◆長崎県 Dr.Berserker さんからの解答。
問題は、一般項を求めてしまえば全く難しいものではありません。
条件から、次の漸化式が求められます。
{An}→T社の車に乗っている人の割合、A0 = 0.6
{Bn}→N社の車に乗っている人の割合、B0 = 0.4
An+1 = 0.9An + 0.4Bn
Bn+1 = 0.1An + 0.6Bn
これより、
An+1 - 4Bn+1 = 0.5(An+1 - 4Bn+1)
であることから、
An - 4Bn = | A0 - 4B0 2n | ・・・1 |
であることが分かる。
極限値 | lim n→∞ |
(An - 4Bn) = 0 |
また条件より、
An + Bn = A0 + B0・・・2
であるので、1および2を連立させれば、一般項が導出される。
An = A0 * (4 + | 1 2n | ) / 5 + 4 * B0 * (1 - | 1 2n | ) / 5 |
Bn = A0 * (1 - | 1 2n | ) / 5 + B0 * (1 + | 4 2n | ) / 5 |
以下略。
◆東京都の高校生 MATIX さんからの解答。
T車を持っている人の数とN車を持っている人の数の和をMとして考える。
Mは十分多いものとする。
【問題1】
T車
(T車を持ったままの人)+(T車に買い換えた人)
=(M*0.60)*(1-0.10)+(M*0.40)*0.40
=0.70M
N車
(N車に買い換えた人)+(N車を持ったままの人)
=(M*0.60)*0.10+(M*0.40)*(1-0.40)
=0.30M
よって、70%:30%
【問題2】
これ以降の問題は、次のような数列を考える。
k年後にT車を持っている人をA(k)
k年後にN車を持っている人をB(k)とする。
条件から、
A(k+1)=A(k)*0.90+B(k)*0.40
B(k+1)=A(k)*0.10+B(k)*0.60
この2つの漸化式より、
A(k+1)+B(k+1)=A(k)+B(k)=M・・・(1)
A(k+1)-4B(k+1)= | 1 2 | {A(k)-4B(k)}・・・(2) |
(2)より、A(0)-4B(0)=-Mであるから、
A(k)-4B(k)=-M( | 1 2 | ) | n |
よって、
A(k)= | 1 5 | {4-( | 1 2 | ) | n | }M、B(k)= | 1 5 | {1+( | 1 2 | ) | n | }M |
これから、A(2)=0.75M、B(2)=0.25M
ゆえに、75%:25%
【問題3】
lim k→∞ |
A(k)=0.80M、 | lim k→∞ |
B(k)=0.20M |
よって、80%:20%
【問題4】
【問題2】で、A(0)-4B(0)がわかればよい。
はじめの、T車を持っている人の数とN車を持っている人の数の比率が
P%:(100−P)%のとき、
A(0)-4B(0)=(0.05P-4)M
A(k)-4B(k)=(0.05P-4)M( | 1 2 | ) | n |
A(k)= | 1 5 | {4+(0.05P-4)( | 1 2 | ) | n | }M= | 1 5 | {4-(4-0.05P)( | 1 2 | ) | n | }M |
B(k)= | 1 5 | {1-(0.05P-4)( | 1 2 | ) | n | }M= | 1 5 | {1+(4-0.05P)( | 1 2 | ) | n | }M |
lim k→∞ |
A(k)=0.80M、 | lim k→∞ |
B(k)=0.20M |
よって、80%:20%
【感想】
悩みとは、T車を生産している会社とN車を生産している会社のうち、どちらでしょうね。
ちなみに、T社は、T*****で、N社は、******ですか。
どちらの会社も悩んでいますね。
そんなことはどうでもよいが、この問題だと、「強いものは、どんどん強くなる。」といったイメージができ るので、もう少し、考えたいものですね。
【追加問題】
では、どのくらいの人が、T社の車からN社の車に買い替え、N社の車からT社の車に買い替えれば、将
来、均衡がとれる(所有者の割合が、50%ずつになる)ことができるでしょうか?
