◆埼玉県 \aleph_0 さんからの解答。
【問題1】
問題を少し拡張して次の命題を示します.
命題1.
(a) 任意の正整数nに対して,方程式
(1) x2+y2=n(x+1)(y+1)
は非負整数解(x, y)を持たない.
(b) 正整数nに対して,方程式
(2) x2+y2=n(x−1)(y−1)
が正整数解(x, y)を持つのはn=8のときのみであり,そのとき無限個の解を持つ.
証明.
(a) (1)が非負整数解(x, y)を持つと仮定すると,
対称性よりx≧y≧0として一般性を失わない.
ここで,y(小さい方)が最小になる解(x, y)を改めて取る.
このとき,(1)をxについての二次方程式とみなし,x, x'をその解とすると,
(3) x+x'=n(y+1), xx'=y2−n(y+1).
特に,x'=n(y+1)−xは整数であり,
(x+1)(x'+1)=xx'+(x+x')+1=y2+1≧1より,
x'≧0である.
また,x'≧yとすると,xx'≧y2となり(3)の第2式に矛盾するから,
x'<yである.
このとき,(y, x')は(1)の解であり,y>x'≧0だからyの最小性に反する.
したがって,主張は示された.
(b) (2)が正整数解(x, y)を持つと仮定する.
まずx=yのとき,2x2=n(x−1)2より,
x−1=±1だから,x=2, n=8を得る.
次にx≠yのとき,対称性よりx>y>0として一般性を失わない.
ここで,x(大きい方)が最小になる解(x, y)を改めて取る.
このとき,(2)をxについての二次方程式とみなし,x, x'をその解とすると,
(4) x+x'=n(y−1), xx'=y2+n(y−1).
特に,x'=n(y−1)−xは整数であり,
(4)の第2式より,x'>0である.
今,x=y+1とすると,(2)より1≡0 (mod y),
したがってy=1となり矛盾するから,x≧y+2である.
よって,x'≧xとすると,
(y+1)2≦(x−1)2≦(x−1)(x'−1)=xx'−(x+x')+1=y2+1
となり矛盾するから,x'<xである.
このとき,(x', y)は(3)の解であり,
x'<x, y<xだからxの最小性より,x'=y,
したがってn=8を得る.
以上で,主張の前半が示された.次に,後半を示す.
n=8のとき,(2)が有限個の解を持つと仮定し,
0<x≦yで,y(大きい方)が最大となる解(x, y)を取る.
このとき,x'を上と同様に定めると,x'は正整数であり,
また,x'≦yとすると,xx'≦y2となり
(4)の第2式に矛盾するから,x'>yである.
このとき,(y, x')は(1)の解であり,x'>y>0だからyの最大性に反する.
以上で,主張はすべて示された.□
系.
正整数nに対して,方程式(1)が整数解を持つのはn=8のときのみであり,そのとき無限個の負整数解を持つ.
証明.
(1)がx, yが異符号となる整数解(x, y)を持たないことは容易に分かるから,命題1より主張が従う.□
【問題2】
今度は,正整数nに対して次の方程式を考えます.
(*) 2(x2+y2)=n(x+1)(y+1).
そこで,次のように定義します.
Xn={(x, y) | x, yは(*)を満たす整数}.
今,nが偶数ならば問題は命題1に帰着するので,以下ではnは奇数とします.
このとき,(x, y)∈Xnならば,x, yの少なくとも一方は奇数であることに注意します.
命題1の証明と同様の議論により,次の命題が成り立つことが分かります.
命題2.
(x, y)∈Xnで,yが奇数のとき,
x'= | n(y+1) 2 |
−xとおけば,(x', y)∈Xn. |
このときさらに|x|>|y|ならば,|x|>|x'|が成り立つ.□
命題2より,(x, y)∈Xn, x≠yならば,
|x'|≦|x|, |y'|≦|y|, |x'|≦|y'|で,x'は偶数となる
(x', y')∈Xnが存在することが分かります.
系.
(x, y)∈Xnで,xが偶数のとき,
z= | n(y+1) 2 |
−x, w= | n(z+1) 2 |
−yとおけば, |
証明.
このとき(*)より,y≡1 (mod 4)が分かるから,zは奇数である.
よって,命題2より主張が従う.□
さて,(x, y)∈Xnに対して,
(5a) u=(n−4)(x+y)+2n,
(5b) v=x−y
とおくと,u≡2n≡8 (mod n−4)であり,次が成り立つことが確かめられます.
(**) u2−Dv2=16n, D=n2−16=(n+4)(n−4).
逆に,
Un={(u, v) | u, vは(**)を満たす整数で,u≡8 (mod n−4)}
とおき,(u, v)∈Unに対して,
(6a) x=( | u−2n n−4 |
+v)/2, |
(6b) y=( | u−2n n−4 |
−v)/2 |
とおくと,(**)よりu≡v (mod 2)に注意すれば,x, yは整数であり,(*)を満たすことが確かめられます.
以上で次の命題が示されました.
命題3.
