be - 2pq = 0 (3'')
c2 + ce + e2 - q2 = 0 (4'')
となる。ただし,b,d,p ≠ 0 である。
(3'') より
(2bc + 2de + cd + be)2 - 4(pq)2 = 0
となるから,ここに (2'') より p2 を,(4'') より q2 を代入すると,
cd - be = 0を得る。このとき,b,d ≠ 0 だから,
c b | = | e d | = | g f |
(f,g は互いに素な整数) |
とおくことができ,整数 b',d' を用いて
u(x) = b' (fx + g)
v(x) = d' (fx + g)
と書ける。
ただし,u(x),v(x) が三角形の辺長であることから,b',d’は同符号とする。
これを (*) に代入すると
w(x)2 = (b'2 + b'd' + d'2) (fx + g)2
となるから,
w(x) = ±(b'2 + b'd' + d'2)1/2 (fx + g)
を得る。ここで h を b',d' と同符号の整数とし,
b'2 + b'd' + d'2 = h2
に解が存在するような (b', d', h) の組を求めると,
w(x) = h (fx + g)となる。
(実際,そのような解は (b', d', h) = (3, 5, 7) のように存在する)
以上より,整数係数の 1 次式で条件を満たす u(x),v(x),w(x) は必ず 1 次式の共通因数 fx + g を持つ。
したがって,問題1と同様に,(多項式の意味で)「3 辺が互いに素」という条件をつけると,解は存在しない。
【補題】
m,n が互いに素な整数ならば,
x = m2 - n2
y = - 2mn + n2
z = m2 - mn + n2
で定められる整数 x,y,z は,不定方程式
x2 + xy + y2 = z2 (#)
を満たし,(x, y, z) の最大公約数は 1 か 3 である。
ここで,最大公約数が 3 になるのは,m + n が 3 の倍数の場合である。
【証明】
x,y,z を代入すれば解であることがわかる。
また,
m2= | x - y + 2z 3 | ,n2 = | -2x - y + 2z 3 |
と書けるから,(x,y,z) の最大公約数が 1,3 以外であれば,
(m2,n2),すなわち (m,n) も同じ最大公約数を持つ。
また,
x = (m + n)(m - n)
y = n(m + n - 3m)
z = (m + n)2 - 3mn
であるから,(x,y,z) の最大公約数が 3 であるための必要十分条件は,
m + n が 3 の倍数であることである。
(証明終)
【補題の注】
1 の虚 3 乗根の一つを ω とおくと,共役複素数を ' で表すとき,
x2 + xy + y2 = (x - ωy)(x - ω'y)
である。
ここで,二次体 K(i√3) で考えると,
x - ωy と x - ω'y とは互いに素であり,(#) を満たす x,y は
x - ωy = ε (m + ωn)2
x - ω'y = ε'(m + ω'n)2
でなければならない。
ただし,m,n は有理整数であり,ε は K(i√3) の単数で,
ε = ±1,±ω,±ω'である。
ここで,ε = 1 を用いれば,
x = | ω'(m + ωn)2 - ω(m + ω'n)2 ω' - ω |
= m2 - n2 |
y = | (m + ωn)2 - (m + ω'n)2 ω' - ω |
= - 2mn + n2 |
となり,このとき,
z2 = (m2 - mn + n2)2
を得る。
したがって,これにより (#) の「すべての」解が得られることがわかる。
解答本文中で(注)をつけた「すべての」「任意の」に関しては,これが必要である。
しかし,本問では「例をたくさん求める」ことが目的であるので,あえて K(i√3) を出す必要はない。
【感想】
話は簡単なのですが,細かいところでやけに面倒な議論をしてしまいました。
------+-----------+----+------------------+----------+------------------ m n | c e q | t | u(x) | v(x) | w(x) ------+-----------+----+------------------+----------+------------------ 0 -2 -4 4 4 -1 (-4) + x2 4 - 4x 4 - 2x + x2 1 (-4) + x2 4 + 4x 4 + 2x + x2 0 -1 -1 1 1 -2 (-1) + 4x2 1 - 4x 1 - 2x + 4x2 -1 (-1) + x2 1 - 2x 1 - x + x2 1 (-1) + x2 1 + 2x 1 + x + x2 2 (-1) + 