(つまり、2つの会社の明暗を分けるボーダーラインを求めてほしいのです。)
◆大阪府 らぶりぃナナちゃん さんからの解答。
【問題1】
一年後のT,N車を持っている人の割合は
0.6*(1-0.1)+0.4*0.4=0.7
0.6*0.1+0.4*(1-0.4)=0.3
よってそれぞれ70%,30%
【問題2】
同様に二年後のT,N車を持っている人の割合は
0.7*(1-0.1)+0.3*0.4=0.75
0.7*0.1+0.3*(1-0.4)=0.25
よってそれぞれ75%,25%
【問題3】
P(n)をn年後のT車を持っている人の割合とすると、
その次の年のT社を持っている人の割合P(n+1)は
P(n+1)=P(n)*(1-0.1)+(1-P(n))*.4=0.5P(n)+0.4となる。
漸化式よりP(n)= | P(0)-0.8 2n |
+0.8 |
P(0)=0.6を代入して | lim n→∞ |
P(n)=0.8 |
よって、4:1に近付く。
【問題4】
問題3の漸化式のP(0)の値に関係なく
lim n→∞ |
P(n)=0.8 |
よって、4:1に近付く。
◆千葉県 永山 祐介 さんからの解答。
【問題1】
T=0.6 * ( 1 - 0.1 ) + 0.4 * 0.4= 0.7
N=0.6 * 0.1 + 0.4 * ( 1 - 0.4 )= 0.3
A. T:N = 7:3
【問題2】
T= 0.7 * ( 1 - 0.1 ) + 0.3 * 0.4= 0.75
N = 0.7 * 0.1 + 0.3 * ( 1 - 0.4 )= 0.25
A. T:N = 3:1
【問題3,4】
一般化して、毎年TTtoN%がT車からN車へ、TNtoT%がN車からT車へ乗り換えるとする。
ある年において、もしも、T車からN車へ乗り換える人数と、N車からT車へ乗り換える人数が平衡したならば、T車に乗っている人の割合をxとすると、
TTtoN x = TNtoT ( 1 - x )
x = TNtoT / ( TTtoN + TNtoT )
もしもT車に乗っている人の割合が平衡時の割合よりも多いならば、つまり
x > TNtoT / ( TTtoN + TNtoT )
ならば、
TTtoN x > TNtoT ( 1 - x )
であり、T車からN車へ乗り換える人数の方が、その逆よりも多くなる。
よって翌年、T車に乗っている人の割合は低下する。
また、T車に乗っている人の割合が平衡時の割合よりも少ないならば、つまり
x < TNtoT / ( TTtoN + TNtoT )
ならば、
TTtoN x < TNtoT ( 1 - x )
であり、N車からT車へ乗り換える人数の方が、その逆よりも多くなる。
よって翌年、T車に乗っている人の割合は増加する。
以上から、T車に乗っている人の割合xは、平衡点である
x = TNtoT / ( TTtoN + TNtoT )
で収束する。
この時N車に乗っている人の割合をyとすると、y = 1 - xであるから
y = TTtoN / ( TTtoN + TNtoT )
比で表せば
x : y = TNtoT : TTtoN
よって、どのような比率から開始しても
x : y = TNtoT : TTtoN
において平衡する。
問題3の条件の場合はx : y = 4 : 1
よって、T車ユーザは80%、N車ユーザは20%の比率で平衡する。
◆熊本県の高校生 mit さんからの解答。
n年後、T車を持ってる人の割合を表す数列を{an}、N車を持ってる人の割合を表す数列を{bn}とおく。
いまT車を持ってる人の割合をp(0≦p≦1)とすると次の漸化式が成り立つ
a0=p…(1)
b0=1−p…(2)
an+1= | 9 10 | *an+ | 4 10 | *bn…(3) |
bn+1= | 1 10 | *an+ | 6 10 | *bn…(4) |
(5)よりbn=1−an←(3)に代入
a | n+1 | = | 9 10 | *a | n | + | 4 10 | *(1−a | n | ) |
a | n+1 | = | 1 2 | *a | n | + | 2 5 | (a | n+1 | − | 4 5 | )= | 1 2 |
(a | n | − | 4 5 | ) |
a | n | − | 4 5 | =c | n | とおくと |
数列 { c | n | }は初項p− | 4 5 | 、公比 | 1 2 | の等比数列となる |
c | n | = | 1 2n | *(p− | 4 5 | ) |