XnとUnは,(5), (6)で与えられる写像により集合として一対一に対応する.□
そこで,方程式(**)が整数解を持つためのnの必要条件を求めます.
命題4.
(**)が整数解(u, v)を持つとする.
このとき,nの素因数pに対して,p≡-1 (mod 4)ならば,次が成り立つ.
(a) pはu, vの両方を割り切る.
(b) nのp進付値は偶数である
(すなわち,nはpの偶数乗でちょうど割り切れる).
証明.
(**)より,u2+(4v)2≡0 (mod n)が成り立つことから明らかである.□
命題5.
(**)が整数解(u, v)を持つとする.
このとき,n+4の任意の素因数pに対して,p≡1 (mod 4)が成り立つ.
証明.
(**)より,u2≡16n≡-82 (mod n+4)が成り立つことから明らかである.□
系.
(**)が整数解を持つならば,n≡1 (mod 12)またはn≡9 (mod 36)が成り立つ.
証明.
まず命題4より,n≡1 (mod 4)に注意する.
このときnが3の倍数ならば,再び命題4より,n≡0 (mod 9)であるから,
合わせてn≡9 (mod 36)を得る.
一方nが3の倍数でないならば,命題5より,n≡1 (mod 3)であるから,
合わせてn≡1 (mod 12)を得る.□
最後に,n≠1のとき,(*)が一つの解を持てば,無限個の解を持つことを示します.
命題6.
n≠1のとき,Unが空集合でないならば,無限集合である.
したがって,Xnについても同様である.
証明.
Unが(空でない)有限集合と仮定し,|u|が最大となる(u, v)∈Unを取る.
このとき,u, vは同符号であるとして一般性を失わない.
ここで上の系より,D=n2−16は正で平方数でないから,
a2−Db2=1, a≡1 (mod n−4)を満たす正整数a, bを取る.
(具体的には,a02−Db02=1を満たす正整数a0, b0に対して,
a=a02+Db02, b=2a0b0とおけばよい.)
このとき,
u'=au+Dbv,
v'=bu+av
とおけば,(u', v')∈Unが容易に確かめられる.
ところが,|u'|>|u|であるから,|u|の最大性に反する.
したがって,Unは無限集合である.□
なお,u>0となる(u, v)∈Unが見つかったn≦100に対して,
|u|が最小となるものは以下の通りです.
n | u | v | x | y | z | w |
---|---|---|---|---|---|---|
9 | 363 | -45 | 12 | 57 | 249 | 1068 |
13 | 359 | -29 | 4 | 33 | 217 | 1384 |
25 | 975395 | -39525 | 3460 | 42985 | 533865 | 6630340 |
85 | 1877183 | -22109 | 532 | 22641 | 961753 | 40851904 |
97 | 2447328395 | -25251669 | 531844 | 25783513 | 1249968585 | 60597692908 |
同様に,u<0となる(u, v)∈Unが見つかったn≦100に対して,
|u|が最小となるものは以下の通りです.
n | u | v | x | y | z | w |
---|---|---|---|---|---|---|
1 |
-1 | -1 | 0 | 1 | 1 | 0 |
9 | -12 | 0 | -3 | -3 | -6 | - |
13 | -19 | 1 | -2 | -3 | -11 | -62 |
25 | -223 | 9 | -2 | -11 | -123 | -1514 |
49 | -84413287 | 1728489 | -73682 | -1802171 | -44079483 | -1078145138 |
61 | -23191 | 381 | -14 | -395 | -12003 | -365666 |
81 | -6262479 | 77409 | -1962 | -79371 | -3212523 | -130027770 |
◆東京都 mckentarow さんからの解答。
【問題1】も【問題2】も 解なし です。
a2 + b2 = N(a+1)(b+1)
をaについての2次方程式とみて、
a2 - N(b+1)a + b2 - N(b+1) = 0
a が自然数であれば、判別式
D = (N2-4)b2 + 2N(N+2)b + N(N+4)
が平方数である必要があります。
自然数N=2のときは、
D = 4(4b+3)
ここで、4b+3≡3(mod4) ですが、
平方数≡0 or 1 (mod4)なので、Dは平方数ではありません。
N≠2のときは、Dがbについて完全平方式になればよく、
bの2次方程式D=0が重解をもてばいいことになります。
この判別式をD'とすると、
D'/4=8N(N+2)
となり、自然数Nに対しては、D'≠0です。
したがって、Dは平方数になることはなく、aは自然数ではありえません。
【問題2】については、N→N/2とおきかえて同様の議論でやはり自然数の解は存在しないことがわかります。
◆広島県 清川 育男 さんからの解答。
【問題2】
N=1)
1 1
一組見つかると、3組がセットになつて存在します。
これは必然なのでしょうか?。 N=9 )
12 57
57 249
249 1068
N=13)
4 33
33 217
217 1384
1032 6553
6553 41569
41569 263652
N=25)
3460 42985
42985 533865
533865 6630340
N=85)
532 22641
22641 961753
961753 40851904
N=97)
531844 25783513
25783513 1249968585
1249968585 60597692908