4x2 1 + 4x 1 + 2x + 4x2 0 1 -1 1 1 -2 (-1) + 4x2 1 + 4x 1 + 2x + 4x2 -1 (-1) + x2 1 + 2x 1 + x + x2 1 (-1) + x2 1 - 2x 1 - x + x2 2 (-1) + 4x2 1 - 4x 1 - 2x + 4x2 0 2 -4 4 4 -1 (-4) + x2 4 + 4x 4 + 2x + x2 1 (-4) + x2 4 - 4x 4 - 2x + x2 1 -2 -3 8 7 -2 (-3) - 4x + 4x2 8 - 8x 7 - 8x + 4x2 -1 (-3) - 2x + x2 8 - 4x 7 - 4x + x2 1 (-3) + 2x + x2 8 + 4x 7 + 4x + x2 2 (-3) + 4x + 4x2 8 + 8x 7 + 8x + 4x2 1 -1 0 3 3 -2 (-4)x + 4x2 3 - 4x 3 - 6x + 4x2 -1 (-2)x + x2 3 - 2x 3 - 3x + x2 1 2x + x2 3 + 2x 3 + 3x + x2 2 4x + 4x2 3 + 4x 3 + 6x + 4x2 1 1 0 -1 1 -2 (-4)x + 4x2 (-1) + 4x 1 - 2x + 4x2 -1 (-2)x + x2 (-1) + 2x 1 - x + x2 1 2x + x2 (-1) - 2x 1 + x + x2 2 4x + 4x2 (-1) - 4x 1 + 2x + 4x2 1 2 -3 0 3 -2 (-3) - 4x + 4x2 8x 3 + 4x2 -1 (-3) - 2x + x2 4x 3 + x2 1 (-3) + 2x + x2 (-4)x 3 + x2 2 (-3) + 4x + 4x2 (-8)x 3 + 4x2 2 -2 0 12 12 -1 (-4)x + x2 12 - 4x 12 - 6x + x2 1 4x + x2 12 + 4x 12 + 6x + x2 2 -1 3 5 7 -2 3 - 8x + 4x2 5 - 4x 7 - 10x + 4x2 -1 3 - 4x + x2 5 - 2x 7 - 5x + x2 1 3 + 4x + x2 5 + 2x 7 + 5x + x2 2 3 + 8x + 4x2 5 + 4x 7 + 10x + 4x2 2 1 3 -3 3 -2 3 - 8x + 4x2 (-3) + 4x 3 - 6x + 4x2 -1 3 - 4x + x2 (-3) + 2x 3 - 3x + x2 1 3 + 4x + x2 (-3) - 2x 3 + 3x + x2 2 3 + 8x + 4x2 (-3) - 4x 3 + 6x + 4x2 2 2 0 -4 4 -1 (-4)x + x2 (-4) + 4x 4 - 2x + x2 1 4x + x2 (-4) - 4x 4 + 2x + x2 3 -2 5 16 19 -2 5 - 12x + 4x2 16 - 8x 19 - 16x + 4x2 -1 5 - 6x + x2 16 - 4x 19 - 8x + x2 1 5 + 6x + x2 16 + 4x 19 + 8x + x2 2 5 + 12x + 4x2 16 + 8x 19 + 16x + 4x2 3 -1 8 7 13 -2 8 - 12x + 4x2 7 - 4x 13 - 14x + 4x2 -1 8 - 6x + x2 7 - 2x 13 - 7x + x2 1 8 + 6x + x2 7 + 2x 13 + 7x + x2 2 8 + 12x + 4x2 7 + 4x 13 + 14x + 4x2 3 1 8 -5 7 -2 8 - 12x + 4x2 (-5) + 4x 7 - 10x + 4x2 -1 8 - 6x + x2 (-5) + 2x 7 - 5x + x2 1 8 + 6x + x2 (-5) - 2x 7 + 5x + x2 2 8 + 12x + 4x2 (-5) - 4x 7 + 10x + 4x2 3 2 5 -8 7 -2 5 - 12x + 4x2 (-8) + 8x 7 - 8x + 4x2 -1 5 - 6x + x2 (-8) + 4x 7 - 4x + x2 1 5 + 6x + x2 (-8) - 4x 7 + 4x + x2 2 5 + 12x + 4x2 (-8) - 8x 7 + 8x + 4x2 ------+-----------+----+------------------+----------+------------------ m n | c e q | t | u(x) | v(x) | w(x) ------+-----------+----+------------------+----------+------------------