『鈍角三角形の分割』解答


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答。

【解答】 7

【証明】

鈍角三角形をABCとし、鈍角をAとする。

(1)全て鋭角にするには少なくともAを2分割しなければならない。

(2)Aの2分割線をBCまで到達させると、一方に再度鈍角三角形ができ問題を悪化させるか、直角三角形が2個できる。
直角は鋭角ではないので後者の場合さらに2分割しなければならず、際限がない。
よってAの2分割線をBCに直線的に到達させた場合、最小値は得られない。

(3)即ち、三角形ABCの中に頂角が集まる点Mが必要である。
またそれら頂角が全て鋭角であるためには5個以上の頂角が集まらなければならない。
つまり、Mから放射状に少なくとも5本の辺が伸びなければならない。
(この時点でnは5以上)

(4)三角形の頂点はABCの3個しかない。
従ってMから伸びる辺のうち2辺は三角形ABCの辺上に到達する。
もし、途中で止めると、もう一つ頂点が5個集まる点が必要になり、nは8以上なので既存の7以上になるからである。

辺上に分割3角形の頂点がある場合、頂角が3個以上集まらないと全てが鋭角にはならない。
よって頂角はABC内に少なくとも、
M周り+ABC周り+辺上=5+3*2+2*3=17個ある。
(この時点でnは6以上)

(5)Mから伸びる辺のうち3個が頂点ABCへ向かう場合、他の2辺の状態は下図の2パターンしかなく、何れも少なくとも6分割は不可能である。

(6)Mから伸びる辺のうち、頂点ABCに到達するのが2本以下の場合、頂角の数は、
M周り+ABC周り+辺上=5+(2*2+1)+3*3=19個以上である。

(7)頂角の数は3nである。
よってnは7以上である。
実際、上図に示す実例がある。

【コメント】

(5)に関しては下記の証明のほうがベターですね。

(5’)Mから伸びる辺のうち3個が頂点ABCへ向かう場合、向かわない他の2辺を一度消すと次の図の状態であり、3個の三角形のうち、何れかは鈍角三角形である。
従って、最小のnを与えない。




◆出題者のコメント。

Y.M.Ojisan様解答ありがとうございます。
この問題は出典がどうのと言う必要ないほど有名な問題ですが、ご存じだったでしょうか。

まず、本問において当たり前の事を言います。
問題文を次の様に書き換えれば
『鋭角三角形をn個の鋭角三角形に分割する。nの最小値を求めよ。』

nの最小値は1です。
この場合であれば鋭角三角形の形に依存せずに分割(しませんが・・・)できます。
ものすごく当たり前です。
重要なのは三角形の形に依存しないと言う事です。

さて、本問のように鈍角三角形を鋭角三角形に分割するとき、その最小分割数は形に依存しないのでしょうか?
少なくとも自明ではありません。
だとすれば、三角形の形にnは依存する可能性があると見なすべきです。

では、以上の事をふまえまして説明いたします。

> (1)全て鋭角にするには少なくともAを2分割しなければならない。
言うまでもなく正しいです。

>(2)Aの2分割線をBCまで到達させると、一方に再度鈍角三角形ができ問題を悪化させる
実は間違い。
Aの二分割線をBCまで到達させる事により、三角形ABCは最小の分割が可能であると仮定しても矛盾しません。
鈍角三角形αを鋭角三角形βと鈍角三角形γの二つに分割したとします。
αの最小分割数 = 1 + γの最小分割数が成立するわけですが、
ここで、αの最小分割数 = γの最小分割数 ならば、明らかに矛盾です。
しかし、αとγは同じ形をしているとは限りません。
従って最小分割数も等しいとは限らず、必ずしも矛盾は導けないのです。

次に、
>直角三角形が2個できる。
とあります。
直角三角形について議論されているのはさすがですが、これ意外とやっかいだと思います。
直角三角形を二個作った方が分割に有利である可能性も否定できてないからです。
なので、問題文にある鈍角三角形を直角三角形も含む物としましょう。
そうすれば、『直角三角形が二個できる』場合は検討の必要がありません。

では、以上の事をふまえて(1) (2)を書き換えてみます。
書き換え前:
『(1)全て鋭角にするには少なくともAを2分割しなければならない。

(2)Aの2分割線をBCまで到達させると、一方に再度鈍角三角形ができ問題を悪化させるか、直角三角形が2個で きる。
直角は鋭角ではないので後者の場合さらに2分割しなければならず、際限がない。
よってAの2分割線をBCに直線的に到達させた場合、最小値は得られない。』

