『空間上の格子点』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答。

【解答】

素数Pを法とする剰余類(系)は有限体であることを随時使用する。

【問題1】

直線を決定するには、(a,b,c)≠(0,0,0)が必要である。
一般性を失わずa≠0 mod Pとする。
集合Z={0,1,2, ,P-1}とするとき Z=α*Z である。
ここで α=a/GCD(a,b,c) 

有名な関係であり証明略。

よって、直線のx座標はP種の座標をもつ。
一方y、z座標はxに対してβ*Z,γ*Zで1意に定まる。
ここでβ=b/GCD(a,b,c) γ=c/GCD(a,b,c)。

従ってP個である。

【問題2】

#<a,b,c>=P2 +P+1

原点は全ての直線に共通である。
一方その他の点は、2種の直線に所属することはない。
問題1より、原点を除くと一直線所属の点の数は全てP−1個である。

よって #<a,b,c>= P3-1
P-1
=P2+P+1

【問題3】

3の倍数か3の倍数−1である素数

<a,b,c>と,<b,c,a>が同一であることは (a,b,c)=K(b,c,a) mod P と等価である。

よって K3≡1 mod P である。

よって、オイラーの定理により P-1が3の倍数であることと等価である。

【問題4】

(P+1)P

直線<1,1,1>上の点の個数はPである。
これを除外した直線は問題3の要件を満たす場合、必ず3本1組である。
よって #<<a,b,c>>= P3-P
3(P-1)
=P(P+1)
3
である。

因みに問題3より(P+1)かPが3で割り切れる。

【問題5】

(P+1)P
+1
問題4より <<a,b,c>>は (P+1)P
個あり、
集合[[a,b,c]]も最大同数存在する。
これに <1,1,1>に直交する平面のグループ1個を加えればよい。

さて異なる <<a,b,c>> <<e,f,g>>に対して
[[a,b,c]]=[[e,f,g]] であるとすると、
<a,b,c>と<e,f,g> 、<b,c,a>と<e,f,g> 、<c,a,b>と<e,f,g>に直交する3本のみが
<e,f,g> に直交する直線として[[a,b,c]]に含まれる。

ところがP≧5では<e,f,g>に直交する直線はP本で5本以上である。
よってP≧5では[[a,b,c]]≠[[e,f,g]]である。

P=2のとき [[1,1,1]]と[[0,0,1]]と[[0,1,1]]は下記である。

[[1,1,1]]=<<0,1,1>>
[[0,0,1]]=<<0,0,1>>∪<<0,1,1>>
[[0,1,1]]=<<0,0,1>>∪<<0,1,1>>∪<1,1,1>

よって全て異なる。

P=3のとき [[1,1,1]]と[[0,0,1]]と[[0,1,1]]と[[0,1,2]]と[[1,1,2]] は下記である。
[[1,1,1]]=<<0,1,2>>∪<1,1,1>

[[0,0,1]]=<<0,0,1>>∪<<0,1,1>>∪<<0,1,2>>
[[0,1,1]]=<<0,0,1>>∪<<0,1,2>>∪<<1,1,2>>
[[0,1,2]]=<<0,0,1>>∪<<0,1,1>>∪<<1,1,2>>∪<1,1,1>
[[1,1,2]]=<<0,1,1>>∪<<0,1,2>>∪<<1,1,2>>

よって全て異なる。

【問題6】

9個

<<a,b,c>> <<e,f,g>> のそれぞれには3本の直線が含まれている。
異なる2直線に直交する直線は1本である。
よって最大でも3×3である。

実際P=5の場合、9本存在する組み合わせがある。

即ち、 [[0,1,2]] [[0,1,3]]は <<0,0,1>> <<1,1,2>> <<1,1,3>>の9本を共通にもつ。

【感想】

Alphaさんの出題なので、何か落とし穴があるのではないかとやや不安。


◆出題者のコメント。

Y.M.Ojisanさんへ、いつも解答ありがとうございます。
心配されている落とし穴ですが、回答者側にはありませんでした。
つまり、解答には不備はなかったと思います。

私、出題者側にはいくらかの意図的な落とし穴および、意図しなかった落とし穴が存在いたします。

まず意図的な落とし穴としては二つ。
一つ目は用語の用い方です。

本問題において私は直線や平面という単語を用いましたが、これは間違いです。
正しくは直線ではなく点、平面ではなく直線です。
いや・・・間違いという言い方は語弊がありますね。
一般的に言われる場合だと点や直線の方が直線や平面より使われる機会が多いというだけです。

これは射影平面を考えているから、このような事が起こるのであり、一般に射影平面では空間上の直線が点に対応し、平面が直線に対応します。
そのため、上のような用語の変形が起こるわけです。

本問題の場合、射影幾何学についての知識を前提とした出題は不親切であると考えてこのように用語を変形し、出題いたしました。

二つ目としては、他の問題とのリンクです。
これは以前出題した部分集合の問題と密に関係があります。

本問題の5番において[[1,1,1]]を除けば、
p(p+1)/3通りの直線[[α,β,γ]] ( 問題文中の平面 )が存在していることが分かっております。

この直線にはそれぞれp個の点の組<<a,b,c>>(問題文中の直線)が含まれます。
さらに、元々の空間上には<<a,b,c>>はp(p+1)/3個含まれますので結果として、
p(p+1)/3個の要素を持つ集合から、p部分集合をp(p+1)/3個取り出し、異なる部分集合の共通部分を高々3個に押さえることができる、という結論を得ることができます。

これは部分集合の問題に対する一つの解答を与えたものと考えております。

あと、私自身が意図しなかった落とし穴についてですが、一つは問題において、
[[a,b,c]]に含まれる<<α,β,γ>>の数を問わなかったこと。

これは非常に重要な問いかけですが、うっかり忘れてしまいました。

そして、もう一つきわめて重要ですが問題文の語句の使い方などが乱雑であったこと。
やはり、射影幾何学における用語を再度参考書などで確認してから出題すべきであったと反省しております。


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