『2つの三角形の面積』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答。

 

Pが△ABCの外心:Qであるとき、Pから各辺への推薦の足をL,M,Nとすると、
△LMNの面積は
である。

一方相似比から S’=4△LMNであるから、この時S=S’である。

一般のPの位置をQからのずれ(a,b,c)で表すこととする。
ここでa,b,cは

a=QP・eQL ,b=QP・eQM 、c=QP・eQN

で定義され eQXは QX方向の単位ベクトルである。
また、角度αβγを上図のように定義する。
αβγは条件より π
未満の正の数である。

またα+β+γ= π
---(1)である。

一般性を失わず△ABCの外接円の半径を1とする。
即ちQA=QB=QC=1。

この時 BC=2cosα>0,CA=2cosβ>0,AB=2cosγ>0

a,b,cには線形の条件があって、面積S一定より

S= (sinα-a)*cosα+ (sinβ-b)*cosβ+ (sinγ-c)*cosγ
=sinα*cosα+sinβ*cosβ+sinγ*cosγ

すなわち a*cosα+b*cosβ+ c*cosγ=0 --(2)

一方 sin(β+γ)=cosα およびその輪換の関係を用いると

 S'/2
=(sinβ-b)*(sinγ-c)*cosα+(sinα-a)*(sinγ-c)*cosβ+(sinβ-b)*(sinα-a)*cosγ
=b*c*cosα+a*c*cosβ+ b*a*cosγ-b*(sinγ*cosα+ sinα*cosγ) -c*(sinβ*cosα+ sinα*cosβ) -a*(sinγ*cosβ+ sinβ*cosγ)+sinβ*sinγ*cosα+sinα*sinγ*cosβ+sinβ*sinα*cosγ
=b*c*cosα+a*c*cosβ+b*a*cosγ-(a*cosα+b*cosβ+ c*cosγ)+(sinα*cosα+sinβ*cosβ+sinγ*cosγ)/2
=b*c*cosα+a*c*cosβ+ b*a*cosγ + S/2   ---(3)
よって、(1)(2)条件下で(3)の最大値を求めればよい。
(2)と(3)よりaを消すと

cosα(S'-S)/2
= b*c*cos2α-(c*cosβ+ b*cosγ)(b*cosβ+ c*cosγ)
=b*c*(cos2α- cos2γ- cos2β)- cosγ*cosβ*(b2+c2)

cos2α- cos2γ- cos2β
=(sin2β-1)*cos2γ+( sin2γ-1)*cos2β+2 sinβcosγsinγcosβ
=2cosβcosγ(sinβsinγ-cosβcosγ)
=−2cosβcosγsinα

cosα(S-S')/4cosβcosγ
=(b2+2*b*c*sinα+c2)
=(|b|-|c|)2+2(1-sinα)*|b*c|≧0 

等号はb=c=0 同様に a=0 。

よって、cosα>0 cosβ>0 cosγ>0であるから S≧S'
等号はa=b=c=0、即ち外心のとき。


◆出題者のコメント。

Y.M.Ojisanさん、解答ありがとうございます。
外心から各辺に下した垂線上の点でPの位置を表す、という方法は考え付きませんでした。
Y.M.Ojisanさんの証明のようにPの位置や角度を定めると、SとS'の関係がきれいに表されますね。
見事正解です。

私は次のような方法で証明しました。

△ABCの外接円の半径をR、外心をOとし、Pから辺BC、CA、ABに下ろした垂線の足をそれぞれD、E、Fとする。
また、辺BC、CA、ABの長さをそれぞれa、b、cとする。

Oを起点とするOB方向の単位ベクトルを
OB
、同様に
OC
とする。

点Pが△OBCの周上または内部にある場合、
0≦r≦R、0≦t≦1である実数r、tを用いて

OP
= r*{(1-t)*
OB
+ t*
OC
}

と表せる。初等幾何により、PD、PE、PFはr、tを用いて

PD = (R-r)cosA
PE = (R-r)cosB + ra
R
sinC*(1-t)

PF = (R-r)cosC + ra
R
sinB*t

と表され、この式を

S'
4
=1
2
*PD*PE*sinC +1
2
*PE*PF*sinA +1
2
*PF*PD*sinB ・・・(1)

に代入し、正弦定理を用いてsinを消去すると、

(1)の第2項
= a
2R
*{- r2*a2*bc
4*R4
*t2 +[ r2*a2*bc
4*R4
+ ra*(R-r)*(bcosB-ccosC)
2*R2
]*t+(R-r)cosC*[(R-r)cosB+ rac
2*R2
]}

(1)の第1項 + 第3項
= (R-r)cosA*{ ra(b2-c2)
4*R3
*t+(R-r)* a
2R
+ ra*c2
4*R3
}

となる。この2式を加えたものをtについて整理し、
さらに三角関数の加法定理や acosB+bcosA = c 等を用いて、
S' = abc
16*R3
*{(R+r)(R-r) -( ra
R
) 2*t(1-t)}
を得る。ここで、S = abc
4R
より、

  S-S' ≧ 0
abc
4*R5
*[(Rr)2 - t*(1-t)*(ra)2] ≧ 0
⇔ R2 ≧ t*(1-t)*a2

右辺は t = 1
2
の時に最大となるので
この不等式が常に成り立つ条件は 2R > a だが、これは明らか。

よってPが△OBCの周上または内部にある場合S≧S'であり、対称性より△OCA、△OABでも良い。

またSの式にt= 1
2
を代入してrについての式と見ると、
Sは単調減少であるから、Sが最大になるのはr=0、
つまりPが外心に一致するときである。


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