書き換え後:
『写像Fを鈍角三角形ABCからその最小分割数nを得る写像であると定義する。
平面上の鈍角三角形の集合をSとすればF:S→Nである。
ただし、鈍角三角形には直角三角形も含むとする。
明らかに鈍角三角形は鋭角三角形ではないので、F(△ABC) ≧ 2 が成立する。
F(△ABC)が自然数の値をとるため最小値が存在する。
この最小値をとる△ABCに注目する。
ここで直角以上の角をAとする。

(1) 全て鋭角にするには少なくともAを分割しなければならない。

(2) Aの二分割線をBCまで到達させると、少なくとも一つの鈍角三角形できるためF(△ABC)の最小性に矛盾。
よって、Aの二分割線は三角形ABCの内部で停止する。』

こうすれば、間違いはないはずです。
さてさて、続きまして。Y.M.Ojisan様の解答によれば、Aからの二分割線はAMと名付けられています。
MはABC内部の点です。
このMに関して次のような記述があります。

『(3)即ち、三角形ABCの中に頂角が集まる点Mが必要である。
またそれら頂角が全て鋭角であるためには5個以上の頂角が集まらなければならない。』

一見正しそうですが、間違いです。
Mは鋭角三角形の辺上に存在する可能性もあります。
Mを頂点としてではなく、辺として含む鋭角三角形が存在したならば、Mの周りには4個以上の三角形で足りてしまいま す。
もちろん、Y.M.Ojisan様が検討されている場合と、上記の場合は同一に議論する事が不可能な内容ですので ここは場合分けをして説明する必要があります。

ここから先の議論に関しては、完全に正しい議論をされています。
加えるとすれば、上記の可能性でしょう。

最後に、この問題はどのような鈍角三角形であろうと最小分割数は一定値をとります。
この事はn≦6だとどの鈍角三角形も分割できない事を示し、
さらに全ての鈍角三角形をn=7で分割する場合を実際に見つけてしまえば終了です。


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからのコメント。

早速のご検討ありがとうございます。

(1)ご存じだったでしょうか。
 勉強不足で存じませんでした。

(2)「悪化させる」は間違い。
 言葉として数学的ではありませんが、それ以外にそのようなご指摘があろうかと予測しておりました。
起点は問題が∀なのか∃なのかの日本語特有の曖昧さにあります。
具体的には鈍角三角形XとYがあって、その鋭角への最小分割数が仮に「7」と「8」の時、解答は「7」なのか「8」なのか悩んだわけです。
実際には恒に7なので解答は同じですが、そのことがまた曖昧さを温存させています。
そこであえて安易な「7」の方の見解にたち、曖昧に解答してみました。

ご指摘のようにγの中は分割数が「6」のものがあるかもしれません。
その場合、解答は「6」となってしまうわけです。
でも余分に1個ついているわけですから悪化しているわけです。
つまりきっちり書けば 
f((γの集合)+1=f(γ+βの集合)≧f(αの集合)+1 です。

(3)直角三角形の扱い。
 その点は気づいておりましたが、問題が非鋭角三角形の分割となっていなかったので、直角三角形分割が7未満の場 合を考えて分けました。
また、無駄ではありますがさほど厄介ではないと思います。
辺に到達する場合、2個の直角からはずれれば一方は鈍角ですし、外れなければ一つの角を共通に等比数列的な直角三角形が無限にできるわけです。
途中で止めれば即4×2>7です。
(ご指摘によりMの周りは最大4を用いました。実は5で考えていたわけですが。)

(4)Mの周囲
 これは、考え落としておりました。
ケースが増えて厄介ですが、現在の延長で証明できそうですね。


◆出題者のコメント。

Y.M.Ojisan様。おっしゃるとおりであります。

>起点は問題が∀なのか∃なのかの日本語特有の曖昧さにあります。

これは出題者である私のミスです。問題文

鈍角三角形をn個の鋭角三角形に分割する。
nの最小値を求めよ。

を次のように訂正して、解決いたします。

鈍角三角形をn個の鋭角三角形に分割する。

どのような鈍角三角形を考えても、鈍角三角形の形に依存しないある自然数Nが存在し、
N>nならば鈍角三角形は鋭角三角形に分割できず、
n=Nならば、鈍角三角形は鋭角三角形に分割できる事を示せ。

これならば、答えはN=7であり。数学的に見た場合の曖昧さも存在しないと思います。
大変失礼いたしました。


◆愛知県 Y.M.Ojisan さんからの解答。

【解答】 N=7

【任意非鋭角三角形の7個の鋭角三角形への分割方法】

任意非鋭角三角形をABCとし、
∠CAB≧ π
>∠BCA≧∠ABC とします。

また、その他記号を下図とします。
 このとき、Mを内心にとり、非常に直角に近い鋭角二等辺三角形MEFとMGHを下図のように採れば、分割された7領域は全て鋭角三角形です。