よってa | n | = | 1 2n | *(p− | 4 5 | )+ | 4 5 |
【問題1】
a | n | に | p= | 6 10 | 、n=1を代入 |
a | 1 | = | 1 2 | *( | 6 10 | - | 4 5 | )+ | 4 5 | = | 7 10 |
b | 1 | = | 1− | 7 10 | = | 3 10 |
よってT車70%、N車30%
【問題2】
a | n | に | p= | 6 10 | 、n=2を代入 |
a | 1 | = | 1 22 | *( | 6 10 | - | 4 5 | )+ | 4 5 | = | 3 4 |
b | 2 | = | 1− | 3 4 | = | 1 4 |
よってT車75%、N車25%
【問題3】
a | n | に | p= | 6 10 | を代入 |
a | n | = | 1 2n | *( | 6 10 | - | 4 5 | )+ | 4 5 | =- | 1 5*2n | + | 4 5 |
長い間時間が経つので
lim n→∞ |
an= | lim n→∞ | (- | 1 5*2n | + | 4 5 | )= | 4 5 |
よってT車のシェアは80%、N車のシェアは20%に近づく
【問題4】
pが0≦p≦1の範囲でいかなる値をとっても
lim n→∞ |
{ | 1 2n | *(p− | 4 5 | )}=0 |
lim n→∞ |
an= | 4 5 |
よってT車、N車の比率をどんな状態から始めてもT車のシェアは80%、N車のシェアは20%に近づく
なかなか面白い問題ですね。
見た目は難しそうですが数列と極限の融合問題として解いたら意外とうまく解けました。
◆出題者のコメント。
Dr.Berserker さん、MATIX さん、らぶりぃナナちゃん さん、永山 祐介 さん、mit さん、解答ありがとうございま
す。みなさん正解です。
有名な問題だからとか、このサイト内に同様の問題があって、以前解いたことがあるからとか、・・・などの理由で、
手を出されなかった方も多いのではないでしょうか。
T車、N車は私が作り変えたもので、小問もつけたのですが、問題の本質は変わってません。
サイト内の同様の問題の存在には後で気が付きましたが、今回解答を送られた方々は、以前解答を送られた方とは違う
方ばかりで、そのうえ解法も違ったアプローチでした。さらに私が用意していた2種類の解法とも違っていたので、わ
くわくして読ませてもらいました。
私の用意した解法は、1つは行列を利用したもので、
固有値からP-1AP を求めてAn を計算し
極限をとるものと、
もう1つは連立方程式を利用するもので、平衡状態のときの式、
0.9x+0.4y=x,0.1x+0.6y=y を解くものです。
行列で解いた方もおられると思いますが、行列をHTMLで書くのは困難ですよね。
MATIX さんからの指摘
「この問題だと、「強いものは、どんどん強くなる。」といったイメージができるので、もう少し、考えたいものです
ね。 」
というのは、とてもするどいですね。
実社会では、このような調査結果を受けて自動車メーカーNは、新車の開発をはじめるでしょう。新車の発表後同様の
調査をやって、また次の戦略を練ることになるのでしょうね。
また、この問題の設定のようなものは、(正規)マルコフ過程と呼ばれています。
◆兵庫県 sinapusu さんからの解答。
今更ですが他の回答者の方と基本的な考えが同じでも少しだけ違うアプローチだと思ったので投稿します。
というか一番原始的アプローチですが。
まず
p≡TからNへ
q≡NからTへ
と定義。
T(i)≡T回目のTの割合
T(0)からスタート
T(i+1)=pT(i)+q*N(i)
N(i)=1-T(i)
なのでこれは
T(i+1)=pT(i)+q(1-T(i))
と書きかえられる。
そして
(1) a=pa+q(1-a) となる式を定義。
(2) c=Ti-a として(1)に代入すると
a=p(a-c)+q(1-a-c)
式を変形すると
a+c(p-q)=pT(i)-qT(i)+q
pT(i)-qT(i)+q=T(i+1)なので
a+c(p-q)=T(i)となる
更に
T(i+2)=a+(T(i+1)(p-q))=省略=a+(T(i)-a)(p-q)2
なので
中学生向けの理論で
T(i+n)=a+(T(i)-a)(p-q)n
となるので
0<p-q<1だと
(p-q)nずつTiとaの差が縮小
p-q=0、p−q=1、p-q=-1だとすぐに定値に
-1<p-q<0なら、aを中心線にしながら振動して収束する。