 

【証明】

(1)Mは内心です。
従って  π
≦∠EAM=∠HAM=α< π

(2)設定より 0<β≦γ< π
≦α< π
です。
また、α+β+γ= π
です。

β≦γ< π
のとき β< π
 は当然ですが
π
≦γのとき β= π
-α−γ≦ π
です。

(3)∠EMF=∠HMG= π
−2ε  とします。
ここで  0<ε<min( β+γ
, π
-γ))≦( π
-α)/2です。

従って、εは 0<ε< π
に存在しており、
π
>∠EMF=∠HMG>0です。

(4)凾dBF、凾dFM、凾gMG、凾gGC、は明らかに鋭角2等辺三角形です。

(5)μ= π
+β-ε< π
、μ= π
+β-ε> π
でありμは鋭角です。

(6)ν= π
+γ-ε< π
、ν= π
+γ-ε> π
でありνは鋭角です。

(7)δ= π
+2ε-β-γ=α+2ε>0 です。

またδ< π
+(β+γ)-β-γ= π
であって、δは鋭角です。

(8)φ=π-α-ν= 3π
+ε-β-α= π
+β+ε>0 です。
また、φ= π
+β+ε< π
であって、φは鋭角です。

(9)ψ=π-α-μ= 3π
+ε-β-α= π
+γ+ε>0 です。
また、ψ< π
+γ+( π
-γ)= π
であって、ψは鋭角です。

(10)以上で全ての角度が鋭角であることが判りました。

【非鋭角三角形の6個以下の鋭角三角形への分割は不可能】

(1)(2)はAlpha殿の模範解答に同じ。

(3)即ち、三角形ABCの中に頂角ないし内部の辺が集まる点Mが必要である。
またそれら頂角が全て鋭角であるためには5個以上の頂角が集まるか、内部の辺と3個以上の頂点があつまらなければならない。
前者を「昼型」、後者を「朝型」とよぶこととする。

(4)昼型ないし昼型+昼型の場合は先の解答の(4)〜(6)に示したように6個に分割は不可能である。

(5)朝型一個の場合、内部の辺は、頂点を含む非鋭角三角形の辺から辺に渡るように引くしかない。
しかし、下図に示すように何れの場合も非鋭角()三角形ができ、やはり最少性に反する。

(6)朝型+昼型の場合、4+5−2=7であって、それだけで7領域あるので6分割は不可能。

(7)朝型+朝型の場合、追加の朝型の内部の辺は、精々頂点を含む非鋭角三角形の辺から頂点を除く辺に渡らなければならない。
従って、一つの頂点は利用できず、頂角の数を数えると下図に示すように既に19あり、6分割は不可能である。

(8)以上より非鋭角三角形⊃鈍角三角形の鋭角三角形への6分割は不可能である。

【P.S.】 今度はよろしいでしょうか。


◆出題者のコメント。

完璧です。
ただ、朝型に関しては次のように簡略化する事もできます。

三角形の内部に昼型の頂点が一つでも存在した場合。
すぐに最小性に反する事が証明可能。
ここは説明の必要がないでしょう。

三角形の内部に昼型の頂点が一つも存在しない場合。
朝型の頂点の総数をa個、三角形の辺の途中にある分岐点をb個、分割後の鋭角三角形の個数をm個とする。

鋭角三角形の内角の総和はmπ。
また、朝型の頂点において鋭角三角形の内角の和はπであり、同時に三角形の辺の途中にある分岐点でも同じく内角の和 はπである。
さらに、分割前の鈍角三角形の内角の和もπなので、
結局、三角形の内角の総和はπ(a+b+1)が成立する。

よって、m=a+b+1

また、鋭角三角形の辺の個数kを、途中の頂点で別れている者として(えー、つまり無理矢理四角形と見て)数えると
2k=3m+a+b+3

a+b=m-1を代入して 2k=4m+2。

ところが、線分の総数は、各頂点に注目して鈍角三角形の三頂点はそれぞれの頂点から3,2,2本以上の線分が伸びていて 内部・周上の分点からは最低4本ずつ線分が伸びているはずである。

従って、2k≧7+4(a+b)=7+4(m-1)=4m+3

これは2k=4n+2に反するため、矛盾する。

てなわけで、内部には必ず昼型の頂点が一つは存在するそうです。
そう考えると証明も楽・・・かな?


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